韓国憲法第9号(第五共和国憲法)

(太字はこの憲法で改正又は追加された部分。下線部はこの憲法で復活した部分。斜体は次の改正で削除された部分。)



大韓民国憲法[全文改正1980.10.27憲法第9号]

前文

悠久の民族史,輝く文化,そして平和愛護の伝統を誇る我が大韓国民は3·1運動の崇高な独立精神を継承して祖国の平和的統一と民族中興の歴史的使命に立脚する第5民主共和国の出発に際し正義·人道と同胞愛により民族の団結を強固にして,全ての社会的弊習と不義を打破し,自由民主的基本秩序をさらに確固とし政治·経済·社会·文化の全ての領域において各人の機会を均等にして,能力を最高度に発揮させ,自由と権利にもとづく責任と義務を完遂させ,内には国民生活の均等な向上を期し外には恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することにより我らと我らの子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保する新たな歴史を創造することを誓って1948年7月12日に制定され1960年6月15日,1962年12月26日と1972年12月27日に改正された憲法をここに国民投票により改正する.

 

第1章 総綱

第1条 ①大韓民国は民主共和国である.

②大韓民国の主権は国民にあり,全ての権力は国民から生ずる.

第2条 ①大韓民国の国民の要件は法律で定める.

②在外国民は国家の保護を受ける.

第3条 大韓民国の領土は韓半島と付属島嶼とする.

第4条 ①大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略的戦争を否認する.

②国軍は国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とする.

第5条 ①憲法により締結·公布された条約と一般的に承認された国際法規は国内法と同等の効力を有する.

②外国人については国際法と条約に定めるところによりその地位を保障する.

第6条 ①公務員は国民全体に対する奉仕者であり,国民に対し責任を負う.

②公務員の身分と政治的中立性は法律の定めるところにより保障される.

第7条 ①政党の設立は自由であり,複数政党制は保障される.

②政党はその組織と活動が民主的でなければならず,国民の政治的意思形成に参与するために必要な組織を備えなければならない.

③政党は法律の定めるところにより国家の保護を受け,国家は法律の定めるところにより政党の運営に必要な資金を補助することができる.

④政党の目的又は活動が民主的基本秩序に違背したときには政府は憲法委員会にその解散を提訴することができ,政党は憲法委員会の決定により解散される.

第8条 国家は伝統文化の継承·発展と民族文化の育成に努力しなければならない.

 

第2章 国民の権利と義務

第9条 全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し,幸福を追求する権利を有する.国家は個人が有する不可侵の基本的人権を確認してこれを保障する義務を負う.

第10条 ①全ての国民は法の下に平等である.何人も性別·宗教又は社会的身分により政治的·経済的·社会的·文化的生活の全ての領域において差別を受けない.

②社会的特殊階級の制度は認められず,如何なる形態においてもこれを創設することができない.

③勲章等の栄典はこれを受ける者にのみ効力を有し,如何なる特権もこれに付随しない.

第11条 ①全ての国民は身体の自由を有する.何人も法律によることなく逮捕·拘禁·押収·捜索·審問·処罰と保安処分を受けず,刑の宣告によることなく強制労役をさせられない.

②全ての国民は拷問を受けず,刑事上自己に不利な陳述を強要されない.

③逮捕·拘禁·押収·捜索には検事の申請により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.但し,現行犯人である場合と長期3年以上の刑に該当する罪を犯して逃避又は証拠湮滅の虞があるときには事後に令状を請求することができる.

④何人も逮捕·拘禁を受けるときには直ちに弁護人の助力を受ける権利を有し,法律が定める場合に,刑事被告人が自ら弁護人を求めることができないときには国家が弁護人を付する.

⑤何人も逮捕·拘禁を受けるときには法律の定めるところにより適否の審査を裁判所に請求する権利を有する.

⑥被告人の自白が拷問·暴行·脅迫·拘束の不当な長期化又は欺罔その他の方法により自己の意思によって陳述されたものではないと認められるとき又は正式裁判において被告人の自白が彼に不利な唯一の証拠であるときにはこれを有罪の証拠とし,又はこれを理由に処罰することができない.

第12条 ①全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為について訴追されず,同一の犯罪に対し重ねて処罰されない.

②全ての国民は遡及立法により参政権の制限又は財産権の剝奪を受けない.

③全ての国民は自己の行為ではない親族の行為によって不利益な処遇を受けない.

