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日本戦後補償裁判総覧 | ||||||||||
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訴 訟 名 | 原告 | 被告 | 事案 | 原告代理人 | 裁判所 | 提訴上訴日 (訴状リンク) |
判決日 (判決原本リンク) |
判決内容 | 掲載誌 号/頁 |
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1 | 孫振斗手帳裁判 | 韓国人被爆者 | 福岡県知事 | 原告は大阪で生まれ広島で被爆した。戦後朝鮮人は外国人とみなされることになり、外国人登録をしなかった原告は韓国に強制送還された。1970年に漁船で日本に密入国し逮捕されると原爆症の治療のため来日したと訴えた。病状の悪化のため仮釈放されて入院した福岡の病院から被爆者健康手帳の交付を申請したが適法在留でないことを理由に却下され、却下処分の取消を求めて提訴した。 | 久保田康史 福地祐一 山下勝彦 |
福岡地裁 | 1972. 3. 7 | 1974. 3.30認容 | 原爆医療法には国籍条項もなく、適法な居住関係が必要との規定も存在しないから、不法入国者を排除する理由はないとして認容 | 判タ306/173 判時736/29 |
福岡高裁 | 1974. 4.12 | 1975. 7. 7認容 | 原爆医療法は社会保障法の性格とともに国家補償法の性格を有する特別の立法であり、居住関係を要求する理由はないとして福岡県知事の控訴を棄却。 | 判タ325/175 判時789/11 |
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最高裁 | 1975. 7.31 | 1978. 3.30認容 | 原爆医療法は戦争によりもたらされた障害を戦争遂行主体であった国が自らの責任により救済をはかるという国家補償法的一面があり、原告が「戦後平和条約の発効によつて自己の意思にかかわりなく日本国籍を喪失したものであるという事情をも勘案すれば、(原爆医療法の適用は)国家的道義のうえからも首肯されるところである。」と述べ、福岡県知事の上告を棄却した。 | 判タ362/196 判時886/3 |
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2 | 千代田生命生保支払請求訴訟 | 台湾人 | 千代田生命 | 原告は1944年に長女を被保険者とする5万円の生命保険に加入し、長女は1950年に死亡した。物価指数を基に提訴時の価値に換算し、生命保険金1500万円の支払を求めた。 | 牧野芳夫 華岡益之 |
東京地裁 | 1973 | 1978. 1.26棄却 | 日華条約3条の「特別取極」がなされるまで債権が未確定であるとして棄却 | 判時915/78 |
東京高裁 | 1978 | |||||||||
3 | 樺太抑留朝鮮人帰還請求訴訟 | 在日韓国人、日本人6名 | 国 | 日本の敗戦当時、サハリンには強制徴用などにより多数の朝鮮人がいた。戦後日本はソ連と協議してサハリンの日本人引揚を進めたが、朝鮮人は日本国民ではないとして引揚の対象から除外した。その結果多数の朝鮮人が置き去りにされ(残留朝鮮人を含む1947年の在サハリン朝鮮人人口は約43000人)、そのうち7000人は本件提訴当時も帰国を切望していた。京都在住の在日韓国人宋斗会氏らがこの問題を訴えるために自ら原告となり、サハリンに放置した朝鮮人と家族に関する調査、日本又は韓国への帰還希望者の帰還手続、帰還費用負担、精神的・物質的損害の調査・賠償義務の確認を求めて提訴した。 | 本人訴訟 | 東京地裁 | 1974.1.16 | 却下 | 原告らに当事者適格がないとして却下。4事件提訴実現のきっかけとなった。 | |
4 | サハリン残留者帰還請求訴訟 | サハリン残留韓国人4名 | 国 | 原告らは日本の弁護士に訴訟委任状を郵送し、日本への帰還を求めて提訴した。 | 柏木裕 有賀正明 原後山治 浜秀和 泉博 久々湊道夫 伊藤まゆ 有賀信勇 川崎隆司 内田晴康 菅原克也 榊一夫 藍谷邦雄 佐藤博史 斎藤則之 森田昭夫 高木健一 |
東京地裁 | 1975.12. 1 | 1989. 6.15取下 | 原告のうち3名が死亡し、残る1人は韓国への永住帰国が実現したため取下げ。 | |
5 | 国庫債券支払請求訴訟 | 台湾人 | 国 | 原告は1944年に大東亜戦争特別国庫債券を1000円で購入した。卸売物価指数により換算すると当時の1000円は提訴時の約19万円に相当するとして元利合計約50万円の償還を求めた。 | 元林義治 | 東京地裁 | 1977 | 1980. 3.25棄却 | 日華条約3条は「特別取極」まで台湾人が日本国に請求権を行使することができないとする趣旨ではないので、時効は中断しないとして国の消滅時効援用を認めて棄却した。 | 判タ422/108 判時974/102 |
東京高裁 | 1980 | |||||||||
6 | 台湾人戦時貯蓄債券支払請求訴訟 | 台湾人 | 第一勧業銀行 | 原告は1942〜1944年に割増金附戦時貯蓄債券を1000円で購入した。卸売物価指数により換算すると当時の1000円は提訴時の約19万円に相当するとして元利合計約50万円の償還を求めた。 | 元林義治 | 東京地裁 | 1977 | 1980.10.31一部認容 | 同種債券について「特別取極」がないことを理由に支払を拒んできた第一勧銀の消滅時効援用は信義則違反であるとしたが、時価換算は認めず1500円の支払いのみ認容 | 判タ425/56 判時984/47 |
東京高裁 | 1980 | 1984. 7.30一部認容 | 同上 | 判タ533/147 判時1124/189 |
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7 | 台湾人軍票時価払戻請求訴訟 | 台湾人 | 国 | 原告は日本軍が占領地で発行した額面680円の軍票を所持している。この軍票には額面と同額の日本通貨に換金できる旨の記載があり、当時の680円は提訴時の約30万円に相当するとして同額の支払を求めた。 | 元林義治 | 東京地裁 | 1977 | 1980.11.17棄却 | 連合国総司令官の覚書と大蔵省の宣言により軍票を無効無価値とする効果は絶対的に生じたとして棄却 | 判時991/93 |
東京高裁 | 1980 | 1982.4.27棄却 | 同上 | 判タ479/104 | ||||||
8 | 台湾人元日本兵訴訟 | 台湾人戦死者遺族・戦傷病者13名 | 国 | 原告らのうち8名は海軍軍属、1名は陸軍兵士として負傷した者、4名は陸軍軍属として職務従事中に死亡した者の遺族である。原告らは日本人として上記の職務・軍務に従事したが、戦後は恩給法、援護法の国籍条項により戦死者・戦傷病者援護の対象から除外された。原告らは契約責任、憲法29条3項による損失補償、憲法14条による国籍条項無効等により一人当たり500万円の支払を求めた。また、二審において台湾人に対する補償立法をしないことの違憲確認を予備的に請求した。 | 秋本英男 山田伸男 庭山正一郎 錦織淳 羽柴駿 鈴木五十三 遠藤直哉 岩倉哲二 |
東京地裁 | 1977. 8.13 | 1982. 2.26棄却 | 戦争損害にどのような補償をするかは立法政策に委ねられており、契約責任等により当然に補償を請求できるものではない。原告らが特別の犠牲を被ったのは憲法施行前であり、憲法29条3項は遡及適用されない。恩給法、援護法の国籍条項にはそれなりの合理性があり憲法14条に反するとは言えないとして棄却。 | 判タ463/90 判時1032/31 |
東京高裁 | 1982 | 1985. 8.26棄却 | 主位的請求は一審と同じ理由で棄却。予備的請求は司法判断になじまない政治的事項に関するものであり法律上の争訟に当たらないとして却下。ただし「早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待である」等と附言した。これを受け、上告審係属中の1987年、「台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律」が制定され一人200万円の弔慰金等が支給された。 | 判タ562/90 判時1163/41 |
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最高裁 | 1985 | 1992. 4.28棄却 | 援護法・恩給法の適用から台湾人か除外されたのは日華平和条約により「特別取極」の主題とされ外交交渉による解決が予定されたためであり、合理的根拠がある、その後日中共同声明により右の特別取極は不可能となったが、台湾人軍人・軍属にいかなる措置をするかは立法政策に属する問題である、として棄却。 | 判タ787/58 判時1422/91 |
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9 | 台湾人元軍属軍事郵便貯金時価支払請求訴訟 | 台湾人 | 国 | 原告は日本の敗戦前後に軍事郵便貯金として1818円を貯金した。その後払戻請求することが不可能になり、1979年に払戻し請求したところ、支払金額は利息を含め6000円であると通告されたため、現在の貨幣価値による支払(遅延損害金を含め約92万円)を求めた。(軍事郵便貯金については地域別、金額別に換算率を定めて増額した金額が払い戻されていたが、1945.8.16以降に台湾で預入された貯金については増額の対象となっていない) | 元林義治 | 東京地裁 | 1979 | 1977.1.26棄却 | 民法は金銭債権については弁済期に強制通用力をもつ通貨をもって本来の債務額を支払えば足りると定めているとして棄却 | |
東京高裁 | 1977 | 1982.1.28棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 1978 | 1982.10.15棄却 | 現在の貨幣価値による払い戻しを求める現行法上の根拠はないとして棄却 | 判タ483/75 判時1060/76 |
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10 | サハリン残留韓国人補償請求訴訟 | サハリン残留韓国人21名 | 国 | 原告等は未帰還者7名、永住帰国者7名、未帰還者の妻1名、未帰還死亡者の遺族6名である。強制連行・強制労働、帰還させる義務の不履行、引揚妨害行為は「人道に対する罪」に該当するとして一人1000万円の損害賠償を求めた。 | 井上正治 高木健一 木村壮 菅原克也 新美隆 内田雅敏 金敬得 |
東京地裁 | 1990.8.29 | 1995. 7.14取下 | ||
11 | 公式陳謝・賠償請求訴訟 | 韓国人強制動員被害者・遺族等22名 | 国 | 原告らは韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会の会員であり、傷痍軍人・軍属・徴用工、BC級戦犯生還者、久米島朝鮮人虐殺事件生存者、軍人・軍属・徴用工遺族等である。宋斗会氏からのよびかけにより陳謝と賠償義務の確認等求めて提訴した。提訴後に原告団や日韓の支援団体が分裂し、17,21,24,29等の訴訟に分かれた。 | 本人訴訟 | 東京地裁 | 1990.10.29 | |||
12 | 鄭商根訴訟 | 在日韓国人戦傷者 | 国・厚生大臣 | 原告は海軍軍属として済州島から徴用され、マーシャル諸島における連合国の爆撃によって右ひじ切断等の身体障害等級表三級の障害を負った。戦後は大阪で生活し、障害年金申請をしたが、戸籍条項を理由に却下された。(援護法には本文に「日本の国籍を失つたとき」は受給権が消滅する旨の国籍条項、附則に「戸籍法の適用を受けない者については、当分の間、この法律を適用しない。
」との戸籍条項がある。この「戸籍法の適用を受けない者」とは朝鮮人、台湾人を指す。) 原告は援護法の国籍条項は戦前から存在する旧恩給法の規定にならったものであり、自己の意思により国籍離脱した者に適用され(本件提訴当時は国もこのように解していた)、戸籍条項は将来の外交交渉による解決を予定したものであり、日韓請求権協定の解決対象から在日韓国人が除外された時点で無効になった、仮にそうでないならば戸籍条項と国籍条項は憲法14条及び国際人権規約に違反するとして、援護法による援護を受ける地位の確認、障害年金申請却下処分取消、慰謝料1000万円の支払いを求めた。 |
丹羽雅雄 大川一夫 養父知美 在間秀和 菅充行 池田直樹 上原康夫 津田尚廣 |
大阪地裁 | 1991. 1.31 | 1995.10.11却下・棄却 | 地位確認の訴は審査前置に反するとして却下。 日韓請求権協定との関係につき国は、日韓請求権協定2条2で除外したのは在日韓国人の「財産、権利及び利益」であり、「並びに…請求権」ではなく、原告の請求は「並びに…請求権」に該当するから請求権協定の解決から除外されたのではない(韓国が外交保護権を放棄した)と主張した。判決は日韓政府の解釈は齟齬があるが、いずれにせよ二国間交渉で解決する可能性が失われたと指摘し、日韓請求権協定後の戸籍条項・国籍条項は違憲の疑いがあると述べたが、戸籍条項は在日韓国人を援護法の対象から除外する趣旨であるから、請求権協定で解決されなかったとしても無効とならず、在日韓国人軍人・軍属の戦争被害にいかなる援護をするかは立法裁量の問題であるとして却下処分取消と慰謝料請求を棄却した。 |
判タ901/84 |
大阪高裁 | 1995.10.20 | 1999. 9.10棄却 | 同上。 「…長年にわたって補償対象から除外され、その経済的損失も莫大な額に達していることは由々しき事態であり…今後の立法政策において最大限の配慮がなされるべきである」と付言した。 |
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最高裁 | 1999. 9. | 2001. 4.13棄却 | ||||||||
13 | 堤岩里訴訟 | 韓国人(堤岩里虐殺事件被害者遺族) | 国 | 1919年の三一運動の際、日本軍が堤岩里の男子を教会に集め、監禁して放火・銃撃する等して23人を虐殺し、近隣の古州里でも2家族6名を銃殺した。その犠牲者の妻子である原告らが、慰霊碑の建立、謝罪広告、賠償責任の確認等を求めた。 | 本人訴訟 | 東京地裁 | 1991. 7.15 | 1999. 3.26休止満了 | 宋斗会氏の呼びかけにより問題提起訴訟として提訴したものであり、法廷での主張・立証は行わなかった。 | |
