1.今日(2019. 6. 19)韓国政府は、昨年10月30日宣告された強制動員大法院判決について、日本政府に「『訴訟当事者である日本企業を含む日韓両国の企業が自発的拠出金で財源を構成し、確定判決被害者に慰謝料相当額を支給することにより、当事者間の和解が行われる方案』を日本政府が受け入れることを条件として、日本政府が要求しているところの請求権協定第3条第1項の協議手続の受け入れを検討する用意がある」という立場(以下「韓国政府の立場」)を日本政府に伝達したと発表した。韓国政府の立場について、強制動員被害者の訴訟代理人団と支援団(以下「代理人団及び支援団」)は、以下の部分についての懸念を表明する。
2.強制動員問題を解決するための議論には、1)歴史的事実を認め、それに対する心から謝罪、2)賠償を含む適正な被害回復措置、3)被害者に対する追悼と歴史的教育などを通じた再発防止の努力が含まなければならない。ところが韓国政府の立場は、強制動員問題を解決するための出発点と言うべき「歴史的事実を認めること」と「謝罪」について何らの内容がないという点で問題である。
3.また、韓国政府の立場は、強制動員被害者らに対する金銭的賠償の面でも受け入れがたい。。韓国政府の立場は、確定判決を受けた被害者14人にのみ判決で認められた慰謝料を支給するというものである。これは昨年の韓国大法院判決を契機に韓日両国間の日帝強制動員問題の総合的な解決を要求し、まだ判決が確定していないか、訴訟手続を行っていない被害者を含む包括的な協議を要請してきた被害者の声を全く反映していない立場である。
4.手続的側面においても、韓国政府の立場を発表前に代理人団と支援団を含む市民社会との十分な議論がなされなかったという点で遺憾である。今日発表された韓国政府の案は被害者が「韓日両国の企業の出捐金」を「判決金」の代わりに支給されることを前提にしており、上記のような方法で問題を解決するに当たっては、被害者との協議または合意が必要であった。ところが韓国政府は被害者、代理人団及び支援団などと具体的な案に関して公式的に意見を取りまとめる手続きを進めなかった。
5.ただし、韓国政府の立場伝達は、両国間の協議を開始するための事前措置としての意味では、肯定的に評価することができる。両国間の協議が開始されて結論が導き出されるまで短くない期間がかかる可能性がある状況では、高齢の生存強制動員被害者たちに、その時間をお待ちくださいと言うことはできない。このような現実的な条件の中で、韓日企業がまず確定した判決金相当の金員を被害者に支給した後、両国政府が他の被害者らの問題を含む包括的な交渉に議論を拡大していく予定であれば、韓国政府の立場も肯定的に検討してみることができるであろう。
6.代理人団及び支援団は、今回の韓国政府の立場を契機に、両国政府が強制動員問題を解決するために、より積極的に協議を行うことを希望する。代理人団と支援団は、昨年の大法院判決以後、持続的に日本企業に協議要請をしたが、すべて拒絶された。両国政府間の議論だけでなく、被害者らと日本企業との間の協議も共に開始されるべきものであり、その過程で現在進められている強制執行の問題も議論される余地があるであろう。
弁護士 李相甲、金正熙、崔鳳泰、金世恩、林宰成
勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会
民族問題研究所
太平洋戦争被害者補償推進協議会
(日本語訳 山本晴太)