第13条 全ての国民は居住·移転の自由を有する.

第14条 全ての国民は職業選択の自由を有する.

第15条 全ての国民は住居の自由を侵害されない.住居に対する押収や捜索には検事の申請により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.

第16条 全ての国民は私生活の秘密と自由を侵害されない.

第17条 全ての国民は通信の秘密を侵害されない.

第18条 全ての国民は良心の自由を有する.

第19条 ①全ての国民は宗教の自由を有する.

②国教は認められず,宗教と政治は分離される.

第20条 ①全ての国民は言論·出版の自由と集会·結社の自由を有する.

②言論·出版は他人の名誉や権利又は公衆道徳又は社会倫理を侵害してはならない.言論·出版が他人の名誉や権利を侵害するときには被害者はこれに対する被害の賠償を請求することができる.

第21条 ①全ての国民は学問と芸術の自由を有する.

②著作者·発明家と芸術家の権利は法律により保護する.

第22条 ①全ての国民の財産権は保障される.その内容と限界は法律で定める.

②財産権の行使は公共福利に適合するようにしなければならない.

③公共の必要による財産権の収用·使用又は制限は法律により行われ,補償を支給しなければならない.補償は公益及び関係者の利益を正当に衡量し法律で定める.

第23条 全ての国民は20歳に達すると法律の定めるところにより選挙権を有する.

第24条 全ての国民は法律の定めるところにより公務坦任権を有する.

第25条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国家機関に文書で請願する権利を有する.

②国家は請願に対し審査する義務を負う.

第26条 ①全ての国民は憲法と法律で定める裁判官により法律による裁判を受ける権利を有する.

②軍人又は軍務員ではない国民は大韓民国の領域内においては重大な軍事上機密·哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜·軍用物·軍事施設に関する罪のうち法律で定める場合と,非常戒厳がされ,又は大統領が裁判所の権限に関し非常措置を行った場合を除いては軍法会議の裁判を受けない.

③全ての国民は迅速な裁判を受ける権利を有する.刑事被告人は相当な理由がない限り遅滞なく公開裁判を受ける権利を有する.

④刑事被告人は有罪の判決が確定されるときまでは無罪と推定される.

第27条 刑事被告人として拘禁された者が無罪判決を受けたときには法律の定めるところにより国家に正当な補償を請求することができる.

第28条 ①公務員の職務上不法行為により損害を受けた国民は法律の定めるところにより国家又は公共団体に正当な賠償を請求することができる.ただし,公務員自身の責任は免除されない.

②軍人·軍務員·警察公務員その他法律で定める者が戦闘·訓練等職務執行と関連し受けた損害については法律が定める補償外に国家又は公共団体に公務員の職務上不法行為にによる賠償は請求することができない.

第29条 ①全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する.

②全ての国民はその保護する子女に少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う.

③義務教育は無償とする.

④教育の自主性·専門性及び政治的中立性は法律の定めるところにより保障される.

⑤国家は生涯教育を振興しなければならない.

学校教育及び生涯教育を含む教育制度とその運営,教育財政及び教員の地位に関する基本的な事項は法律で定める.

第30条 ①全ての国民は勤労の権利を有する.国家は社会的·経済的方法により勤労者の雇用の増進と適正賃金の保障に努力しなければならない.

②全ての国民は勤労の義務を負う.国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義原則に従い法律で定める.

③勤労条件の基準は人間の尊厳性を保障するように法律で定める.

④女子と少年の勤労は特別な保護を受ける.

⑤国家有功者·傷痍軍警及び戦没軍警の遺家族は法律の定めるところにより優先的に勤労の機会を賦与される.

第31条 ①勤労者は勤労条件の向上のため自主的な団結権·団体交涉権及び団体行動権を有するが,団体行動権の行使は法律が定めるところによる.

②公務員である勤労者は法律に認められた者を除いては団結権·団体交涉権及び団体行動権を有しない.

③国家·地方自治団体·国公営企業体·防衛産業体·公益事業体又は国民経済に重大な影響をを及ぼす事業体に従事する勤労者の団体行動権は法律の定めるところによりこれを制限し認めないことができる.

第32条 ①全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する.

②国家は社会保障·社会福祉の増進に努力する義務を負う.

③生活能力がない国民は法律の定めるところにより国家の保護を受ける.