14 | サハリン上敷香事件訴訟 | 韓国人(上敷香虐殺事件被害者遺族) | 国 | 敗戦直後のサハリン上敷香において、16人の朝鮮人がスパイ容疑等で警察署に連行され、署内で射殺された。原告らは犠牲者の姉と子であり、民法又は国際法により原告一人当たり3000万円慰謝料と謝罪広告の掲載を求めた。 | 宮田信男 光前幸一 吉ケ江治道 小山達也 |
東京地裁 | 1991. 8.17 | 1995. 7.27棄却 | 実体審理に入ることなく職権で除斥期間を適用し棄却した。 | 判タ894/197 |
東京高裁 | 1995. 8. 9 | 1996. 8. 7棄却(確定) | 同上 | |||||||
15 | 日本鋼管損害賠償請求訴訟(金景錫裁判) | 韓国人元徴用工 | 日本鋼管 | 原告は1942年に官斡旋方式により連行され、川崎製鉄所で労働させられた。翌年、同所では酷使と差別待遇に怒った朝鮮人労働者がストライキを行ったが、原告はその中心人物のみなされ、木刀で殴打されるなどして後遺障害を負った。 国際法と民法により1000万円の賠償と謝罪広告の掲載を求めた。 |
梓澤和幸 鵜飼良昭 羽倉佐知子 桑原育朗 米倉勉 三木恵美子 森川文人 |
東京地裁 | 1991. 9.30 | 1997. 5.26棄却 | 国際法は私人に賠償責任を負わせるものではなく、民法上の責任が認められるとしても時効・除斥期間の経過により消滅したとして棄却 | 判タ960/220 判時1614/41 |
東京高裁 | 1997. 5.29 | 1999. 4. 6和解 | 和解条項には「被控訴人は当該事件に巻き込まれて負傷し障害が残ったとの控訴人の主張を重く受けとめ、控訴人が障害をもちながら永きにわたり苦労したことに対し、真摯な気持ちを表するものであり、その意思を表するため、金410万円を支払う」と記載された。 | |||||||
16 | 韓国人BC級戦犯国家補償等請求訴訟 | 韓国人元BC級戦犯7名・刑死者遺族1名 | 国 | 第二次世界大戦中、多くの朝鮮人軍属が捕虜監視員として働かされ、その結果戦後148名の朝鮮人がBC級戦犯として有罪判決を受け、うち23名が刑死した。 原告らは条理に基づき、賠償、補償立法不作為の違法確認、謝罪を求めた。 |
今村嗣夫 小池健治 平湯真人 木村庸五 秀島ゆかり 和久田修 上本忠雄 |
東京地裁 | 1991.11.12 | 1996. 9. 9棄却・却下 | 違法確認は却下、その余はこのような犠牲について立法を待たずに当然に国家補償を請求することができるという条理はいまだ存在しないとして棄却 | 判時1600/3 |
東京高裁 | 1996.9.19 | 1998. 7.13棄却・却下 | 同上。 但し、「国政関与者においてこの問題の早期解決を図るため適切な立法措置を講じることが期待されるところである」等と附言した。 |
判時1647/39 |
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最高裁 | 1998. 7.14 | 1999.12.20棄却 | ||||||||
17 | アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟 | 韓国人元「慰安婦」・軍人軍属、遺族40名 | 国 | 原告らは旧日本軍軍人軍属の生還者17名、死亡者遺族15名、元日本軍「慰安婦」8名である。 生還者中には重篤な障害を負った戦傷者3名、BC級戦犯として服役した者1名、死亡者中にはBC級戦犯としての刑死者、浮島丸事件の犠牲者、広島での爆死者各1名、「慰安婦」原告中には初めて実名で名乗り出た金学順さんが含まれている。 原告らは各2000万円の損害賠償ないし損失補償を求め、法的根拠として、人道に対する罪違反等の国際法にもとづく補償ないし賠償請求、憲法前文・ポツダム宣言受諾による原状回復請求、憲法29条3項に基づく補償、国際法上の平等原則に基づく補償請求、憲法の平等原則に基づく補償請求、条理に基づく補償請求、安全配慮義務違反、民法上の不法行為にもとづく賠償請求、立法不作為にもとづく国家賠償請求等を挙げた。 |
高木健一 幣原廣 福島瑞穂 梁文洙 山本宜成 渡邉智子 小沢弘子 渡邉彰悟 古田典子 森川真好 林和男 |
東京地裁 | 1991.12. 6 | 2001. 3.26棄却 | 国際法の原則的法理によれば国際法により個人の民事請求権を行使する余地はない、カイロ宣言・ポツダム宣言等により個人請求権を行使することはできない、援護法・恩給法の国籍条項は不合理な差別とはいえない。憲法29条3項は遡及適用されない、戦争犠牲について国家に補償を請求できるという条理は存在しない、安全配慮義務については具体的な主張・立証がない、民法上の不法行為については国家無答責及び除斥期間、立法不作為については原告らに補償金を給付しないことは違法とはいえない、未払い給与は財産権措置法により消滅し、憲法29条3項の補償の対象外であるなどとして棄却。 | |
東京高裁 | 2001. . | 2003. 7.22棄却 | 国家無答責の法理を否定し、原告の一部に対する安全配慮義務違反、日本軍「慰安婦」原告に対する不法行為の成立を認めたが、財産権措置法及び除斥期間により消滅したとして棄却。なお、国は控訴審で予備的主張として日韓請求権協定にいう「財産、権利及び利益」は財産権措置法により消滅し、「請求権」は日韓請求権協定の直接適用により日本国はこれに応じる義務がなくなった」との新主張を行った。判決は「日韓請求権協定の直接適用…」との主張には触れず、「財産・権利及び利益」の範囲を国の主張より拡大し、元軍人・軍属・軍「慰安婦」の損害賠償請求権までに該当し財産権措置法で消滅したとの独自の解釈を行った。 | 判時1843/32 |
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最高裁 | 2003 | 2004.11.29棄却 | 日韓請求権協定締結後にいう恩給法・援護法の国籍条項を存置したことは憲法14条に違反せず、財産権措置法は憲法17条、29条に違反するものではないと判示して棄却した。(「財産・権利及び利益」の範囲については判断しなかった。) | 判タ1170/144 判時1879/58 |
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18 | 江原道遺族会訴訟 | 韓国人元徴用工・軍人軍属・遺族24名 | 国 | 江原道の太平洋戦争被害者遺族会の会員である原告らは不法行為による損害賠償・謝罪請求、明治憲法27条による損失補償、安全配慮義務違反による損害賠償、国際法違反による損害賠償・謝罪請求、立法・行政不作為による国家賠償請求として各5000万円の損害賠償と謝罪文の交付を求めた。(2審で請求額を各200万円に減縮した。) | 松田生朗 泉澤章 藤田正人 福山洋子 松浦信平 |
東京地裁 | 1991.12.12 | 1996.11.22棄却 | 不法行為責任については国家無答責、明治憲法27条から直接損失補償責任が生じることはない、戦争被害は国民の等しく受忍しなければならないところであり「特別の犠牲」とはいえない、安全配慮義務については具体的な主張がない、強制労働条約は及び慣習国際法は個人の請求権を認めるものではない、援護法等の国籍条項は憲法14条や国際人権規約に反するものではなく立法義務は認められないなどとして棄却した。 | |
東京高裁 | 1996.12. 6 | 2002. 3.28棄却 | 同上。 なお、安全配慮義務については原告らは各企業の労務管理の下にあったから国とのあいだで特別の社会的接触の関係があっとはいえないとした。 |
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最高裁 | 2002 | 2003. 3.28棄却 | ||||||||
19 | 金順吉裁判 | 韓国人被爆徴用工 | 三菱重工 国 |
原告は釜山で妻、母、弟を扶養していたが、1944年末に国民徴用令により徴用され、三菱重工長崎造船所で労務に従事させられた。作業中に原子爆弾に被爆したが、国も三菱も原告を放置したため、やむなく自力で帰国した。 原告は国と三菱に慰謝料と帰国費用、三菱に未払賃金の支払を求めた。 |
龍田紘一朗 小林清隆 魚住昭三 |
長崎地裁 | 1992.7.31 | 1997.12. 2棄却 | 三菱に対する請求について、原告は軟禁に近い状態で労働に従事させられており、旧三菱には不法行為責任があるが、現在の三菱重工は旧三菱とは別個の法人であるとして棄却。国に対する請求について、警察官による強制連行を違法と認めたが、これは権力作用であり、国家無答責により国は責任を負わないとして棄却した。 | 判タ979/204 判時1641/124 |
福岡高裁 | 1997.12. 9 | 1999.10. 1棄却 | 同上 | 判タ1019/155 | ||||||
最高裁 | 1999.10. | 2003.3.28棄却 | ||||||||
20 | 石成基・陳石一訴訟 | 在日韓国人戦傷者 | 厚生大臣 | 1919年生まれの原告陳石一は15歳の時に来日し船員として働いていたが、20歳の時に船ごと徴用され、海軍軍属となった。1945年に船が米軍機の攻撃を受け、左足を失った。 1921年生まれの原告石成基は1942年に海軍軍属として徴用され、マーシャル群島に送られた。陣地構築中に米軍機の機銃掃射を受け、右腕を失った。 両原告は戦後は日本で生活したが、日本国籍を失ったとして戦傷者援護から除外されたため、「傷痍軍人会」をつくり大島渚監督のドキュメンタリー「忘れられた皇軍」の制作に関与する等して補償を訴え続けた。 原告らは援護法附則の戸籍条項は将来の外交交渉による解決を予定したものであり、日韓請求権協定の対象から在日韓国人が除外され外交交渉による解決がなくなったことにより失効、又は憲法14条及び国際人権規約に違反し無効であるとして、障害年金申請却下処分の取消を求めた。 (国側は日韓請求権協定で適用除外されたのは在日韓国人の「財産・権利及び利益」であり、「並びに…請求権」に属する本件は日韓請求権協定の対象として、韓国政府が外交保護権を放棄することにより解決したと主張した。) |
新美隆 金敬得 梁文洙 在間秀和 菅充行 |
東京地裁 | 1992.8.13 | 1994. 7.15棄却 | 戸籍条項は在日韓国人を援護法の対象から除外する趣旨であるから、請求権協定で解決されなかったとしても無効とならず、在日韓国人軍人・軍属にいかなる援護をするかは立法裁量の範囲内であるとして棄却。 ただし、50年にわたり立法不作為の状況にある原告らは「極めて同情すべき状況」であると述べた。 |
判タ855/161 判時1505/46 |
東京高裁 | 1994.7.26 | 1998. 9.29棄却 | 援護法制定時には在日韓国人の国籍が未確定であり、サンフランシスコ平和条約後は外交交渉による解決が予定されており、戸籍条項には合理性があった。また、この問題が日韓請求権協定で解決したとの日本政府の見解もそれなりに合理性があり、戸籍条項が失効するほどの不平等状態に陥っているとはいえない、等として棄却。 | 判時1659/35 |
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最高裁 | 1998.10.13 | 2001. 4. 5棄却 | 日韓請求権協定後も戸籍条項を存置したことは立法裁量の著しい逸脱とは言えないとして棄却。なお、上告審係属中の2000年5月31日に「平和条約国籍離脱者戦没者遺族弔慰金等支給法」が成立し、戦没者一人当たり260万円の弔慰金等が支給されたが、深澤補足意見は「ほとんど法の下の平等に反する」「弔慰金の支給は差別状態の解消に充分なものとは評価しがたい」「人道的見地に立脚した明確な法的解決が望まれる」と述べた。 | 判タ1063/109 判時1751/68 |
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21 | 浮島丸訴訟 | 韓国人浮島丸乗船者・遺族 | 国 | 日本の敗戦時、青森県の大湊地区には海軍の警備府がおかれ、数千人の朝鮮人徴用工・軍属がいた。海軍特設艦浮島丸は約4000人の朝鮮人と日本人船員を乗せ大湊を出港し、釜山に向かったが、途中で舞鶴港に入港し、爆発・沈没した。国によれば、原因は米軍機雷への接触、死者は朝鮮人乗船者524人、日本人船員25名とされているが、積極的な原因解明は行われず、韓国では意図的な爆沈(虐殺)であり犠牲者は前記よりはるかに多いとの説も根強い。原告らは浮島丸の生存者と犠牲者遺族であり、遺族は犠牲者の遺骨も受け取っていない。原告らは国賠法類推・安全配慮義務・損失補償等を根拠に、自爆(虐殺)であったか触雷事故であったかを問わず国に賠償義務があるとして死者5000万円、生存者2000万円の賠償、公式陳謝、祐天寺保管の遺骨返還を求めた。 | 小野誠之 堀和幸 山本晴太 松本康之 中田政義 池上哲朗 武田信裕 金京富 新谷正敏 戸田洋平 |
京都地裁 | 1992. 8.25 | 2001. 8.23一部認容 | 安全配慮義務違反により生存者について各300万円の賠償を認容し、公式謝罪は却下、遺族の請求は棄却。 祐天寺保管の遺骨返還は国が結審直前に認諾した。 |
判時1772/121 |
大阪高裁 | 2001. 9. 3 | 2003. 5.30棄却 | 「多数の朝鮮人徴用工らを乗船させ触雷の危険を伴う航海を命令したとしても,当該具体的状況の下におけるやむを得ない措置」であったとして棄却。 |
判タ1141/84 | ||||||
最高裁 | 2003. 6.13 | 2004.11.30棄却 | ||||||||
22 | 対日民族訴訟 | 韓国人植民地・戦争被害者369人 | 国 | 原告らは韓国の独立運動家遺族、挺身隊・労務者・軍属・軍人等として強制動員中に死亡した被害者の遺族、生還した被害者、南北離散家族等である。 原告らは無効条約により韓国を支配した不法行為、支配期間中韓民族に加えた各種行為、国土分断と民族離反、6.25動乱(朝鮮戦争)を惹起した不法行為について、原状回復義務・損害賠償・公式謝罪責任の存在確認、謝罪文交付、選定当事者中独立運動家遺族に2000万円、強制動員被害者遺族に死亡までの過程の調査の実行及び資料引渡・遺骨送還・各4000万円又は7000万円の支払い、強制動員被害者生存者には各2000万円〜5000万円の支払い、南北離散家族には各1000万円又は99円の支払を求めた。 二審において日本軍「慰安婦」被害者に対する立法不作為による賠償を予備的に追加し、賠償額を全て各1円に減縮した。 |
