한국어

国際司法裁判所(ICJ)2013.2.3 主権免除(独対伊)事件判決



 印刷用PDF (多数意見、反対意見、個別意見を含む178頁のファイル)  



≫判決(多数意見)

小和田恒所長をはじめとする12人の裁判官による多数意見でドイツの請求の大部分を認めた。争点①については、不法行為例外が慣習国際法であるか否かは判断せず、争点を「武力紛争遂行過程での軍隊の行為については主権免除を適用するという慣習国際法が存在するか」に絞った。そして、その問題の国内裁判例として第 2 次世界大戦中の行為についてドイツを被告とするフランス、スロベニア、ポーランド、ベルギー、セルビア、ブラジル、イタリア、ギリシャの8件の事件を挙げ、このうちドイツの主権免除を否定したのはイタリアとギリシャだけであり、ギリシャもその後最高特別裁判所がドイツの主権免除を肯定したとして、武力紛争遂行過程での軍隊の行為については主権免除を適用するという慣習国際法が存在すると結論づけた。


≫ユスフ裁判官反対意見

ユスフ裁判官(ソマリア)は、慣習国際法は常に発展の過程にあり、国内裁判所の孤立した判決から始まり、徐々に主流になっていくのであって、各国の実行例を数え上げて相対多数により慣習国際法を認定するという多数意見の手法は常に国際法の発展を妨げる結論を導くことになると批判した。そして、少なくとも人道法に対する重大な違反があり、国内裁判所が被害者の最後の救済手段である場合には主権免除が否定されるべきであると主張した。


≫カンサード・トリンダージ裁判官反対意見

米州人権裁判所でラテンアメリカの独裁政権による人権侵害の被害者の救済に取り組んできた経験をもつカンサード・トリンダージ裁判官(ブラジル)は、多数意見よりはるかに長大な、316パラグラフ及ぶ反対意見を展開した。国際法が国家中心の国際法から人権中心の国際法に発展しつつあることを数多くの学会の宣言などを引用して論証し、主権免除の分野では不法行為例外、刑事法の分野では強行規範に違反する行為に対する普遍的管轄権などが認められて来たことを示した。そして、19世紀以来の学説などから、戦争被害者個人の請求権が認められるべきであること、被害者の属する国家が被害者の請求権を放棄することができないこと、侵害された人権の回復のためには裁判が不可欠であることを強調し、閾値を超えた重大な人権侵害には主権免除が認められるべきでないと主張した。そして主権免除により強行規範違反に対する裁判の実現が妨げられている以上、実体法であるか手続法であるかに関わりなく主権免除と強行規範は衝突していると指摘した。また、主権免除の分野では新旧の見解がせめぎあっており、このような状況のなかで裁判例を数えあげても無意味であり、ICJの法源として公認されている「諸国の最も優秀な国際法学者の学説」に依拠して主権免除を否定すべきであったと多数意見を批判した。


≫ガヤ特任裁判官反対意見

ガヤ裁判官(イタリア)は多数意見と同様に人権例外を否定したが、不法行為例外と軍事活動の関係については各国の実行は多様であり、国内裁判所はこのグレーゾーンの中で多様な立場を採用することができるとして、不法行為がイタリアで行われた事件についてはイタリアの裁判権の実行は国際法上の義務違反とは言えないと主張した。


≫コロマ裁判官個別意見

多数意見を支持するコロマ裁判官(シエラレオネ)は、主権行為については主権免除の例外は存在せず、国際法は個人被害者の国家に対する請求権を認めていないと主張した。ただし、この判決は主権免除について判断したのみであり、国家に免罪符を与えるものではなく、問題解決のための当事者間の交渉を妨げるものではないとも述べた。


≫ベヌーナ裁判官個別意見

モハメッド・ベメーナ裁判官(モロッコ)は、過去の国内判例や立法例のみに依拠し国際法の発展をかえりみない多数意見のアプローチを批判し、現在の国際法の趨勢を反映すれば、主権免除は責任を認めた国家のみに与えられるものであると主張した。ただし、ドイツが第2次世界大戦中の違法行為の責任を認めていることなどを理由に多数意見の主文には賛成した。


≫キース裁判官個別意見

ケネス・キース裁判官(ニュージーランド)は多数意見を補強して、主権免除の原則が国際法秩序の基盤であることを強調し、戦争被害の補償は元来は国家間交渉によって解決されるものであると主張したが、この判決はドイツの戦時中の違法行為に対する責任を否定するものではないとも述べた。


≫英語・仏語による判決原文(ICJサイトへのリンク)

 

≫HOMEへ