第33条 全ての国民は清潔な環境において生活する権利を有し,国家と国民は環境保全のため努力しなければならない.

第34条 ①婚姻と家族生活は個人の尊厳と両性の平等を基礎に成立し維持されねばならない.

②全ての国民は保健に関し国家の保護を受ける.

第35条 ①国民の自由と権利は憲法に列挙されないとの理由により軽視されない.

②国民の全ての自由と権利は国家安全保障·秩序維持又は公共福利のため必要な場合に限り法律により制限することができ,制限する場合にも自由と権利の本質的な内容を侵害することができない.

第36条 全ての国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う.

第37条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国防の義務を負う.

②何人も兵役義務の履行により不利益な処遇を受けない.

 

第3章 政府

第1節 大統領

第38条 ①大統領は国家の元首であり,外国に対し国家を代表する.

②大統領は国家の独立·領土の保全·国家の継続性と憲法を守護する責務を負う.

③大統領は祖国の平和的統一のため誠実な義務を負う.

④行政権は大統領を首班とする政府に属する.

第39条 ①大統領は大統領選挙人団において無記名投票で選挙する.

②大統領に立候補しようとする者は政党の推薦又は法律が定める数の大統領選挙人の推薦を受けねばならない.

③大統領選挙人団において在籍大統領選挙人過半数の賛成を得た者を大統領当選者とする.

④第3項の得票者がないときには2次投票を行い,2次投票でも第3項の得票者がないときには最高得票者が1人であれば最高得票者と次点者に対し,最高得票者が2人以上であれば最高得票者に対し決選投票をすることにより多数得票者を大統領当選者とする.

⑤大統領の選挙に関する事項は法律で定める.

第40条 ①大統領選挙人団は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出された大統領選挙人で構成する.

②大統領選挙人の数は法律に定め,5,000人以上とする.

③大統領選挙人の選挙に関する事項は法律で定める.

第41条 ①大統領選挙人に選出されることができる者は国会議員の被選挙権を有し,選挙日現在30歳に達していなければならない.但し,国会議員と公務員は大統領選挙人になることができない.

②大統領選挙人は現行犯人である場合を除いては逮捕又は拘禁されない.

③大統領選挙人は政党に所属することができる.

④大統領選挙人は選挙人となった後初めて実施とされる国会議員の選挙において国会議員に選出されることができない.

⑤大統領選挙人は当該大統領選挙人団が選挙する大統領の任期開始日までその身分を有する.

第42条 大統領に選挙されることができる者は国会議員の被選挙権を有し,選挙日現在継続して5年以上国内に居住して40歳に達していなければならない.この場合,公務により外国に派遣された期間は国内居住期間とみなす.

第43条 ①大統領の任期が満了するときには大統領選挙人団は遅くとも任期満了30日前に後任者を選挙する.

②大統領が欠けたときには新たに大統領選挙人団を構成し3月以内に後任者を選挙する.

第44条 大統領は就任に際し次の宣誓を行う.”私は憲法を遵守して国家を保衛し民族文化の発展及び国民の自由と福利の増進に努力し祖国の平和的統一のため大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します.”

第45条 大統領の任期は7年とし,重任することができない.

第46条 大統領が欠けたり事故によって職務を遂行することができないときには国務総理,法律の定める国務委員の順位でその権限を代行する.

第47条 大統領は必要であると認めるときには外交·国防·統一その他国家安危に関する重要政策を国民投票に付することができる.

第48条 大統領は条約を締結·批准して,外交使節を信任·接受又は派遣し,宣戦布告と講和を行う.

第49条 ①大統領は憲法と法律の定めるところにより国軍を統帥する.

②国軍の組織と編成は法律で定める.

第50条 大統領は法律において具体的に範囲を定めて委任を受けた事項と法律を執行するために必要な事項に関し大統領令を発することができる.

第51条 ①大統領は天災·地変又は重大な財政·経済上の危機に処し,国家の安全を威脅する交戦状態やそれに準ずる重大な非常事態に処し国家を保衛するために急速な措置をする必要があると判断するときには内政·外交·国防·経済·財政·司法等国政全般にわたり必要な非常措置をすることができる.

②大統領は第1項の場合,必要であると認めるときには憲法に規定されている国民の自由と権利を暫定的に停止することができ,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.

③第1項と第2項の措置を行ったときには大統領は遅滞なく国会に通告し承認を得なければならず,承認を得られないときにはそのときからその措置は効力を喪失する.