本人訴訟(15名の選定当事者中に韓国弁護士) | 東京地裁 | 1992. 8.28 | 96. 3.25却下・棄却 | 確認請求のうち原告以外の第三者に対する部分は「法律上の争訟」に該当せず、原告らに関する部分も紛争の終局的解決に役立たず確認の利益がないとして却下。 給付請求は慣習国際法・カイロ宣言・ポツダム宣言・国際司法裁判所規定による「法の一般原則」・「人道に対する罪」・憲法前文2項は被害者個人の加害国に対する民事責任の追及を認めたものではなく、民法上の不法行為は国家無答責により認められないとして棄却。 |
判時1597/102 |
東京高裁 | 1996. 3.26 | 1999. 8.30棄却 | 同上。 予備的主張につき、立法不作為責任は一義的に憲法の明文に反する場合に限るとして「慰安婦」に対する立法不作為責任を否定した。 |
判時1704/54 |
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最高裁 | 1998.10.13 | 2003.3.27棄却 | ||||||||
23 | 不二越一次訴訟 | 韓国人元女子勤労挺身隊員 | 不二越 | 原告らのうち2名は国民学校(小学校)6年のときに、「不二越に行けば金も稼げる、女学校にも行ける」などと言われて勤労挺身隊に応募し、他の一名は19歳のときに徴用令書により富山の不二越に連行された。不二越では行動の自由が制限され、危険な重労働に従事させられ、食物は不足し、女学校に行くどころか、給料も支給されなかった。 原告らは一人当たり500万円の損害賠償、未払い賃金、謝罪広告の掲載を求めた。 |
松波淳一 青山嵩 黒田勇 山本直俊 斉藤寿雄 金川治人 山田博 奥村回 飯森和彦 |
富山地裁 | 1992. 9.30 | 1996. 7.24棄却 | 賃金債権の消滅時効起算点は日韓請求権協定では個人の権利が消滅しないとの国会答弁があった1991年、不法行為の除斥期間は原告らの帰国時から開始するとして棄却 | 判タ941/183 |
名古屋高裁金沢支部 | 1996. 8. 6 | 1998.12.21棄却 | 時効・除斥期間により棄却。ただし一審の時効起算点を否定し、遅くとも日韓国交回復時からは訴訟提起が可能であったとして、これを起算点とした。 | 判タ1046/161 | ||||||
最高裁 | 1998.12.25 | 2000. 7.11和解 | 和解の内容は、不二越が原告3人を含め、米国で訴訟を準備していた関係者ら計8人・一団体に総額3000〜4000万円の解決金を支払う、戦時中の労働に感謝するため会社構内に記念碑を設置する等 | |||||||
24 | 金成壽国家賠償請求訴訟 | 韓国人戦傷者 | 国 | 原告は1942年、17歳のときに志願して日本陸軍に入隊し、各地を転戦したが、ビルマで迫撃砲により負傷し、野戦病院に入院中に爆撃を受けて右腕を切断した。 しかし、戦後は国籍条項により恩給法の対象から除外され、同様の境遇の日本人が累計2億円以上の恩給を受給したのに、原告は全く無補償のまま放置された。 原告は、恩給法は国家補償的制度であるから、増加恩給受給権者である傷痍軍人・自己の意思によらない日本国籍喪失者・朝鮮半島出身の軍人・軍属には適用されず、また国籍条項は憲法13条、14条、国際人権規約に違反して無効であり、少なくとも原告が日本国籍を喪失する1952年までの恩給を支給しなかったのは違法であるとして未支給の恩給相当額に慰謝料と弁護士費用を加えた2億4430万9000円の国家賠償を請求した。 |
山口紀洋 和久田修 田邉昭彦 谷直樹 |
東京地裁 | 1992.11. 5 | 1998. 6.23棄却 | 恩給法は国家補償的性格とともに生活保障的性格を有するので、増加恩給受給者である傷痍軍人への適用が当然に否定されるものではなく、国籍要件の文言も自己の意思によらない国籍喪失を除外していないから原告を恩給法の適用から除外する解釈を行ったとしても国家賠償法上の違法行為とは言えない。旧軍人への恩給支給の有無を国籍によって区別することも立法裁量の範囲内であり、憲法14条、国際人権規約に違反しないなどとして棄却。 ただし、「原告の憤懣やるかたない心情とその境遇は想像を絶するものがあり、同情を禁ずることができない」と述べた。 |
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東京高裁 | 1998. 7. 6 | 2000. 4.27棄却 | ||||||||
最高裁 | 2000 | 2001.11.16棄却 | ||||||||
25 | シベリア抑留在日韓国人恩給・慰労金訴訟(李昌錫) | 在日韓国人シベリア抑留被害者 | 総務庁恩給局長・内閣総理大臣・国 | 原告は1943年、18歳のときに陸軍に志願入隊し旧満州国で軍務についていたが、敗戦の翌日にソ連軍に武装解除され、1953年まで8年間シベリアに抑留された。戦後は日本で生活しているが、1992年に恩給請求したところ、サンフランシスコ平和条約により国籍を喪失しているので恩給受給権を失っているとして棄却された。原告は恩給法の国籍要件は自己の意思によらない国籍喪失者には適用されない、仮にそうでないとすれば憲法ないし国際人権規約違反であるとして、旧軍人普通恩給請求棄却処分取消、平和祈念事業特別基金法に基づく慰労金等却下決定無効確認、損失補償1000万円の支払を求めた。 | 小山千蔭 坂和優 中島俊則 永井弘二 武田信裕 池上哲朗 金京富 |
京都地裁 | 1992.11. 9 | 1998. 3.27却下・棄却 | 慰労金等却下決定無効確認は却下。 その余の請求については国籍条項は在日韓国人に適用されるが在日韓国人の旧軍人に何らかの措置を講ずることなく恩給法に国籍条項を存置しても立法裁量を逸脱したとは言えず憲法14条に違反しないとして棄却 |
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大阪高裁 | 1998. 4. 1 | 2000. 2.23棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2000 | 2002. 7.18棄却 | 同上 | 判タ1104/147 判時1799/96 |
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26 | 関釜裁判 | 韓国人元日本軍「慰安婦」・女子勤労挺身隊員 | 国 | 原告のうち3人は元日本軍「慰安婦」である。欺罔や甘言により、台湾、上海などに送られ、強姦された後に慰安所で毎日多数の軍人の相手をさせられた。原告の一人は軍人から腹を蹴破られ、日本刀で切り付けられた。 他の7人は元女子勤労挺身隊員である。12〜13才のときに小学校の教師や憲兵から挺身隊に行けば金も稼げて女学校にも行けるなどと言われて応募し、沼津の東京麻糸、富山の不二越、名古屋の三菱に送られたが、行動の自由が制限され、危険な重労働に従事させられ、食物は不足し、女学校に行くどころか、給料も支給されなかった。 原告らは憲法前文、旧憲法の損失補償、安全配慮義務、立法不作為等により公式謝罪、 元「慰安婦」原告に賠償各1億1000万円、法務大臣の「公娼」発言による慰謝料100万円、勤労挺身隊原告につき損害賠償各3300万円の支払いを求めた。 |
山崎吉男 李博盛 山本晴太 松本康之 福島武司 藤田正人 片見富士夫 水野彰子 李宇海 |
山口地裁下関支部 | 1992.12.25 | 1998. 4.27一部認容 | 元「慰安婦」原告につき河野談話以降の特別立法の遅延に対する慰謝料30万円を認容、勤労挺身隊原告の請求は棄却。 | 判時1642/24 |
広島高裁 | 1998. 5. 1 | 2001. 3.29棄却 | 戦後補償問題に関する対応の在り方は立法府の裁量的判断にゆだねられているとして立法不作為責任を否定し一審判決を取り消した。 なお、国は二審で「財産、権利及び利益」は財産権措置法により消滅し「請求権」は韓国民個人ではなく韓国政府が請求すべきものであったが請求権協定で外交保護権を放棄した結果請求できなくなったとの新主張を行ったが、判決はこれを否定し、請求権協定にかかわらず個人の請求権の存否は裁判所が具体的に判断するとした。 |
判タ1081/91 判時1159/42 |
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最高裁 | 2001. 4.12 | 2003. 3.25棄却 | ||||||||
27 | フィリピン性奴隷国家補償請求事件 | フィリピン人元「慰安婦」46名 | 国 | 原告らは日本軍の性暴力被害者である。市場等の日常的な生活の場で突然日本軍に捕えられ、監禁されて継続的な性暴力を受けた。被害当時の年齢は15歳以下が15人、16〜20才が18人、20代12人、30代1人であり、監禁期間は短い者で1月、永い者は2年以上に及んだ。連行と強姦はむき出しの暴力を伴っており、娘の連行に抵抗する父親が日本刀で首を切り落とされたり銃剣で刺殺されるなど、連行の際に家族を目の前で殺害された者が何人もいる。原告らは戦後も被害体験による精神的、肉体的な後遺症に苦しみ続けた。 原告らはハーグ陸戦条約3条、「人道に対する罪」違反、フィリピン国内法、日本民法の不法行為により各2000万円の損害賠償を求めた。二審では救済立法をしない立法不作為、加害行為の行為者を処罰していない醜業禁止条約上の処罰義務違反についての国家賠償も追加して主張した。 |
高木健一(一審) 林陽子(一審) 横田雄一 武村二三夫 中北龍太郎 小山千蔭 佐藤芳嗣 中道武美 大島有紀子 小川原優之 池田直樹 秋田一惠 菅沼友子 稲垣隆一 大作晃弘(一審) 竹下政行 東澤靖 重村達郎 中島光孝 幸長裕美 川口和子(二審) |
東京地裁 | 1993. 4. 2 | 1998.10. 9棄却 | ハーグ陸戦条約は個人の交戦国に対する直接の損害賠償請求を認めたものではない、「人道に対する罪」は戦争犯罪者の国際刑事責任を処罰するためのものであり、違反行為者の所属国の民事責任を基礎づけるものとはいえない、フィリピン国内法の不法行為に該当するとしても法例11条2・3項は日本法においても不法行為に該当することを要件としているところ、日本では国家無答責の法理により国家の不法行為に民法の適用がない、仮に適用があるとしても除斥期間を経過しているとして棄却。事実認定も行わなかった | 判タ1029/96 判時1683/57 |
東京高裁 | 1998.10.23 | 2000.12. 6棄却 | 同上。 追加主張につき立法不作為はは憲法の一義的文言に違反しない限り違法とはならない、処罰義務が存在したとしても被害者個人に対する義務ではなないとして棄却。 |
判タ1066/191 判時1744/48 |
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最高裁 | 2000.12.20 | 2003.12.25棄却 | ||||||||
28 | 在日元「慰安婦」裁判(宋神道) | 在日韓国人元日本軍「慰安婦」 | 国 | 原告は15歳のとき親の決めた結婚を嫌って逃げ、子守などをして生活していたが、戦地にいけば結婚等しなくとも生きていけるなどとの甘言により性に関する仕事とは知らぬままに武昌の慰安所に連行された。何度も逃亡をはかったがその度に連れ戻され暴行を受け、結局敗戦まで数か所の慰安所を転々とさせられた。多いときは一日数十人の日本兵の相手をさせられ、妊娠・出産した子は養子に出さざるを得なかった。軍人に切り付けられた傷跡が今も残っている。 原告は国際法、民法上の不法行為、名誉棄損、処罰義務違反、補償立法を懈怠した立法不作為により謝罪文交付、国会における公式謝罪、慰謝料1200万円(一審途中で裁判所の勧奨により金員請求を追加)を求めた。 |
藍谷邦雄 中下裕子 金敬得 福島瑞穂 渡辺智子 小沢弘子 |
東京地裁 | 1993. 4. 5 | 1999.10. 1棄却 | 奴隷禁止条約、強制労働条約等は個人の直接請求権を認めるものではなく、不法行為については国家無答責、名誉棄損については限度を超えた侮辱行為とまでは認められない、処罰義務違反は被害者に対する不法行為とはならない、立法不作為は憲法の一義的文言に違反しない限り違法とはならない、等として棄却。 | |
東京高裁 | 1999.10. 7 | 2000.11.30棄却 | 同上。ただし慰安所の運営については公権力の行使にあたらない不法行為が存在するとして国家無答責を適用せず、除斥期間の経過により棄却した。 | 判時1741/40 |
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最高裁 | 2000.12.12 | 2003. 3.28棄却 | ||||||||
29 | 光州千人訴訟 | 韓国人元軍人・軍属・強制動員被害者約1000名 | 国 | 原告らは、全て光州市とその周辺に居住し太平洋戦争被害者光州遺族会の会員であり、憲法前文、旧憲法の損失補償、安全配慮義務、立法不作為、慣習国際法違反等により朝鮮人の戦争動員に関する資料の公開、調査、謝罪広告、死没者5000万円生存者3000万円の賠償を求めた。 | 山崎吉男 李博盛 山本晴太 松本康之 福島武司 藤田正人 水野彰子 李宇海 |
東京地裁 | 1993. 6.30 | 1998.12.21棄却 | 憲法前文は具体的権利の根拠とならない、法律の規定がない限り旧憲法上の損失補償は請求できない、安全配慮義務は具体的主張がない、立法は憲法の一義的文言に違反しない限り違法とはならない、等として棄却。 | |
東京高裁 | 1998.12.21 | 1999.12.21棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2000. 2. 8却下 | |||||||||
30 | 香港軍票補償請求訴訟 | 中国人(香港住民) | 国 | 香港は1941年12月から敗戦まで日本軍の軍政下に置かれたが、1943年以降、軍票以外の通貨の流通を罰則をもって禁止し香港ドルを強制的に軍票に交換させた。原告らは貴重な財産を軍票に交換し、その後これを保持し続けてきた。 原告らはハーグ陸戦条約3条、損失補償、不法行為、精算義務違反などにより、原告の所持する軍票額面額の200倍の金額及び各1000万円の慰謝料を請求した。 |
内田雅敏 高木健一 五百蔵洋一 石田明義 幣原廣 小川原優之 神田安積 平澤千鶴子 仙石由人 |
東京地裁 | 1993. 8.13 | 1999. 6.17棄却 | ハーグ陸戦条約3条は個人の賠償請求権を認める趣旨ではなく、軍票は連合国総司令官の覚書を受けた大蔵省声明で絶対的無効になり精算義務も生じない、憲法29条の損失補償は遡及しない、国の不法行為は国家無答責により認められない等として棄却 | |