④第1項と第2項の措置はその目的を達成することのできる最短期間内に限定されなければならず,その原因が消滅するときには大統領は遅滞なくこれを解除しなければならない.

⑤国会が在籍議員過半数の賛成で非常措置の解を要求するときには大統領はこれを解除しなければならない.

第52条 ①大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要に応じ公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる.

②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする.

③非常戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.

④戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.

⑤国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求するときには大統領はこれを解除しなければならない.

第53条 大統領は憲法と法律の定めるところにより公務員を任命する.

第54条 ①大統領は法律の定めるところにより赦免·減刑·復権を命ずることができる.

②一般赦免を命じるには国会の同意を得なければならない.

③赦免·減刑·復権に関する事項は法律で定める.

第55条 大統領は法律の定めるところにより勲章その他の栄典を授与する.

第56条 大統領は国会に出席して発言し,又は書翰により意見を表示することができる.

第57条 ①大統領は国家の安定又は国民全体の利益のため必要であると判断する相当な理由があるときには国会議長の諮問及び国務会議の審議を経た後その事由を明示し国会を解散することができる.但し,国会が構成された後1年以内には解散することができない.

②大統領は同一の事由により2回にわたり国会を解散することができない.

③国会が解散された場合国会議員総選挙は解散された日から30日以後60日以内に実施する.

第58条 大統領の国法上行為は文書により行い,この文書には国務総理と関係国務委員が副署する.軍事に関するものも同様である.

第59条 大統領は国務総理·国務委員·行政各部の長その他法律が定める公私の職を兼ねることができない.

第60条 大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない.

第61条 前職大統領の身分と礼遇については法律で定める.

 

第2節 行政府

第1款 国務総理と国務委員

第62条 ①国務総理は国会の同意を得て大統領が任命する.

②国務総理は大統領を補佐して,行政に関し大統領の命を受け行政各部を統轄する.

③軍人は現役を退いた後でなければ国務総理に任命されることができない.

第63条 ①国務委員は国務総理の提請により大統領が任命する.

②国務委員は国政に関し大統領を補佐し,国務会議の構成員として国政を審議する.

③国務総理は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

④軍人は現役を退いた後でなければ国務委員に任命されることができない.

 

第2款 国務会議

第64条 ①国務会議は政府の権限に属する重要な政策を審議する.

②国務会議は大統領·国務総理と15人以上30人以下の国務委員で構成する.

③大統領は国務会議の議長となり,国務総理は副議長となる.

第65条 次の事項は国務会議の審議を経ねばならない.

1.国政の基本計画と政府の一般政策

2.宣戦·講和その他重要な対外政策

3.憲法改正案·国民投票案·条約案·法律案と大統領令案

4.予算案·決算·国有財産処分の基本計画·国家の負担となる契約その他財政に関する重要事項

5.大統領の非常措置又は戒厳とその解除

6.軍事に関する重要事項

7.国会の解散

8.国会の臨時会集会の要求

9.栄典授与

10.赦免·減刑と復権

11.行政各部間の権限の画定

12.政府内の権限の委任又は配定に関する基本計画

13.国政処理狀況の評価·分析

14.行政各部の重要な政策の樹立と調整

15.政党解散の提訴

16.政府に提出又は回付された政府の政策に関係する請願の審査

17.合同参謀議長·各軍参謀総長·検察総長·国立大学校総長·大使その他法律で定める公務員と国営企業体管理者の任命

18.その他大統領·国務総理又は国務委員が提出する事項

第66条 ①国政の重要な事項に関する大統領の諮問に応ずるために国家元老で構成とされる国政諮問会議を置くことができる.

②国政諮問会議の議長は直前大統領とする.但し,直前大統領がないときには大統領が指名する.

③国政諮問会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第67条 ①国家安全保障に関連する対外政策·軍事政策と国内政策の樹立に関し国務会議の審議に先立ち大統領の諮問に応ずるために国家安全保障会議を置く.

②国家安全保障会議は大統領が主宰する.

③国家安全保障会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第68条 ①平和統一政策の樹立に関する大統領の諮問に応ずるために平和統一政策諮問会議を置くことができる.

②平和統一政策諮問会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第3款 行政各部

第69条 行政各部の長は国務委員の中から国務総理の提請により大統領が任命する.

第70条 国務総理又は行政各部の長は所管事務に関し法律又は大統領令の委任又は職権に総理令又は部令を発することができる.

第71条 行政各部の設置·組織と職務範囲は法律で定める.

 

第4款 監査院

第72条 国家の歳入·歳出の決算,国家及び法律で定める団体の会計検査と行政機関及び公務員の職務に関する監察を行うために大統領所属下に監査院を置く.

第73条 ①監査院は院長を含む5人以上11人以下の監査委員で構成する.

②院長は国会の同意を得て大統領が任命して,その任期は4年とし,1回に限り重任することができる.

③院長が欠けた場合,任命された後任者の任期は前任者の残任期間とする.

④監査委員は院長の提請により大統領が任命し,その任期は4年とし,1回に限り重任することができる.

第74条 監査院は歳入·歳出の決算を毎年検査し大統領と次年度国会にその結果を報告しなければならない.

第75条 監査院の組織·職務範囲·監査委員の資格·監査対象公務員の範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第4章 国会

第76条 立法権は国会に属する.

第77条 ①国会は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出された議員で構成する.

②国会議員の数は法律に定め,200人以上とする.

③国会議員の選挙区と比例代表制その他選挙に関する事項は法律で定める.

第78条 国会議員の任期は4年とする.

第79条 国会議員は法律が定める職を兼ねることができない.

第80条 ①国会議員は現行犯人である場合を除いては会期中国会の同意なく逮捕又は拘禁されない.

②国会議員が会期前に逮捕又は拘禁されたときには現行犯人でない限り国会の要求があれば会期中釈放される.

第81条 国会議員は国会において職務上行う発言と表決に関し国会外において責任を負わない.

第82条 ①国会議員は清廉の義務を負う.

②国会議員は国家利益を優先し良心に従い職務を行う.

③国会議員はその地位を濫用し国家·公共団体又は企業体との契約又はその処分により財産上の権利·利益又は職位を取得し他人のためその取得を斡旋することができない.

第83条 ①国会の定期会は法律の定めるところにより毎年1回集会され,国会の臨時会は大統領又は国会在籍議員3分の1以上の要求により集会される.

②定期会の会期は90日を,臨時会の会期は30日を超過することができない.

③国会は定期会·臨時会を合せて年150日を超過し開会することができない.但し,大統領が集会を要求する臨時会の日数はこれに算入しない.

④大統領が臨時会の集会を要求するときには期間と集会要求の理由を明示しなければならない.

⑤大統領の要求により集会された臨時会においては政府が提出する議案に限り処理し,国会は大統領が集会要求時に定める期間に限り開会する.

第84条 国会は議長1人と副議長2人を選挙する.

第85条 国会は憲法又は法律に特別な規定がない限りその在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の賛成で議決する.可否同数であるときには否決されたものとみなす.

第86条 ①国会の会議は公開する.但し,出席議員過半数の賛成があり,又は議長が国家の安全保障のため必要であると認めるときには公開しないことができる.

②公開しないものとする会議の内容は公表されてはならない.

第87条 国会に提出された法律案その他の議案は会期中に議決できなかったことを理由に廃棄されない.但し,国会議員の任期が満了したり国会が解散されたときには例外とする.

第88条 国会議員と政府は法律案を提出することができる.

第89条 ①国会において議決された法律案は政府に移送され15日以内に大統領が公布する.

②法律案に異議があるときには大統領は第1項の期間内に異議書を付して国会に還付して,その再議を要求することができる.国会の閉会中にも同様である.

③大統領は法律案の一部に対し又は法律案を修正し再議を要求することができない.

④再議の要求があるときには国会は再議に付して,在籍議員過半数の出席と出席議員3分の2以上の賛成で前回と同じ議決をした場合にはその法律案は法律として確定される.

⑤大統領が第1項の期間内に公布や再議の要求をしないときにもその法律案は法律として確定される.

⑥大統領は第4項と第5項の規定により確定された法律を遅滞なく公布しなければならない.第5項により法律が確定された後又は第4項による確定法律が政府に移送された後5日以内に大統領が公布しないときには国会議長がこれを公布する.

⑦法律は特別な規定がない限り公布した日から20日を経過することにより効力を発生する.

第90条 ①国会は国家の予算案を審議·確定する.

②政府は会計年度毎に予算案を編成し会計年度開始90日前まで国会に提出して,国会は会計年度開始30日前までこれを議決しなければならない.