東京高裁 | 1999 | 2001. 2. 8棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2001. 2. | 2001.10.16棄却 | ||||||||
31 | 姜富中訴訟 | 在日韓国人戦傷者 | 国 厚生大臣 |
原告は1920年に慶尚南道で出生し、15歳のころ三重県に移住、22歳のころに徴用され海軍軍属として南洋諸島に派遣され、戦闘機の機銃掃射により右手の母指以外の指を失い、右まぶた下にも被弾して右目の視力を殆ど失った。戦後も日本で生活し1993年に障害年金を請求したが、戸籍法の適用を受けない者であるとして却下され、障害年金請求却下処分取消、慣習国際法、不法行為、(立法不作為につき)国賠法により2000万円の損害賠償を求めて提訴した。 | 小山千蔭 坂和優 中島俊則 永井弘二 武田信裕 池上哲朗 金京富 |
大津地裁 | 1993. 8.26 | 97.11.17棄却 | 戸籍条項が設けられたのは特別取極の主題として外交交渉により解決することが予想されたためであり、合理性があるとして棄却。 | 判時1718/44 |
大阪高裁 | 1997.11.21 | 1999.10.15棄却 | 請求権協定締結後も援護法の戸籍条項を放置したことは憲法14条又は自由権規約26条に違反する疑いがあるとしつつ、立法がなされない限り厚生大臣は本件処分をなさざるを得ないとして取消を棄却、国会議員の故意を否定して賠償も棄却 | 判時1718/30 |
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最高裁 | 1999.10. | 2001. 4.13棄却 | ||||||||
32 | 人骨焼却差止住民訴訟 | 東京都新宿区住民109名 | 新宿区長・新宿区助役・新宿区収入役 | 1989年7月、新宿区戸山一丁目の旧陸軍軍医学校の跡地に建設中の国立予防衛生研究所建設現場から100体以上の人骨が発掘された。人骨には刺傷、銃創の疑いのある損傷があり、人体実験の犠牲者の人骨であると疑われたが、新宿区はこれを問うことなく火葬・埋葬の予算を計上した。 原告らは当該人骨は戦争犯罪にかかわる遺骨である可能性が高く、その火葬・埋葬は国際法、刑法等に反するとして火葬・埋葬費用の支出差止を求めて住民監査請求をしたが監査委員がこれを却下したため、地方自治法242条の2による住民訴訟を提起した。 |
森川金寿 南典男 森川文人 林和男 山内一浩 |
東京地裁 | 1993. 9. 2 | 1994.12. 5却下 | 本件の費用は445万5000円に過ぎず、事後的な損害賠償請求を妨げる理由もないから住民訴訟の要件である「回復の困難な損害を生ずるおそれのある場合」(地自法242条の2第1項但書)に該当しないとして却下 | 判タ864/61 判時1517/18 |
東京高裁 | 1994.12.16 | 1995.12.20棄却 | 同上 | 判タ945/336 判時1565/90 |
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最高裁 | 1995.12.27 | 2000.12.19棄却 | 同上 | 判タ1053/89 判時1737/22 |
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33 | オランダ人元捕虜・民間抑留者訴訟 | オランダ人元捕虜・民間抑留者(強制労働・虐待・「慰安婦」被害者)8名 | 国 | 日本軍は1942年3月までにオランダ領東インド(現インドネシア)全域を占領し、捕虜収容所に99000人の捕虜、抑留所に約80000人の民間人を収容した。原告のうち一人は高校を卒業したばかりの年で収容され、強制売春をさせられた。その余の原告は餓えと日常的な暴行に苦しみながら泰緬鉄道建設などの重労働に酷使された。 原告らはハーグに本拠をおく「対日道義債務請求財団」の会員であり、ハーグ陸戦条約第3条、慣習国際法により各22000米ドルの損害賠償を請求した。 |
新美隆 藍谷邦雄 鈴木五十三 永野貫太郎 鈴木一郎 木喜孝 吉田瑞彦 山下朝陽 |
東京地裁 | 1994. 1.24 | 1998.11.30棄却 | 国際法が個人の請求権の発生根拠となるためには個人の権利義務が明確に規定されており、それを定めようという締約国の意思が確認できることが必要であるとし、ハーグ陸戦条約は起草過程において個人の救済をも目的としていたが、参加国が個人が加害国に直接賠償できる規定として制定しようとしたという意思は認められないとして、ハーグ陸戦条約3条等による請求を否定した。 | 判タ991/262 判時1685/3 |
東京高裁 | 1998.12. 2 | 2001.10.11棄却 | 同上。なお、国は二審でサンフランシスコ条約14条(a)により連合国民の請求権は連合国により放棄され、日本国及び国民は請求に応じる法律上の義務が消滅したとの新主張を行った。判決は同条約の締結過程での日蘭代表の非公開交渉の存在などを理由に基本的にこれを受け容れ予備的理由とした。ただし、「連合国民の実体的権利も消滅した」と認定し、後の2007年4月27日最判とは異なっている。 | 判タ1072/88 判時1769/61 |
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最高裁 | 2001.10. | 2004. 3.30棄却 | ||||||||
34 | 金成壽恩給請求棄却処分取消請求訴訟 | 韓国人戦傷者 | 総務省恩給局長 | 原告は24事件原告と同一人である。1994年に恩給法により増加恩給の申請をしたところ、国籍条項を理由として却下された。原告は自己の意思によらない国籍喪失者に恩給法の国籍条項を適用するのは憲法14条、国際人権規約、条理に反するとして、傷病恩給請求棄却処分の取消を求めた。 | 山口紀洋 和久田修 田邉昭彦 谷直樹 鶴見俊男 |
東京地裁 | 1995. 1.18 | 1998. 7.31棄却 | 恩給には社会保障的要素があるから、対象を自国民に限るという国籍条項にはそれなりの合理性があり、原告のような自己の意思によらない国籍喪失者に適用しても憲法14条等に違反するものではないとして棄却 | 判時1657/43 |
東京高裁 | 1998. 8. 4 | 1999.12.27棄却 | 同上。国籍条項はサンフランシスコ平和条約により問題の解決が二国間の特別取極めに委ねられたために設けられたものであり、合理的であるとの理由を付加した。 | |||||||
最高裁 | 20 | 2001.11.16棄却 | 同上。日韓請求権協定で旧軍人の請求権について韓国がいかなる主張もすることができないとされ、その後韓国政府が旧軍人への補償立法をしないという状況の下で日本が韓国人旧軍人に何らかの措置を講ずるか否かは立法政策上の問題であるとした。 | 判タ1079/74 判時1770/86 |
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35 | 連合軍捕虜等訴訟 | イギリス・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド人元捕虜7名 | 国 | 各国の被害者団体の代表者らを原告とし、ハーグ陸戦条約第3条、慣習国際法により各22000米ドルの象徴的賠償を求めた事実上の代表訴訟である。原告のうち4人は捕虜、3人は民間人であり、シンガポール、フィリピン、台湾などの収容所に抑留され、餓えに苛まれ、暴行を受けながら労働を強いられた。 |
新美隆 藍谷邦雄 鈴木五十三 永野貫太郎 鈴木一郎 木喜孝 吉田瑞彦 山下朝陽 |
東京地裁 | 1995. 1.30 | 1998.11.26棄却 | 国際法は一義的に国家間の権利義務を定めるものであり、個人の被害は国家が外交保護権等を行使することにより救済されるに過ぎない。個人が金銭賠償を請求できるのは混合仲裁裁判所の設置が国家間で協定された場合のみであるなどとして、ハーグ陸戦条約3条や慣習国際法による請求を否定した。 | 判タ998/92 判時1685/3 |
東京高裁 | 1998.11.26 | 2002. 3.27棄却 | 同上 | 判時1802/76 |
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最高裁 | 2002 | 2004. 3.30棄却 | ||||||||
36 | 韓国人元BC級戦犯公式謝罪・国家補償請求訴訟 | 韓国人元BC級戦犯・遺族8名 | 国 | 第二次世界大戦中、多くの朝鮮人軍属が捕虜監視員として働かされ、その結果戦後148名の朝鮮人がBC級戦犯として有罪判決を受け、うち23名が刑死した。原告のうち1名は刑死者の遺族、4名は戦犯として7月〜4年8月服役した者、3名は服役した者の遺族である。 原告らは刑死者5000万円、生存者500万円の損害賠償、上官の書いた未払賃金証明書の未払賃金額面を120倍した金員支払、刑死を公務上の死亡と同視すべきことの確認、補償立法を行なわないことの違法確認を求めた。 |
川上英一 山本晴太 中久保満昭 飯島康博 |
東京地裁 | 1995. 5.10 | 1999. 3.24棄却 | 金額の確定した未払賃金は財産権措置法により消滅、その余は立法裁量の範囲内であるとして棄却 | |
東京高裁 | 1999. 4. 6 | 2000. 5.25棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2000 | 2001.11.22棄却 | 同上。 財産権措置法は憲法に違反するものではないとした。 |
判タ1080/81 判時1771/83 |
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37 | 鹿島花岡鉱山中国人強制連行訴訟 | 中国人花岡鉱山強制連行被害者11名 | 鹿島建設 | 日中戦争の末期、日本は国民党軍や八路軍又はその協力者であった捕虜986名を秋田県の花岡鉱山に連行して酷使した。飢えと酷使、虐殺により150名が死亡したが、一人の中国人が全員の前で撲殺されたのを契機に蜂起した。激しい戦闘の末に蜂起は鎮圧され、生き残った者は警察で拷問を受けたり、広場に置かれて警察・群衆により虐殺されたりした。原告のうち2名は虐殺された者の遺族、8名は生存者、1名は帰還後死亡した者の遺族である。 不法行為及び安全配慮義務違反により各550万円の賠償を請求した。 |
新美隆 内田雅敏 鈴木宏一 芳永克彦 清井礼司 上本忠雄 川口和子 丸山健 伊藤治兵衛 高橋耕 水谷賢 金敬得 川田繁幸 荘司昊 足立修一 藤沢抱一 細谷裕美 渡辺智子 |
東京地裁 | 1995. 6.28 | 1997.12.10棄却 | 不法行為は除斥期間の経過、安全配慮義務は契約関係が観念できないとして棄却。 | 判タ988/250 |
東京高裁 | 1997.12.11 | 2000.11.29和解 | 中国赤十字会に鹿島が5億円を信託して関係者の生活支援や育英資金、慰霊・追悼などの活動にあてるとの和解が成立した。和解にあたり、二審裁判所は「(和解は)控訴人らと被控訴人との間の紛争を解決するというに止まらず、日中両国及び両国国民の相互の信頼と発展に寄与するものである…。裁判所は、当事者双方及び利害関係人中国紅十字会の聡明にしてかつ未来を見据えた決断に対し、改めて深甚なる敬意を表明する。」等の所感を述べた。 | |||||||
38 | 中国人「慰安婦」一次訴訟 | 中国人日本軍「慰安婦」被害者4名 | 国 | 各原告は中国山西省で暮らしていたが、1942年、うち2人は15歳のときに日常生活の場で拉致され、他の2人は親族が八路軍であったなどの理由で日本軍と傀儡軍に襲撃されて拉致・監禁され、多数の日本兵に継続的に強姦された。6日〜5か月の監禁の後に八路軍に救出されたり親族が身代金を支払って解放されたが、その後も重度のPTSDの症状に苦しめられている。 原告らはハーグ陸戦条約3条、慣習国際法、加害当時の中華民国法又は日本民法の不法行為責任により本件加害行為(暴行・強姦・連行・監禁・継続的な強姦)に対する賠償2000万円、謝罪広告、救済立法をせず放置したことに対する慰謝料300万円を請求した。 |
小野寺利孝・尾山宏・伊藤みさ子・大森典子・小笠原彩子・加藤文也・齊藤豊・坂口禎彦・菅沼友子・高橋融・寺沢勝子・富岡恵美子・中野比登志・野上佳世子・則武透・廣谷陸男・馬奈木昭雄・三木恵美子・南典男・森田太三・山下潔・渡邉彰悟・渡邉春巳 他復代理人約100名 |
東京地裁 | 1995. 8. 7 | 2001. 5.30棄却 | ハーグ陸戦条約3条は被害者個人に損害賠償請求権を認めるものではなく、同旨の慣習国際法の存在も認められない、準拠法は日本法であり、国内法上の不法行為責任は国家無答責・除斥期間の経過により認められない、立法不作為責任については立法が憲法の一義的な内容に反している場合以外は違法とは言えないとして棄却。 | 判タ1138/167 |
東京高裁 | 2001. 6.12 | 2004.12.15棄却 | 同上。なお、二審において国は「日中共同声明5項中国国民の日本国及びその国民に対する請求権を中華人民共和国政府が「放棄」したものである。」との新主張を行ったが、二審判決は、日中共同声明5項の文言、国家が個人の請求権を放棄できるかについては疑問が残ること、中国国民は戦争被害について何らの補償,代償措置を受けていないこと等を根拠に中国国民個人が被った損害についての日本国に対する損害賠償請求権が日中共同声明によって放棄されたとは解しがたいと判示した。 | |||||||
最高裁 | 2004.12.27 | 2007. 4.27棄却 | 上告審は42事件と併合。同項参照 | 判タ1240/121 判時1969/28 |
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39 | 731部隊・南京大虐殺・無差別爆撃訴訟 | 中国人731部隊被害者遺族、南京虐殺事件負傷者、無差別爆撃負傷者 | 国 | 原告Aは南京虐殺事件の生存者である。強姦しようとする日本兵に抵抗したところ銃剣で37か所刺され、妊娠中の胎児を失い、顔面に多数の傷が残った。原告CDEは731部隊の生体実験犠牲者の遺族である。夫を失った原告Cは自らも憲兵から裸にされて鞭で打たれる拷問を受けた。原告Fは1943年に日本軍が福建省永安市に無差別爆撃を行った際に母親とともに被弾して各々右腕を失った。 ハーグ陸戦条約3条、慣習国際法、加害当時の中華民国法の不法行為責任により被害者一人当たり賠償2000万円を請求した。 |