新たな会計年度が開始されるときまで予算案を議決できないときには政府は国会において予算案が議決されるときまで次の目的のための経費は前年度予算に準じ執行することができる.

1.憲法又は法律により設置された機関又は施設の維持·運営

2.法律上支出義務の履行

3.すでに予算に承認された事業の継続

第91条 ①一会計年度を超えて継続して支出する必要があるときには政府は年限を定めて継続費として国会の議決を得なければならない.

予備費は総額として国会の議決を得なければならない.予備費の支出は次期国会の承認を得なければならない.

第92条 政府は予算に変更を加える必要があるときには追加更正予算案を編成し国会に提出することができる.

第93条 国会は政府の同意なく政府が提出する支出予算各項の金額を増加し新たな費目を設置することができない.

第94条 国債を募集し予算外に国家の負担となる契約を締結しようとするときには政府は予め国会の議決を得なければならない.

第95条 租税の種目と税率は法律で定める.

第96条 ①国会は相互援助又は安全保障に関する条約,重要な国際組織に関する条約,友好通商航海条約,主権の制約に関する条約,講和条約,国家や国民に重大な財政的負坦を負わせる条約又は立法事項に関する条約の締結·批准に対する同意権を有する.

②宣戦布告,国軍の外国への派遣又は外国軍隊の大韓民国領域内においての駐留についても国会は同意権を有する.

第97条 国会は特定の国政事案に関し調査することができ,それに直接関連する書類の提出,証人の出席と証言又は意見の陳述を要求することができる.但し,裁判と進行中である犯罪捜査·訴追に干渉することができない.

第98条 ①国務総理·国務委員又は政府委員は国会やその委員会に出席し国政処理狀況を報告し意見を陳述して質問に応答することができる.

②国会やその委員会の要求があるときには国務総理·国務委員又は政府委員は出席·答弁せねばならず,国務総理又は国務委員が出席要求を受けたときには国務委員又は政府委員に出席·答弁させることができる.

第99条 ①国会は国務総理又は国務委員に対し個別的にその解任を議決することができる.但し,国務総理に対する解任議決は国会が任命同意を行った後1年以内にはすることができない.

②第1項の解任議決は国会在籍議員3分の1以上の発議により国会在籍議員過半数の賛成を要する.

③第2項の議決があるときには大統領は国務総理又は当該国務委員を解任しなければならない.但し,国務総理に対する解任議決があるときには大統領は国務総理と国務委員全員を解任しなければならない.

第100条 ①国会は法律に抵触しない範囲内において議事と内部規律に関する規則を制定することができる.

②国会は議員の資格を審査し,議員を懲戒することができる.

③議員を除名しようとする場合には国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

④第2項と第3項の処分については裁判所に提訴することができない.

第101条 ①大統領·国務総理·国務委員·行政各部の長·憲法委員会委員·裁判官·中央選挙管理委員会委員·監査委員その他法律で定める公務員がその職務執行において憲法又は法律に違背したときには国会は弾劾の訴追を議決することができる.

②第1項の弾劾訴追は国会在籍議員3分の1以上の発議が必要であり,その議決は国会在籍議員過半数の賛成を要するが,大統領に対する弾劾訴追は国会在籍議員過半数の発議と国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

③弾劾訴追の議決を受けた者は弾劾決定があるときまでその権限行使が停止される.

④弾劾決定は公職から罷免するにとどまる.ただし,これにより民事上又は刑事上の責任が免除されはしない.

 

第5章 裁判所

第102条 ①司法権は裁判官で構成された裁判所に属する.

②裁判所は最高裁判所である大法院と各級裁判所により組織される.

③裁判官の資格は法律で定める.

第103条 ①大法院に部を置くことができる.

②大法院に行政·租税·労動·軍事等を専坦する部を置くことができる.

③大法院に大法官を置く.但し,法律の定めるところにより大法官ではない裁判官を置くことができる.

④大法院と各級裁判所の組織は法律で定める.

第104条 裁判官は憲法と法律によりその良心に従い独立して審判する.

第105条 ①大法院長は国会の同意を得て大統領が任命する.

②大法官は大法院長の提請により大統領が任命する.

③大法院長と大法官ではない裁判官は大法院長が任命する.

第106条 ①大法院長の任期は5年とし,重任することができない.