尾山宏・渡辺春己・及川信夫・兵頭進・加藤文也・穂積剛・中野比登志・南典男・川上詩朗 外多数 |
東京地裁 | 1995. 8. 7 | 1999. 9.22棄却 | かなり詳細な事実認定を行い、南京虐殺事件の存在を認定したが、ハーグ陸戦条約3条は被害者個人に損害賠償請求権を認めるものではなく、同旨の慣習国際法の存在も認められない、準拠法は日本法であり、国内法上の不法行為責任は国家無答責により認められない、として棄却。 | 判タ1028/92 |
東京高裁 | 1999 | 2005. 4.19棄却 | 同上。除斥期間の経過も理由に付加した。 | |||||||
最高裁 | 2005 | 2007. 5. 9棄却 | ||||||||
40 | 日本製鉄韓国人元徴用工損害賠償等請求訴訟 | 韓国人徴用被害者遺族11名 | 国 新日鉄 |
原告らは日鉄釜石製鉄所で働かされて死亡した韓国人徴用工らの遺族である。 犠牲者らは1942〜45年に徴用され、外出の自由もない状態で酷使され、賃金は強制的に貯金させられ、結局受給できなかった。犠牲者のうち一人は労災事故で死亡し、残りの10人は1945年に米軍の艦砲射撃で死亡した。この10人の遺骨は未だに遺族に返還されていない。 原告らは遺骨引渡、埋葬地等の告知、謝罪広告、各2000万円と1945年8月15日からの遅延損害金を請求した。 |
大口昭彦 長谷川直彦 藤田正人 田鎖麻衣子 田中公哲 |
東京地裁 | 1995. 9.22 | 1997.9 対新日鉄 和解 | 和解条項は、遺骨未返還の原告に各200万円支払、釜石製鉄所内にある鎮魂社に韓国人犠牲者25名の戦災犠牲者名簿を奉納し合祀祭を行う、これに出席する原告の旅費を負担する、韓国における慰霊に関わる費用の一部約140万円を負担する、等 | |
(対政府) | 2003. 3.26棄却 | 遺骨については国が管理している事実を否定、不法行為については国家無答責、安全配慮義務については特別の社会的接触の否定により棄却 | ||||||||
東京高裁 | 2003 | 2005. 9.29棄却 | ||||||||
最高裁 | 2005 | 2007. 1.29棄却 | ||||||||
41 | 三菱広島・元徴用工被爆者未払賃金等請求訴訟 | 韓国人徴用被爆者46名 | 国 三菱重工 菱重 |
原告らは主に京畿道やソウルで徴用令書を受け広島の三菱重工に連行された。有刺鉄線で囲まれた寮に入れられ、軍隊式に引率されて工場に通い、食事は日本人工員と差別され、腐敗した飯を食べさせられて騒動になったこともある。給与の半分は家族に送ると言われていたが、実際には送られていなかった。原爆を被爆すると三菱は原告らを放置し、原告らは闇船に乗るなどして自力で帰郷し、その後被爆の後遺症に悩まされている者が多い。 戦後国は原爆医療法と原爆特別措置法には国籍条項がないにもかかわらず、日本の領域外に出た場合にはこれらの法の適用がないとする402号通達により原告らを被爆者援護から排除した。 原告らは強制連行・強制労働・被爆後の放置について、国と企業に対し国際法・不法行為、損失補償、安全配慮義務等により各1100万円の支払請求、企業に対し未払賃金の支払いを請求した。 |
在間秀和 足立修一 幸長裕美 奥村秀二 林範夫 |
広島地裁 | 1995.12.11 | 1999. 3.25棄却 | 個人には国際法の法主体性がない、旧憲法には損失補償規定がない、国の不法行為は国家無答責、原爆二法には海外在住者への適用を定める文言がない、企業の不法行為は除斥期間の経過、安全配慮義務は具体性を欠く、未払賃金は時効成立等として棄却。 | |
広島高裁 | 1999. 4. 2 | 2005. 1.19一部認容 | 402号通達の違法による損害賠償のみ認容。 国際法による請求については一審と同じ。国の不法行為については国家無答責は認めず、三菱の安全配慮義務違反も成立の余地があり、未払賃金について三菱の主張した供託の抗弁も手続上の不備を理由に否定したが、すべて時効・除斥期間、財産権措置法で消滅したとして棄却した。 なお、国は二審で、「請求権」については請求権協定自体の効果として請求に応じる義務がなくなったとの新主張を行ったが、判決は上記のように原告らの請求は「請求権」ではなく「財産、権利及び利益」に該当し財産権措置法で消滅したとした。 その後、本件原告らは三菱に対して同旨の訴訟を釜山地裁に提起し、一二審では敗訴したが、大法院の差戻判決を経て釜山高裁で勝訴した。大法院判決は本判決は韓国の公序良俗に反し既判力が認められないとした。 |
判タ1217/157 判時1903/23 |
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最高裁 | 2005.1.27(国上告) | 2007.11.1上告棄却(請求一部認容) | 402号通達の違法による損害賠償を認容した。その後、国は402号通達の違法による損害賠償訴訟に対して和解に応じるようになった。 | |||||||
2005. 2. 1(原告上告) |
2007.11.1上告棄却 | |||||||||
42 | 中国人「慰安婦」二次訴訟 | 中国人元「慰安婦」2名 | 国 | 各原告は中国山西省で暮らしていたが、親族が八路軍に協力したという理由で1942年に日本軍と傀儡軍に襲撃され、拉致・監禁されて多数の日本兵に継続的に強姦された。原告Aは当時15歳、監禁は2ヶ月の間に3回繰り返され、原告Bは当時13歳、監禁期間は約40日であった。共に親族が身代金を支払って解放されたが、その後も重度のPTSDの症状が認められた。 原告らはハーグ陸戦条約3条等の国際法、当時の中華民国民法、日本民法により本件加害行為(暴行・強姦・連行・監禁・継続的な強姦)に対する賠償2000万円、謝罪広告、立法不作為に対する慰謝料300万円を請求した。 |
大森典子・小野寺利孝・尾山宏・齊藤豊・環直彌・高橋早苗・中野比登志・寺沢勝子・元永佐緒里・三木恵美子・坂口禎彦・大八木葉子・鳥海準・野上佳代子・泉澤章・森田太三・穂積剛・山田勝彦・川上詩朗・杉浦ひとみ | 東京地裁 | 1996. 2.23 | 2002. 3.29棄却 | ハーグ陸戦条約3条等の国際法は個人の賠償請求権を認めたものではなく、公権力の行使には法例11条1項にかかわりなく日本法が適用され、国家無答責により国の責任は問えないとして棄却。 | 判タ1154/244 判時1804/50 |
東京高裁 | 2002 | 2005. 3.18棄却 | 二審において国は日華平和条約11条がサンフランシスコ条約14条(b)
を取り込んだことにより中国は国家として国民の請求権を放棄し日本国と国民は請求に応じる法律上の義務がなくなったとの新主張を行った。判決は基本的にこれを認めたが、法律上の義務がなくなったにとどまらず個人の実体的権利も消滅したとして請求を棄却した。 なお、本件加害行為は公権力の行使とは言えないとして国家無答責の適用は否定した。 |
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最高裁 | 2005 | 2007. 4.27棄却 | 請求権放棄は日華平和条約ではなく日中共同声明により行われ、個人の実体的権利ではなく裁判上の訴求権能のみが失われたと判示して請求を棄却した。 | 判タ1240/121 | ||||||
43 | 劉連仁訴訟 | 中国人強制連行・長期逃亡生活被害者 | 国 | 原告は中国で農業に従事していたが、傀儡軍に捕えられて日本軍に引き渡され、北海道沼田町の昭和鉱業所に連行されて炭坑で酷使された。1945年に脱走し、山中で雑草を食べ、雪の洞穴で過ごすなどして日本の敗戦も知らず、1958年に発見されるまで12年以上逃亡生活を続けた。 原告は強制連行・強制労働についてハーグ陸戦条約3条等の国際法、当時の中華民国民法、安全配慮義務違反、13年にわたる逃亡を余儀なくされたことについて国賠法・国際法・安全配慮義務違反、戦後の立法不作為について国賠法を根拠として2000万円の支払いを求めた。 |
高橋融 外多数(約120名) |
東京地裁 | 1996. 3.25 | 2001. 7.12認容 | 日本国に戦後の保護義務を認め、除斥期間の適用は正義公平の理念に反するとして請求額を全額認容。 | 判タ1067/119 |
東京高裁 | 2001. 7.23 | 2005. 6.23棄却 | 原告の逃亡生活期間中には中国に国家無答責の法理が存在し相互保証を欠くとして国賠法の適用を否定し、予備的に除斥期間の経過を認め棄却。 | 判時1904/83 |
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最高裁 | 2005. 6.27 | 2007. 4.27棄却 | 日中共同声明により訴求権能を喪失したとして棄却。 | |||||||
44 | 平頂山事件訴訟 | 中国人平頂山虐殺事件遺族かつ負傷者3人 | 国 | 1932年、南満州鉄道株式会社が管理する撫順炭坑が遼寧民衆自衛軍に襲撃されて被害を受けた。日本側守備隊は平頂山村の住民が自衛軍に通じていたとして、住民ほぼ全員を集めて銃撃し生存者を刺殺するなどして日本軍関係者によれば700人余、中国側によれば3000人以上を虐殺した。原告らは30〜40人と言われる生存者のうち3人である。死んだふりをするなどして九死に一生を得たが、各々すべての家族を失った。 原告らはハーグ陸戦条約3条等の国際法、当時の中華民国民法、日本民法の不法行為、予備的に戦後の立法不作為についての国賠法上の責任により各2000万円の支払いを求めた。 |
環直彌・高和直司・坂本博之・泉澤章・大江京子・川上詩朗・山田勝彦・穂積剛 外多数 |
東京地裁 | 1996. 8.14 | 2002. 6.28棄却 | ハーグ陸戦条約3条は被害者個人の損害賠償請求権を認めるものではなく、同旨の慣習国際法の存在も認められない、公権力の行使には法例11条1項にかかわりなく日本法が適用され、不法行為責任は国家無答責、立法不作為責任立法は憲法の一義的な内容に反している場合に限るなどとして棄却。 | |
東京高裁 | 2002. 7. 8 | 2005. 5.13棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2005. 5. | 2006. 5.16棄却 | ||||||||
45 | シベリア抑留元日本兵謝罪・損害賠償請求訴訟(呉雄根・小熊謙二) | 中国籍朝鮮人・日本人シベリア抑留被害者 | 国 | 原告呉雄根は日本国籍を有する朝鮮人として1945年に日本軍二等兵として入隊してソ連の捕虜となり1948年までシベリアに抑留された。原告小熊謙二は日本人であり、原告呉と抑留時代の友人である。戦後援護法により原告小熊には慰労金10万円が支給されたが、原告呉は国籍条項により援護から排除された。原告小熊はこれを知って憤り、自分の慰労金のうち5万円を原告呉に送金するなどした上で本件の共同原告となった。 原告呉は500万、原告小熊は350万円の損失補償、条理に基づき各陳謝状の交付を求めた。 |
川上英一 山本晴太 中久保満昭 飯島康博 岡本理香 |
東京地裁 | 1996. 9.25 | 2000. 2. 9棄却 | 戦争損害は国民が等しく受忍すべきものであり「特別の損害」とはいえない、陳謝請求は条理にまで高められているとは言えないとして棄却 | |
東京高裁 | 2000. 2. | 2000 8.31棄却 | 捕虜の未払賃金等は戦争損害ではないとしながら、立法裁量論等により棄却。なお、日中共同声明により中国国民個人の請求権が放棄されたとの判示があるが、裁判所の独自の見解であり、国の主張に対応したものではない。 | |||||||
最高裁 | 2000 | 2002. 3. 8棄却 | ||||||||
46 | 旧日本軍遺棄毒ガス一次訴訟 | 中国人遺棄毒ガス・砲弾事故死亡者遺族・負傷者 | 国 | 原告らは1970年代から90年代にかけて、道路工事等の作業中に日本軍の遺棄毒ガスに被曝したり、砲弾の爆発により死亡した者の遺族と重篤な後遺障害を負った生存者である。 ハーグ陸戦条約3条等の国際法、中国民法、国家賠償法、日本民法の不法行為により被害者一人当たり2000万円の支払を請求した。 |
尾山宏
小野寺利孝 及川信夫 中野登志 渡辺春己
栄枝明典 南典男 泉澤章 大江京子
山田勝彦 山森良一 犀川治 藤澤整 |
東京地裁 | 1996.12. 9 | 2003. 9.29一部認容 | 国に遺棄毒ガスに関する情報を収集し中国政府に提供する等の条理上の作為義務があることを認め、除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反するとして国賠法による請求を認容した(砲弾負傷者一名について減額)。なお、国は日中共同宣言による請求権放棄を主張したが、判決はその当否自体は判断せず、本件行為は日中共同声明以降の継続的な行為であるから被告の主張は失当とした。 |
判タ1140/300 判時1843/90 |
東京高裁 | 2003.10. 3 | 2007. 7.18棄却 | 国が一審判決の指摘する作為を尽くしても本件毒ガス事故の発生を防止できた高度の蓋然性があるとは言えないとして棄却 | 判時1994/36 |
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最高裁 | 2009. 5.26不受理 | |||||||||
47 | 東京麻糸紡績沼津工場朝鮮人女子勤労挺身隊訴訟 | 韓国人女子勤労挺身隊被害者2名 | 国 | 原告らは14歳のときに原告X1は役人から令状のようなものを見せられ半ば強制的に、原告X2は日本の工場で働けば学校にも通えるし土地100坪買える金が稼げるなどと言われて勤労挺身隊に応募し、沼津の東京麻糸紡績(現帝人)で働かされた。実際には行動の自由もなく飢えと空襲の恐怖に苦しみながら重労働に従事させられ、賃金も支給されなかった。 原告らは憲法前文、旧憲法の損失補償、安全配慮義務、立法不作為により各3000万円の支払いと公式謝罪を求めた。 |
大橋昭夫 萩原繁之 久保田和之 杉山繁二郎 塩沢忠和 森下文雄 山本晴太 |
静岡地裁 | 1997. 4.14 | 2000. 1.27棄却 | 憲法前文は具体的権利の根拠とならない、旧憲法は身体等の侵害に対する損失補償を規定していない、国が安全配慮義務の基礎となる契約の意思表示をしていない、立法は憲法の一義的文言に違反しない限り違法とはならない、等として棄却。 | 判タ1067/173 |
東京高裁 | 2000 | 2002. 1.15棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2002 | 2003.
3.27棄却 *帝人が見舞金支給 |
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48 | 731部隊細菌戦(浙江省・湖南省) 国家賠償請求訴訟 | 中国人細菌戦被害者・遺族180名 | 国 | 日本軍は中国においてペストに感染したノミを空中から散布したり、コレラ菌を井戸に投下するなどの細菌戦を行い、これらの疾病の流行により多数の中国人が犠牲になった。原告らはハーグ陸戦条約3条等の国際法、慣習国際法の遡及適用、中華民国民法、日本民法の不法行為、条理、立法不作為と隠ぺい行為に対し国賠法により各1000万円の慰謝料、謝罪文の交付・官報掲載を求めた。 | 土屋公献 一瀬敬一郎 鬼束忠則 西村正春 椎野秀之 萱野一樹 外多数 |
東京地裁 | 1997. 8.11 | 2002. 8.27棄却 | ハーグ陸戦条約3条は被害者個人に国家に対する国際法上の損害賠償請求権を認めるものではなく、同旨の慣習国際法の存在も認められない、準拠法は日本法であり、国内法上の不法行為責任は国家無答責により認められない等として棄却 |
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東京高裁 | 2002. 9. 3 | 2005. 7.19棄却 | ||||||||
最高裁 | 2005. 7.20 | 2007. 5. 9棄却 | ||||||||
49 | 中国人強制連行東京第二次訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者42名 | 国 間組 古河機械金属 鉄建建設 西松建設 宇部興産 同和礦業 日鉄鉱業 飛島建設 ジャパンエナジー 三菱マテリアル |
1942年に日本政府は中国人労務者を日本に連行する旨の閣議決定を行い、約38000人の中国人を強制連行し、その17%が死亡した。原告らは共産党・八路軍の関係者又は関係者と疑われた結果、日本軍または汪兆銘政府の軍により捕えられ、拷問を受けた末に日本に送られ、被告各社が経営する鉱山などで酷使された。 原告らは国に対しハーグ陸戦条約3条等の国際法、国と企業に対し中華民国民法の不法行為、安全配慮義務違反を理由として国に謝罪広告の掲載、国と企業連帯して各原告2000万円の支払いを求めた。 |
東京地裁 | 1997. 9.18 | 2003. 3.11棄却 | ハーグ陸戦条約3条等は被害者個人に国家に対する国際法上の損害賠償請求権を認めるものではなく、準拠法は日本法とした上で、国家無答責は否定し、除斥期間の経過により棄却 | ||
東京高裁 | 2003. 3.19 | 2006. 3.16棄却 | ||||||||
最高裁 | 2006. 3. | 2007. 6.15棄却 | ||||||||
50 | 旧日本軍遺棄毒ガス・砲二次訴訟 | 中国人遺棄毒ガス・砲弾事故負傷者5名 | 国 | 原告らは発掘された日本軍遺棄毒ガス弾をそれと知らずに開披する等して被毒したり、鍬で土を掘っていたところ日本軍の遺棄砲弾に接触して爆発する等して各々重篤な後遺障害を負い、退職を余儀なくされた。 原告らはハーグ陸戦条約3条等の国際法、中国民法、国家賠償法、日本民法の不法行為により被害者一人当たり2000万円又は1000万円の損害賠償を求めた。 |
東京地裁 | 1997.10.16 | 2003. 5.15棄却 | ハーグ陸戦条約3条等は被害者個人の損害賠償請求権を認めるものではなく、準拠法は日本法とした上で、毒ガス・砲弾の遺棄は国家無答責、砲弾の放置は予見可能性、毒ガスの放置は結果回避可能性に欠けるなどとして棄却。 | ||
東京高裁 | 2003. 5. | 2007. 3.13棄却 | ||||||||
2009. 5.26不受理 | ||||||||||
51 | 在日台湾人遺族未払教員恩給支払請求訴訟 | 東京地裁 | 1997.11.12 | |||||||
52 | 中国人強制連行長野訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者、遺族7名 | 国 鹿島建設 熊谷組 大成建設 飛島建設 |
原告らは八路軍又は国民党軍に所属していたが、日本軍の捕虜となり、収容所に収容された後に日本に連行され、被告各社の長野県内の作業所等で酷使された。 原告らは国際法、不法行為、安全配慮義務等により謝罪広告、被害者一人当たり2000万円の賠償を求めた。 |
多数 | 長野地裁 | 1997.12.22 | 2006. 3.10棄却 | 不法行為は国家無答責、除斥期間経過、安全配慮義務違反は消滅時効により棄却 | 判時1931/109 |
東京高裁 | 2006. 3. | 2009. 9.17棄却 | 2007.4.27最高裁判決を踏襲し、日中共同宣言により訴求権能が喪失したとして棄却 | |||||||
最高裁 | 2011. 2.24不受理 | |||||||||
53 | 日鉄大阪製鐵所元徴用工損害賠償請求訴訟 | 韓国人徴用被害者 | 国 新日鉄 |
原告らは1943年に平壌で日本製鐵による労務者募集に応じて渡日した。「訓練を受けて技術を習得し訓練後は朝鮮内の製鉄所に就職できる」と言われていたが、大阪製鉄所到着後は軍隊的規律下に技術の習得と関係のない危険な重労働を強いられ、原告の1人は逃亡を企てて失敗し苛烈な暴行を受けた。大阪製鉄所が空襲で破壊されてから朝鮮の清津に連行され、ソ連軍が侵攻するまで建設基礎工事に従事させられた。 国際法、不法行為、安全配慮義務等により謝罪文交付、未払賃金ないし相当額の賠償及び慰謝料として各約1900万円の支払いを請求した。 |
松本健男 桜井健雄 竹下政行 幸長裕美 金喜朝 奥村秀二 |
大阪地裁 | 1997.12.24 | 2001. 3.27棄却 | 「強制連行」の事実は認めず、「強制労働」の事実は認めた。新日鉄への請求は旧日本製鐵と被告の同一性を否定して棄却。 国への請求は国際法の直接適用否定、国家無答責、契約関係不存在などにより棄却 |
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大阪高裁 | 2001 | 2002.11.19棄却 | 同上。新日鉄への請求について不法行為による損害賠償請求権まで「財産、権利、利益」に含まれるとして、予備的に財産権措置法により棄却。国は日韓請求権協定の抗弁を主張していない。 なお、本件原告らは新日鉄に対して同旨の訴訟をソウル中央地方法院に提起し、一二審では敗訴したが大法院の差戻判決を経てソウル高裁で勝訴し、2018年10月30日の大法院判決により確定した。本判決は2度の大法院判決及び差戻審判決において韓国の公序良俗に反し既判力が認められないとされた。 |
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最高裁 | 2002 | 2003.10. 9棄却 | ||||||||
54 | 西松建設中国人強制連行・強制労働損害賠償請求訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者 5名 |
西松建設 |
原告らは広島県の安野水力発電所建設現場に強制連行された中国人の生存者3名、死亡者遺族2名である。いずれも山東省出身で、労務中に拉致され、又は国民党軍に属していたところ捕虜となり、収容所を経て日本に連行され酷使された。5人のうち2人は大隊長殺害の疑いで逮捕され、広島に連行された際に原爆で被爆し、1人は爆死した。また別の1人はトロッコが転覆する労働災害により失明した。 原告らは国際法、不法行為、安全配慮義務等により各550万円の支払を請求した。 |
山口延廣(一審) 足立修一 山口格之(二審途中任官) 中島憲 新美隆(二審) |
広島地裁 | 1998. 1.16 | 2002. 7. 9棄却 | 国際法における個人の法主体性否定、除斥期間、時効により棄却 | 判タ1110/253 |
広島高裁 | 2002. 7.10 | 2004. 7. 9認容 | 安全配慮義務違反に対する時効援用は権利濫用として請求を全額認容 | 判時1865/62 |
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最高裁 | 2004. 7. 9 | 2007. 4.27棄却 | 日中共同声明により裁判上の訴求権能が消滅したとして棄却。ただし、日中共同声明により消滅したのは被害者個人の実体的権利ではなく裁判上訴求する権能に過ぎないと判示し、「上告人を含む関係者において,本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」と付言した。 | 判タ1240/121 判時1969/28 |
||||||
東京簡易裁 | 2009. 10.27 | 2009.10.27即決和解 | 和解条項は西松建設が謝罪の意思を表明し、被害者360人分の2億5000万円を信託して基金を設立する等。 | |||||||
55 | 台湾出身元BC級戦犯損害賠償請求訴訟 | 元台湾人BC級戦犯 | 国 | 原告は台湾出身で、日本軍の俘虜監視員募集に応募し、日本敗戦後に豪軍管轄の軍事法廷でBC級戦犯として懲役15年の判決を受け、1956年まで服役した。仮釈放後日本に居住し1972年に帰化して日本国籍となり軍人恩給の請求を行ったが、戦犯としての拘禁期間は軍人在職期間に含まれないとして却下された。 2500万円の損害賠償、立法不作為の違憲確認、立法不作為に対する慰謝料200万円、謝罪状交付を求めた。 |
宮崎地裁 | 1998. 5. 7 | 2001. 2.23棄却 | 立法裁量等を理由として損害賠償・謝罪文交付を棄却、立法不作為違憲確認は却下。 | ||
福岡高裁宮崎支部 | 2001 | 2002. 5.21棄却 | ||||||||
最高裁 | 2002 | 2004. 4.23棄却 | ||||||||
56 | 中国人強制連行京都訴訟(大江山訴訟) | 中国人強制連行・強制労働被害者6名 | 国 日本冶金 |
原告らは市場や役所で日本軍や傀儡軍に捕えられ収容所を経て京都府の大江山鉱山に強制連行され、ニッケル鉱山で自由を奪われ空腹に苦しみながら酷使された。 原告らは国に対しハーグ陸戦条約3条等の国際法、国と企業に対し中華民国民法の不法行為、安全配慮義務違反を理由として国と企業に謝罪広告の掲載と被害者一人当たり2200万円の支払い、企業に未払賃金の支払いを求めた |
莇立明 石川元也 植松繁一 大槻純生 小川達雄 外多数 |
京都地裁 | 1998. 8.14 | 2003. 1.15棄却 | 国家無答責は否定したが、不法行為は除斥期間、安全配慮義務違反は時効により棄却。 | 判時1822/83 |
大阪高裁 | 2003. 1. | 2004.9.29日本治金和解 | 原告一人当たり350万円の支払 | |||||||
2006. 9.27棄却(対国) | 国家無答責、除斥期間により棄却した。 | |||||||||
最高裁 | 2006. . | 2007. 6.12棄却 | ||||||||
57 | 在韓被爆者健康管理手当受給権者地位確認訴訟 | 在韓被爆者 | 大阪府知事 大阪府 国 |
原告は1944年に施行された朝鮮人徴兵令により徴兵され、広島で被爆した。 1998年に治療のため来日し、被爆者健康手帳を交付と健康管理手当の支給認定を受けた。しかし、帰国すると日本の領域外に出た者には被爆者援護法の適用がないとする「402号通達」により健康管理手当を打ち切られた。 原告らは大阪府知事に対し被爆者たる地位・健康管理手当受給権者たる地位失権処分取消、国に対し被爆者たる地位確認 国及び大阪府に対し健康管理手当未支給分相当額、違法な支給打切に対する損害賠償等の一部200万円の支払を求めた。 |
永野靖久 足立修一 小田幸児 金井塚康弘 新井邦弘 安由美 太田健義 |
大阪地裁 | 1998.10. 1 | 2001. 6. 1認容 | 出国によって被爆者たる地位が失われるという解釈には合理的理由がないとして被爆者たる地位確認、大阪府に対する未支給健康管理手当の支払請求を認容。行政処分がないとして取消請求は却下、賠償は棄却。 | 判タ1084/85 判時1792/31 |
大阪高裁 | 2001. 6.15 | 2002.12.5認容(確定) | 同上。国と大阪府は上告を断念し、「402号通達」は廃止された。 | 判タ1111/194 | ||||||
58 | 中国人性暴力被害者謝罪損害賠償請求事件(山西省) | 中国人戦時性暴力被害者・遺族10名 | 国 | 原告らは中国山西省孟県で日本軍の性暴力を受けた被害者8名と被害者遺族2名である。被害者らは数え年15〜25歳であった1941〜43年頃、日本兵に自宅を襲撃されて強姦されたり、拉致・監禁されて輪姦された。中には繰り返し逃亡し、3回にわたって監禁・輪姦された者、数か月にわたり特定の日本兵から関係を強要され妊娠・出産したため戦後対日協力者として投獄され、文化大革命時に糾弾を受けて自殺した被害者もいる。 原告等はハーグ陸戦条約3条等の国際法、当時の中華民国民法、日本民法の不法行為、戦後の立法不作為について国賠法上の責任により各2000万円の支払と謝罪広告を求めた。 |
中下裕子 清井礼司 中村晶子 川口和子 黒岩海映 |
東京地裁 | 1998.10.30 | 2003. 4.24棄却 | ハーグ陸戦条約3条等は被害者個人に国際法上の損害賠償請求権を認めるものではなく、準拠法は日本法、国の責任は国家無答責、立法行為は憲法の一義的な内容に反している場合以外は違法とは言えないとして棄却。 なお、日中共同声明は被害者個人の日本国に対する損害賠償請求権まで放棄したものではないとして、被告の請求権放棄論を明確に否定した。 また、本件加害行為を「国際法の次元においておよそ是認される余地のない、著しく愚劣な蛮行」と評価し、「いわゆる戦後補償問題が、司法的な解決とは別に、被害者らに直接、間接に何らかの慰謝をもたらす方向で解決されることが望まれる」と付言した。 |
判タ1127/281 判時1823/61 |
東京高裁 | 2002. 5. 8 | 2005. 3.31棄却 | 同上。ただし請求権放棄論には触れていない。 | |||||||
最高裁 | 2003. 4. | 2005.11.18棄却 | ||||||||
59 | 三菱名古屋・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟 | 韓国人女子勤労挺身隊(三菱名航)被害者6名、遺族1名 | 国 三菱重工 |
名古屋の三菱重工道徳工場には約300名の朝鮮人女子勤労挺身隊が動員されて航空機製造に従事し、東南海地震により6名が死亡した。原告らは12〜13才の時、小学校の教師、校長、憲兵などから日本に行けば女学校に進学して金も稼げるなどと言われ、家族の反対を押し切って応募したが、実際には女学校どころか給料も受け取れず、自由を制限され、空腹に苦しみながら重労働に従事し、地震と空襲の被害を受け、生きて帰った者も帰国後は勤労挺身隊と日本軍「慰安婦」を混同する世間の誤解に苦しんだ。 原告らは不法行為、立法・行政不作為による国家賠償、国際法違反、安全配慮義務違反により謝罪広告、被害者一人当たり3000万円の賠償を求めた。 |
内河惠一 宮田陸奥男 岩月浩二 高和直司 中谷雄二 長谷川一裕 西野泰夫 名嶋聰郎 高木輝雄 山本晴太 藤井浩一 村上満宏 浅井淳郎 渥美裕資 石川智太郎 森弘典 伊藤大介 山田麻登 田巻紘子 |