②大法官の任期は5年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

③大法院長と大法官ではない裁判官の任期は10年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

④裁判官の停年は法律で定める.

第107条 ①裁判官は弾劾又は刑罰によることなく罷免されず,懲戒処分によることなく停職·減俸又は不利な処分を受けない.

②裁判官が重大な心身上の障害により職務を遂行することができないときには法律の定めるところにより退職させることができる.

第108条 ①法律が憲法に違反するか否かが裁判の前提とされた場合,裁判所は法律が憲法に違反とされることに認めるときには憲法委員会に提請しその決定により裁判する.

②命令·規則·処分が憲法又は法律に違反するか否かが裁判の前提とされた場合には大法院はこれを最終的に審査する権限を有する.

③裁判の前審手続として行政審判をすることができる.行政審判の手続は法律に定め,司法手続が準用されねばならない.

第109条 大法院は法律に抵触しない範囲内において訴訟に関する手続,裁判所の内部規律と事務処理に関する規則を制定することができる.

第110条 裁判の審理と判決は公開する.但し,審理は国家の安全保障又は安寧秩序を妨害し善良な風俗を害する虞があるときには裁判所の決定によりしないことができる.

第111条 ①軍事裁判を管轄するために特別裁判所として軍法会議を置くことができる.

軍法会議の上告審は大法院において管轄する.

軍法会議の組織·権限及び裁判官の資格は法律で定める.

④非常戒厳下の軍事裁判は軍人·軍務員の犯罪や軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合に限り単審とすることができる.

 

第6章 憲法委員会

第112条 ①憲法委員会は次の事項を審判する.

1.裁判所の提請による法律の違憲与否

2.弾劾

3.政党の解散

憲法委員会は9人の委員で構成し, 委員は大統領が任命する.

③第2項の委員中3人は国会において選出する者を,3人は大法院長が指名する者を任命する.

憲法委員会委員長委員の中から大統領が任命する.

第113条 ①憲法委員会委員の任期は6年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

憲法委員会委員は政党に加入し政治に関与することができない.

憲法委員会委員は弾劾又は刑罰によることなく罷免されない.

憲法委員会委員の資格は法律で定める.

第114条 ①憲法委員会において法律の違憲決定,弾劾の決定又は政党解散の決定をするときには委員6人以上の賛成を要する.

憲法委員会の組織と運営その他必要な事項は法律で定める.

 

第7章 選挙管理

第115条 ①選挙と国民投票の公正する管理及び政党に関する事務を処理するために選挙管理委員会を置く.

②中央選挙管理委員会は大統領が任命する3人,国会において選出する3人と大法院長が指名する3人の委員で構成する.委員長は委員の中から互選する.

③委員の任期は5年とする.

④委員は政党に加入し政治に関与することができない.

⑤委員は弾劾又は刑罰によることなく罷免されない.

⑥中央選挙管理委員会は法令の範囲内において選挙管理·国民投票管理又は政党事務に関する規則を制定することができる.

⑦各級選挙管理委員会の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第116条 ①各級選挙管理委員会は選挙人名簿の作成等選挙事務に関し関係行政機関に必要な指示をすることができる.

②第1項の指示を受ける当該行政機関はこれに応じなければならない.

第117条 ①選挙運動は各級選挙管理委員会の管理下に法律が定める範囲内において行われ,均等な機会が保障されねばならない.

②選挙に関する経費は法律が定める場合を除いては政党又は候補者に負坦させることができない.

 

第8章 地方自治

第118条 ①地方自治団体は住民の福利に関する事務を処理して財産を管理し,法令の範囲内において自治に関する規定を制定することができる.

②地方自治団体の種類は法律で定める.

第119条 ①地方自治団体に議会を置く.

②地方議会の組織·権限·議員選挙と地方自治団体の長の選任方法その他地方自治団体の組織と運営に関する事項は法律で定める.

 

第9章 経済

第120条 ①大韓民国の経済秩序は個人の経済上の自由と創意を尊重することを基本とする.

②国家は全ての国民に生活の基本的需要を充足させる社会正義の実現と均衡ある国民経済の発展のため必要な範囲内において経済に関する規制と調整を行う.

③独寡占の弊害は適切に規制·調整する.

第121条 ①鉱物その他重要な地下資源·水産資源·水力と経済上利用することのできる自然力は法律の定めるところにより一定の期間その採取·開発又は利用を特許することができる.