名古屋地裁 | 1999. 3. 1 | 2005. 2.24棄却 | 原告らの請求は「財産・権利及び利益」ではなく「並びに請求権」に該当し、日韓請求権協定2条1項、3条により日本国及び国民に対し何らの主張をすることができないものとされたとして棄却。 日韓請求権協定により「並びに請求権」についても主張できなくなったという国の新主張を受け容れた最初の判決となった。 |
判タ1210/186 |
名古屋高裁 | 2005. 3. 9 | 2007.5.31棄却 | 同上。2007.4.27最高裁判決の論理を韓国人被害者に適用した判決である。 ただし、原告らの動員は欺罔・脅迫により志願させられた「強制連行」であり、苛酷で自由を剝奪された労働は「強制労働」であると認めた。また、旧三菱と現三菱重工は実質的に同一性があり、旧三菱の行為について新会社が責任を負わないと主張することは信義則に反すると解する余地があると述べた。 |
判時1894/44 |
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最高裁 | 2007. 6. | 2008. 11.11棄却 | 最高裁は形式的理由により上告を棄却した。その後、本件の原告団は光州地方法院にほぼ同一の請求の理由により三菱重工を提訴し、2018年11月29日大法院判決で勝訴を確定させた。 | |||||||
60 | 崔圭明日本生命の企業責任を問う裁判 | 韓国人 | 日本生命保険相互会社 | 原告の父親は1935年に朝鮮の大田にあった被告の出張所で積立型の生命保険に加入したが日本の敗戦を機に被告は朝鮮から撤収し,加入者に移管の通知などをしないまま契約の継続を中断した。父親は1945年に死亡し、被告は1965年以降にはこのような保険金請求権は財産権措置法で消滅したとの見解を表明していた。 原告は1995年に保険証券を発見し、物価換算等により生命保険金500万円を請求した。 | 大阪地裁 | 1999. 3. 1 | 2000.12.8棄却 | 父親の死後2年、仮に国交断絶期間は時効が停止したとしても請求権協定発効2週間の経過により時効が成立したとして棄却 | 生命保険判例集12巻437頁 | |
大阪高裁 | 2001. 4.25棄却 | |||||||||
61 | 在韓被爆者李康寧健康管理手当受給権者地位確認訴訟 | 在韓被爆者 | 国 長崎市長 長崎市 |
原告は戸畑市で生まれ、徴用で長崎の三菱兵器製造所に勤務していたところ被爆した。その後韓国に帰国し、1994年に治療のため来日して被爆者健康手帳の交付と健康管理手当の支給を受けた。しかし同年中に帰国すると健康管理手当は打ち切られ、1997年に再来日して被爆者健康手帳の交付と健康管理手当の支給を受けたが帰国していた期間中の健康管理手当は支給されないままになった。 原告らは主位的に長崎市長に対し健康管理手当受給権停止処分取消、予備的に長崎市長、国、長崎市に対し帰国していた期間の健康管理手当未支給分相当額及び遅延損害金を求め、また、国及び長崎市長に対し、違法な支給打切に対する損害賠償等の一部200万円、国に対し再審査請求への応答の遅延に対する慰藉料100万円を請求した。 |
足立修一 龍田紘一朗 小林清隆 |
長崎地裁 | 1999. 5.31 | 2001.12.26認容 | 出国によって被爆者たる地位が失われるという解釈には合理的理由がないとして国に未払健康管理手当及び遅延損害金のの支払を命じ、取消請求は却下、賠償は棄却。 | 判タ1113/134 |
福岡高裁 | 2002. 1. 8 | 2003. 2. 7認容 | 原告は長崎市にも重畳的に支払義務があるとして、長崎市への支払い請求を棄却した部分について控訴。国は出国被爆者には健康管理手当受給権がないとして控訴。判決は出国被爆者の健康管理手当受給権を認め、支払い義務は国にあるとして双方の控訴を棄却した。 | 判タ1119/118 | ||||||
最高裁 | 2003. 2.17 | 2006.6.13棄却 | 出国被爆者の健康管理手当受給権は認め、支給義務者は国ではなく出国前に居住した都道府県及び広島市・長崎市であるとして一審判決を取り消した。 |
判タ1213/79 判時1935/50 |
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62 | 台湾人元「慰安婦」損害賠償・謝罪請求訴訟 | 台湾人元「慰安婦」9名 | 国 | 原告らは17〜20歳であった1938〜43年頃、役所からの招集通知、雑用係・看護婦として働くなどの欺罔、雇主である酒場の主人により売られるなどして、中国、ビルマ、インドネシアなどの日本軍「慰安所」に連行され、日本の敗戦まで自由を奪われ多数の日本兵の相手をさせられる性奴隷としての生活を強いられた。 原告らは奴隷禁止条約・強制労働条約・婦女売買禁止条約等の国際法、民法上の不法行為、立法不作為と責任者不処罰につき国家賠償法により各1000万円の損害賠償、公式謝罪を求めた。 |
藍谷邦雄 池田利子 小野美奈子 笠松未季 清水由規子 鈴木啓文 中川瑞代 番敦子 |
東京地裁 | 1999. 7.14 | 2002.10.15却下・棄却 | 各条約は被害者個人の請求権を認めるものではなく、不法行為は国家無答責及び除斥期間、立法行為は憲法に一義的に反しない限り違法ではないとして棄却。公式謝罪は特定を欠くとして却下。事実認定も行わなかった。 | 判タ1162/154 |
東京高裁 | 2002.10. | 2004. 2. 9棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2004. 2.18 | 2005. 2.25棄却 | ||||||||
63 | 中国人強制違行・強制労働新潟訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者9名、遺族2名 | 国 リンコーコーポレーション |
戦争末期に太平洋側の港湾は爆撃で使用不能となったため、新潟港は石炭の輸送に重要な役割を果たしていた。ここに中国で捕らえられた約900名の労働者が強制連行され、港湾荷役作業に従事させられ、厳しい気象条件の中で不十分な栄養状態の下で作業させられ、短期間のうちに159名が死亡した。 原告らはハーグ陸戦条約3条、中華民国民法上の不法行為、奴隷条約・強制労働条約・人道に対する罪等慣習国際法違反、安全配慮義務等により被害者一人当たり2500万円の賠償と謝罪広告の掲載を求めた。 |
中村洋二郎 松井道夫 清野春彦 今井敬彌 川村正敏 栃倉光 中村周而 工藤和雄 川上耕 近藤正道 足立定夫 味岡申宰 土屋俊幸 金子修 高島章 近藤明彦 大澤理尋 板垣剛 小川和男 斎藤裕 外 多数 |
新潟地裁 | 1999. 8.31 | 2004. 3.26認容 | 不法行為について国家無答責は否定したが除斥期間の経過により賠償責任を否定。しかし安全配慮義務違反を認め、時効援用は信義則違反、日中共同声明は被害者個人の日本国に対する損害賠償請求権まで放棄したものではないとして、国と企業に対し被害者一人当たり800万円の支払いを命じた。中国人強制連行訴訟で国の戦争中の行為について賠償を認めた唯一の裁判例である。 | |
東京高裁 | 2004. 3.29 | 2007. 3.14棄却 | 国家無答責を肯定し、国の安全配慮義務の存在を否定、企業の安全配慮義務違反による責任は消滅時効により否定、一審判決を取り消した。 | |||||||
最高裁 | 2008. 7.4.棄却 | |||||||||
64 | 中国人強制連行北海道訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者、遺族65 名 | 国 三井鉱山 住友石炭鉱業 熊谷組 新日鉄 地崎工業 三菱マテリアル |
原告らの一部は八路軍又は国民党軍に所属し日本軍の捕虜となったが、大部分の原告は日常生活の中で突然日本軍に連行され収容所に収容された後に日本に連行され、被告各社の北海道内の炭鉱、砂利採石場、製鉄所等で酷使された。 原告らはハーグ陸戦条約3条、奴隷条約・強制労働条約・人道に対する罪等慣習国際法違反、中華民国民法上の不法行為、安全配慮義務等により被害者一人当たり2000万円の賠償と謝罪広告の掲載を求めた。 |
札幌地裁 | 1999. 9. 1 | 2004. 3.23棄却 | ハーグ陸戦条約3条等は被害者個人の損害賠償請求権を認めるものではなく、準拠法は日本法、国の責任は国家無答責・除斥期間経過、安全配慮義務は前提たる社会的接触存在せず、立法行為は憲法の一義的な内容に反している場合以外は違法とは言えないとして棄却。 | ||
札幌高裁 | 2004. 4. 1 | 2007. 6.28棄却 | 国については同上。企業の安全配慮義務違反は認めたが、消滅時効により棄却。最高裁2007.4.27判決を受け、日中共同声明による訴求権能喪失を予備的理由とした。 | |||||||
最高裁 | 2008.7.8.棄却 | |||||||||
65 | 李秀英南京大虐殺名誉毀損訴訟 | 中国人南京虐殺事件暴行被害者 | 展転社 同社代表者(発行人) 松村俊夫(著者) |
原告は南京虐殺事件の生存被害者であり、虐殺事件の語り部として活動し、39事件の原告でもあるが、1998年に被告らが執筆・発行した「『南京虐殺』への大疑問」の中で「被害者を装って損害賠償請求をしている」と記載された。 原告は1200万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた。 |
東京地裁 | 1999. 9.17 | 2002. 5.10認容 | 150万円の損害賠償を認容。謝罪広告は必要性が認められないとして棄却。 | ||
東京高裁 | 2002.5 | 2003.4.10認容 | 同上。原告も賠償額について附帯控訴したが、これについて判決は、当該書籍は1300部しか売れていないこと、一般の読者は記載内容が真実でないと理解できることから慰謝料が少額すぎるとは言えないとした。 | |||||||
最高裁 | 2003. 4. | 2005. 1.21認容 | ||||||||
66 | 韓国人徴用工供託金返還請求第一次訴訟(日鉄釜石) | 韓国人日本製鐵釜石製鉄所徴用工死亡者遺族4名 | 国 | 原告らは日本製鐵釜石製鉄所に徴用され米軍の艦砲射撃で死亡した犠牲者の遺族である。釜石製鉄所は犠牲者らの未払賃金等を盛岡地方法務局に供託したが、1997年に原告らが供託金還付請求したところ、財産権措置法により還付請求権は消滅したとして却下された。 原告らは、日韓請求権協定は日本政府が本件の供託資料のような債権に関する資料を多数保管しながらそれらを秘匿して経済協力方式を押し付けたものであり、詐欺・錯誤・威嚇による条約の無効を定めたウィーン条約法条約により無効である、少なくとも本件のように債権の資料が存在するケースには条理上適用できない、財産権措置法は憲法前文、29条、13条、14条に違反して無効である、仮に有効であるとしても、韓国政府の外交保護権放棄の範囲を規定したにすぎず原告らの実体的権利は消滅していない等の理由から、供託官による供託金還付請求却下処分は違法であるとして各2000万円の慰謝料を請求した。 |
東京地裁 | 2000. 4.27 | 2004.10.15棄却 | 韓国政府は日韓請求権協定が詐欺・錯誤によるものであると主張したことはなく、ウィーン条約の「威嚇」には政治的・経済的圧力は含まれないから同協定は無効ではない。仮に資料が存在する場合に適用しないとすると「完全かつ最終的解決」という目的を達成できない。憲法は敗戦にともなう国家間の財産処理を予定していないから、財産権措置法は憲法の各条項に違反することはなく、財産権措置法の制定経緯等からみて実体的権利を消滅させる趣旨であることは明らかであり、供託金還付請求権は財産権措置法の「財産、権利及び利益」に該当し、同法により消滅したとして棄却。 | ||
東京高裁 | 2004.10. | 2005.12.14棄却 | ||||||||
最高裁 | 2005.12. | 2007. 1.29棄却 | ||||||||
67 | 中国人強制連行福岡一次訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者12名 | 国 三井鉱山 |
原告らは日本兵により拉致されたり、中国内でよい仕事があると欺罔されるなどして日本に連行され三井鉱山三池鉱業所及び田川鉱業所で銃を持った警官の警備する宿舎に起居し、空腹に苦しみながら最長2年9月の間強制労働させられた。戦後日本政府と三井鉱山は強制労働の事実を否定していたが、1993年のNHKの報道で外務省報告書の存在が明らかになり、1999年に日本の弁護士と出会って提訴が実現した。 共同不法行為、安全配慮義務違反、戦後の保護義務・原状回復義務違反、証拠隠滅等の不法行為等により各2300万円の支払いと謝罪広告の掲載を求めた。 |
立木豊 松岡肇 小野山裕司 岩城邦治 池永満 稲村晴夫 井下顕 秋月慎一 甲能新児 中村博則 西村尚志 山本晴太 外 多数 |
福岡地裁 | 2000. 5.10 | 2002. 4.26一部認容 | 三井鉱山については安全配慮義務は契約的な接触なしとして否定したが、不法行為を認め、除斥期間の適用は正義公平に著しく反するとして、原告一人当たり1100万円の支払いを命じた。 国については、日中共同声明により解決済みとの被告の主張は否定したが、不法行為は国家無答責、安全配慮義務は契約的な接触なしとして否定し、請求を棄却した。 |
判タ1098/267 判時1809/111 |
福岡高裁 | 2002. 4.26 | 2004. 5.24棄却 | 国、三井鉱山の不法行為を認め、国家無答責も否定したが、除斥期間・消滅時効により棄却。一審判決を取り消した。 | 判時1875/62 |
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最高裁 | 2004. 6. 4 | 2007. 4.27棄却 | ||||||||
68 | 韓国元軍人・軍属・遺族靖国合祀絶止・遺骨返還・謝罪・補償請求訴訟 | 韓国人元軍人・軍属、遺族414名 | 国 日本郵政公社 |
原告らは第二次世界大戦中に日本に徴兵・徴用された韓国人被害者本人及び遺族である。 原告らは国が靖国神社にした戦没者通知の撤回、戦没者の死亡状況説明、遺骨返還、戦没者通知・徴兵・徴用・シベリア抑留・軍事郵便貯金未返還に対する損害賠償、未払賃金各300〜1800万円の支払い、謝罪広告の掲載を求めた。 |
李宇海 殷勇基 鶴見俊男 古川美 大口昭彦 |
東京地裁 | 2001. 6.29 | 2006. 5.25棄却 | 遺骨返還は国が遺骨を占有しているとは認められない、戦没者通知は単なる氏名の通知であり合祀とは別の行為であるとして棄却。その他の請求は日韓請求権協定にいう「財産、権利及び利益」を国の見解よりも著しく広く解し、およそ裁判上、裁判外で請求可能なものは全て「財産、権利及び利益」であって財産権措置法で消滅したとして棄却した。 | 判タ1212/189 判時1931/70 |
東京高裁 | 2006. . | 2009.10.29.棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2011.11.30.不受理 | |||||||||