②国土と資源は国家の保護を受け,国家はその均衡ある開発と利用のため必要な計画を樹立する.

第122条 農地の小作制度は法律の定めるところにより禁止される.但し,農業生産性の向上と農地の合理的な利用のため賃貸借及び委託経営は法律の定めるところにより認められる.

第123条 国家は農地と山地その他国土の効率的かつ均衡ある利用·開発と保全のため法律の定めるところによりこれに関する必要な制限と義務を課することができる.

第124条 ①国家は農民·漁民の自助を基盤にする農漁村開発のため必要な計画を樹立し,地域社会の均衡ある発展を期する.

②国家は中小企業の事業活動を保護·育成しなければならない.

③国家は農民·漁民と中小企業の自助組織を育成せねばならず,その政治的中立性を保障する.

第125条 国家は健全な消費行為を啓導して生産品の品質向上を促求するための消費者保護運動を法律の定めるところにより保障する.

第126条 国家は対外貿易を育成し,これを規制·調整することができる.

第127条 国防上又は国民経済上緊急の必要のために法律で定める場合を除いては,私営企業を国有又は公有に移転しその経営を統制又は管理することができない.

第128条 ①国家は国民経済の発展に努力し科学技術を育成·振興しなければならない.

②国家は国家標準制度を確立する.

③大統領は第1項の目的を達成するために必要な諮問機構を置くことができる.

 

第10章 憲法改正

第129条 ①憲法改正は大統領又は国会在籍議員過半数の発議により提案される.

②大統領の任期延長又は重任変更のため憲法改正はその憲法改正提案当時の大統領については効力がない.

第130条 提案された憲法改正案は大統領が20日以上の期間これを公告しなければならない.

第131条 ①国会は憲法改正案が公告された日から60日以内に議決せねばならず,国会の議決は在籍議員3分の2以上の賛成を得なければならない.

②憲法改正案は国会が議決した後30日以内に国民投票に付して国会議員選挙権者過半数の投票と投票者過半数の賛成を得なければならない.

③憲法改正案が第2項の賛成を得たときには憲法改正は確定され,大統領は直ちにこれを公布しなければならない.

 

付則<第9号,1980.10.27>

第1条 この憲法は公布した日から施行する.

第2条 この憲法による最初の大統領と国会議員の選挙は1981年6月30日までに実施する.

第3条 この憲法施行当時の大統領の任期はこの憲法による最初の大統領が選出されると同時に終了する.

第4条 この憲法施行と同時にこの憲法施行当時の統一主体国民会議は廃止されその代議員の任期も終了する.

第5条 ①この憲法施行当時の国会議員の任期はこの憲法施行と同時に終了する.

②この憲法により選挙された最初の国会議員の任期は国会の最初の集会日から開始される.

第6条 ①国家保衛立法会議はこの憲法による国会の最初の集会日前日まで存続し,この憲法施行日からこの憲法による国会の最初の集会日前日まで国会の権限を代行する.

②国家保衛立法会議は各界の代表者により構成し,その組織と運営その他必要な事項は法律で定める.

③国家保衛立法会議が制定する法律とこれに従い行われた裁判及び予算その他処分等はその効力を持続し,この憲法その他の理由に提訴し異議を申し立てることができない.

④国家保衛立法会議は政治風土の刷新と道義政治の具現のためこの憲法施行日以前の政治的又は社会的腐敗や混乱に顕著な責任がある者に対する政治活動を規制する律を制定することができる.

第7条 新たな政治秩序の確立のためこの憲法施行と同時にこの憲法施行当時の政党は当然に解散される.但し,遅くともこの憲法による最初の大統領選挙日3月以前までは新たな政党の設立が保障される.

第8条 ①この憲法により選挙方法又は任命権者が変更された公務員と大法院長·大法官·監査院長·監査委員·憲法委員会委員はこの憲法により後任者が選任されるときまでその職務を行い,この場合,前任者である公務員の任期は後任者が選任される前日までとする.

②この憲法のうち公務員の任期又は重任制限に関する規定はこの憲法によりその公務員が最初に選出又は任命されたときから適用する.

第9条 この憲法施行当時の法令と条約はこの憲法に違背しない限りその効力を持続する.

第10条 この憲法による地方議会は地方自治団体の財政自立度を勘案し順次的に構成し,その構成時期は法律で定める.

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