69 | 海南島訴訟 | 中国人性暴力被害者8名 | 国 | 日本軍は1939年に中国の海南島を占領し、慰安所を設置した。 原告らはいずれも海南島に居住し、少数民族に属する女性である。14〜18歳のときに自宅や山中で日本兵に強姦され、慰安所に強制連行されて多数の日本兵との性行為を強要された。慰安所での監禁期間は永い者で3年に及んだ。 原告らは民法上の不法行為による各2000万円の損害賠償、民法723条による名誉回復措置としての謝罪文交付(予備的に謝罪広告)、名誉回復措置が遅延した損害の賠償として各300万円の支払いを求めた。 |
尾山宏 小野寺利孝 大森典子 中野比登志 坂口禎彦 杉浦ひとみ 土生照子 鳥海準 依田公一 圷由美子 |
東京地裁 | 2001. 7.16 | 2006. 8.30棄却 | 国の不法行為責任については国家無答責、予備的に除斥期間により否定。名誉回復措置については立法・行政の広範な裁量に委ねられており、作為義務違反は認められないとして否定し、棄却。 | |
東京高裁 | 2006. . | 2009. 3.26棄却 | 本件加害行為は非戦闘員である女性らを拉致・監禁して繰り返し性暴力を加えるという、当時の国際法にも違反する残虐非道なもので、戦争行為・作戦活動等とは認められず公権力の行使とはいえないとして国家無答責を否定、国に民法715条による使用者責任を認めたが、2007.4.27最高裁判決を踏襲し、裁判上の訴求権能を否定して棄却した。 | |||||||
最高裁 | 2010. 3.2不受理 | |||||||||
70 | 在韓被爆者李在錫健康管理手当受給権者地位確認訴訟 | 在韓被爆者 | 国 大阪府 |
原告は広島で被爆し戦後韓国に帰国した。1986年以来、数回治療のために来日し、2001年1月には特別手当の支給認定を受け、二か月間支給を受けたが、帰国したため支給を打ち切られた。 原告は被爆者援護法上の被爆者たる地位、特別手当の受給認定を受けた地位の確認、死亡する月までの特別手当の支払い、100万円の慰謝料、10万円の弁護士費用の支払いを求めた。 本件係属中に57事件大阪高裁判決が確定し、被告は原告が被爆者たる地位にあることを認めた。 |
永野靖久 足立修一 小田幸児 金井塚康弘 新井邦弘 安由美 太田健義 |
大阪地裁 | 2001.10. 3 | 2003. 3.20一部認容 | 被爆者たる地位の確認と過去の特別手当の支払いは認容、将来の特別手当の支払いは却下、慰謝料は被告の故意過失を否定して棄却 | |
71 | 韓国人徴用工供託金返還請求第二次訴訟(日鉄釜石) | 東京地裁 | 2002. 4.27 | 2004.12.27棄却 | ||||||
東京高裁 | 200 . . | 2006. 4.25棄却 | ||||||||
最高裁 | 2006. . | 2007. 1.29棄却 | ||||||||
72 | 中国人強制連行群馬訴訟(月夜野訴訟) | 中国人強制連行・強制労働被害者46名 | 国 青山管財(間組) 鹿島建設 |
中島飛行機の地下工場築造現場(鹿島組薮塚事業所)には1945年4月末に長野県木曽谷から181人の病人を含む280人の中国人が動員され、終戦までの三ヶ月半で50人が死亡した。(藪塚事件)
同じころ、間組の利根郡岩本発電所の導水トンネル建設現場、同じく後閑の中島飛行機地下工場築造現場にも中国から612人が動員され飢餓状態で労働させられ59人が死亡した。(月夜野事件) 原告らは共同不法行為,債務不履行等に基づき,謝罪広告の掲載並びに慰謝料・弁護士費用(合計2300万円)を請求した。 |
前橋地裁 | 2002. 5.27 | 2007. 8.29棄却 | 強制連行・強制労働の事実は認定したが、2007.4.27最高裁判決を踏襲し、日中共同声明により裁判で訴求する権能が失われたとして棄却した。 | ||
東京高裁 | 2010. 2.17棄却 | 同上 | ||||||||
最高裁 | (第3小法廷) | 2011. 3.1棄却 | ||||||||
73 | 中国人強制連行福岡二陣訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者45名 | 国 三井鉱山 三菱マテリアル |
原告らは日常生活の中で日本軍や憲兵隊、傀儡軍に拘束され、又は八路軍に参加して日本軍の捕虜となる等した後に被告らの経営する炭坑に連行され、自由を奪われた状態で強制的に労働させられた。 原告らは共同不法行為、安全配慮義務違反、戦後の保護義務・原状回復義務違反、証拠隠滅等の不法行為等により各2300万円の支払いと謝罪広告の掲載を請求した。 |
立木豊 松岡肇 小野山裕司 岩城邦治 池永満 稲村晴夫 井下顕 秋月慎一 甲能新児 中村博則 西村尚志 後藤富和 外 多数 |
福岡地裁 | 2003. 2.28 | 2006. 3.29棄却 | 本件が強制連行・強制労働であり国の不法行為にあたると認めながら、戦前の不法行為について国家無答責と除斥期間経過、国には安全配慮義務の前提となる特別の接触がなく、企業は違法に原告らを労働させていたので、信義則を基礎とする安全配慮義務は問題にならない等として棄却。 | |
福岡高裁 | 2006. 4.11 | 2009. 3. 9棄却 | 同上。2007.04.27最判を踏襲した請求権放棄論を予備的理由として付加した。 | |||||||
最高裁 | 2009. 3.24 | 2009. 12.24不受理 | ||||||||
74 | 韓国・ハンセン病補償請求棄却処分取消訴訟 | 韓国人ハンセン病収容被害者 | 厚生大臣 | 日本では1996年にらい予防法が廃止されるまでハンセン病患者に対して隔離政策がとられていたが、同政策を違法と認定した2001年の熊本地裁判決を契機としてハンセン病補償法が成立した。原告らは植民地時代の朝鮮に設けられた小鹿島更生園に隔離されていたが、同法により補償金支給申請をしたところ、小鹿島更生園は同法にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当しないとして却下され、補償金を支給しない旨の決定の取り消しを求めて提訴した。 | 徳田靖之 国宗直子 鈴木敦士 田部知江子 赤沼康弘 鮎京眞知子 伊藤克之 上野格 外多数 |
東京地裁 | 2003. 3.23 | 2005.10.25棄却 | 朝鮮に設置された小鹿島更生園はハンセン病補償法にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当しないとして棄却 | 判タ1192/131 判時1910/36 |
東京高裁 | 2005.10.26 | 2006. 2. 取下 | 2006年2月にハンセン病補償法改正案が可決され、小鹿島更生園収容者も補償対象となったため取下。 | |||||||
75 | 不二越二次訴訟 | 韓国人女子勤労挺身隊被害者、遺族28名 | 国 不二越 |
原告らのうち27名は13〜14歳のときに、「不二越に行けば金も稼げる、女学校にも行ける」などと言われて勤労挺身隊に応募し、他の一名は徴用により富山の不二越に連行された労働者である。不二越では行動の自由が制限され、危険な重労働に従事させられ、食物は不足し、女学校に行くどころか、給料も支給されなかった。 原告らは強制労働条約違反、民法上の不法行為、安全配慮義務違反等により被害者一人当たり各500万円と未払賃金相当額の支払い、謝罪広告の掲載を求めた。 |
島田広 飯森和彦 浮田美穂 奥村回 加藤喜一 川本蔵石 菊賢一 菅野昭夫 中村正紀 野村侃靭 橋本明夫 二木克明 前川直善 松山悦子 山田博 吉川健司 |
富山地裁 | 2003. 4. 1 | 2007.9.19棄却 | 2007.4.27最高裁判決の論理を韓国人被害者にあてはめ、原告らの請求は「財産、権利及び利益」ではなく「…請求権」であると認定した上で、日韓請求権協定により請求に応ずる法的義務がなくなったとして棄却した。なお、かなり詳細な事実認定を行い、原告らの被害事実は強制連行・強制労働であると認定した。 | |
名古屋高裁金沢支部 | 2010. 3.8棄却 | 2007.4.27最高裁判決を踏襲し、「裁判上の訴求権能を喪失した」として棄却した。 | ||||||||
最高裁 | 2011.10.24不受理 | その後、本件の原告らは不二越に対してソウル中央地方法院に本件と同趣旨の訴を提起し、2014年10月30日に勝訴判決を得た。 | ||||||||
76 | 中国人強制連行・強制労働・原爆被爆者、遺族損害賠償請求訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者、遺族 | 国 長崎県 三菱マテリアル |
長崎県の離島炭鉱である端島坑(いわゆる軍艦島)、高島新坑、崎戸坑に強制連行され強制労働に従事した被害者らが安全配慮義務、不法行為、強制労働禁止条約等により各2000万円の支払い、公開声明文書による謝罪を求めた。 | 龍田紘一朗 外 |
長崎地裁 | 2003.11.28 | 2007. 3.27棄却 | 強制連行・強制労働の事実を認め「人倫に反する極めて違法性の強い事案に」であるとして国家無答責の法理の適用も否定したが、不法行為は除斥期間、契約責任は消滅時効、強制労働条約による請求は権利を具体化する国内法が存在しないとして棄却した。 | |
福岡高裁 | 2007. 4. 6 | 2008.10.20棄却 | 07.4.27最高裁判決を踏襲し、日中共同声明により裁判で訴求する権能が失われたとして棄却 | |||||||
最高裁 | 2009.12.24不受理 | |||||||||
77 | 在韓被爆者健康管理手当受給停止処分取消訴訟(崔季K裁判) | 在韓被爆者 | 長崎市長 | 韓国人被爆者である原告は1980年に治療のため来日して健康手帳の交付と健康管理手当支給認定を受け、その後帰国し、手当支給を打ち切られた。2004年、韓国から代理人を通じて健康管理手当認定を申請したが、居住地が長崎市でないことを理由に却下され、却下処分取消を求めた。 | 龍田紘一朗 小林清隆 |
長崎地裁 | 2004. 2.22 | 2004. 9.28認容 | 被爆者援護法は健康被害に苦しむ被爆者を広く救済することを目的とする国家補償の性格も有する法であるから、来日の困難な被爆者が健康管理手当を受給できなくなるのは立法目的に反するとして認容。 | |
福岡高裁 | 2004.10. 7 | 2005. 9.26認容(確定) | 同上。本判決後、被爆者健康手帳の所持者は在外公館を通して国外から健康管理手当を申請することができるようになった。 | 判タ1228/150 | ||||||
78 | 在韓被爆者健康管理手当支給訴訟(崔季K) | 在韓被爆者 | 国 長崎市 |
77事件原告が1980年離日から2004年までの健康管理手当と国賠法による賠償を請求した。 | 龍田紘一朗 小林清隆 |
長崎地裁 | 2004. 5.22 | 2005.12.20.一部認容 | 健康管理手当支給認定は3年間の支給を認定したものであるとして1980年から83年までの手当支払のみ認容 | 判タ1250/141 |
福岡高裁 | 200 . . | 2007.1.22棄却 | 長崎市による消滅時効の主張を認めて請求棄却 | 判タ1250/141 | ||||||
最高裁 | 2008.2.18 破棄 | 消滅時効の主張は信義則に反するとして二審判決を破棄、一審の一部認容判決が確定した。 | ||||||||
79 | 中国人強制連行宮崎訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者・遺族13名 | 国 三菱マテリアル |
原告らは中国から強制連行され、被告(当時は三菱鉱山)の経営する宮崎県の槇峰鉱業所(銅山)で強制労働させられた被害者7名と遺族である。 被害者のうち大部分は農作業中、歩行中などの日常生活の中で日本兵や傀儡兵に拉致されて連行された。 原告らは不法行為、安全配慮義務違反、戦後の原状回復義務違反、保護義務違反、証拠隠滅・提訴妨害により被害者一人当2300万円の支払いと謝罪広告の掲載を求めた。 |
西田隆二 松田幸子 外 |
宮崎地裁 | 2004. 8.10 | 2007. 3.26棄却 | 不法行為は除斥期間、国の安全配慮義務は前提となる接触関係を否定、企業の安全配慮義務は時効、戦後の義務は上記と別個の不法行為を構成するものではない等として棄却。ただし、「本件強制連行・強制労働の 事実自体は,永久に消え去るものではなく」「その歴史的事実の重み や悲惨さを決して忘れてはならない」「道義的責任あるいは人道的な責任と いう観点から,この歴史的事実を真摯に受け止め,犠牲になった中国人労働者についての問題を解決するよう努力していくべきものである」と付言した。 | |
福岡高裁 | 2007. 3.26 | 2009. 3.27棄却 | 国の安全配慮義務は否定、その他は2007.04.27最判を踏襲し日中共同声明により裁判上の訴求権能を喪失したとして棄却 | |||||||
最高裁 | 2010. 5.27不受理 | |||||||||
80 | 在韓被爆者葬祭料支給却下取消・損害賠償請求訴訟 | 在韓被爆者遺族2名 | 大阪府知事 国 |
原告らはいずれも広島で被爆し戦後来日して被爆者健康手帳を取得、2004年に韓国で死亡した被爆者2名の遺族(妻と子)である。被爆者の日本での最後の住所地が大阪府であったことから大阪府に被爆者援護法による葬祭料の支給を申請したが、死亡時の住所地が大阪府ではないとして却下され、不支給決定の取消と国賠法による各10万円の賠償を求めた。 | 永嶋靖久 崔信義 足立修一 |
大阪地裁 | 2004. 9.21 | 2006. 2.21棄却 | 葬祭料が支給された以上被侵害利益がないとして賠償請求を棄却。(一審係属中に83事件の認容判決が確定し、大阪府知事は不支給決定を取消して葬祭料を支給、原告は取消請求を取り下げた。) |
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大阪高裁 | ||||||||||
81 | 中国人強制連行山形・酒田訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者6名 | 国 酒田海陸運送 |
被告会社の酒田事業所では1944年12月から日本の敗戦までに338名の中国人を石炭なとの港湾荷役作業に従事させたが、一年足らずの間にこのうち31名が死亡した。原告らは生存被害者であり、農作業中などに日本軍に拉致され連行された。 原告らはハーグ条約等の国際法、安全配慮義務、不法行為等により謝罪広告と損害賠償各25000万円の支払いを求めた。 |
山形地裁 | 2004.12.17 | 2008. 2.12棄却 | 国と企業の安全配慮義務違反、不法行為責任の発生を認めたが、2007.4.27最判を踏襲し、日中共同声明により訴求権能が喪失したとして棄却 | ||
仙台高裁 | 2009. 11.20棄却 | 企業の安全配慮義務違反の責任の発生を認めたが、2007.4.27最判を踏襲し、日中共同声明により訴求権能が喪失したとして棄却。 「本件訴訟において,本件被害者らは強制労働等により極めて大きな精神的・肉体的苦痛を被ったことが明らかになったというべきであるが,その被害者らに対して任意の被害救済が図られることが望ましく,これに向けた関係者の真摯な努力が強く期待されるところである。」と付言した。 |
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最高裁 | 2011. 2.18不受理 | |||||||||
82 | 台湾・ハンセン病補償請求棄却処分取消訴訟 | 台湾人ハンセン病収容被害者 | 厚生大臣 | 日本では1996年にらい予防法が廃止されるまでハンセン病患者に対して隔離政策がとられていたが、同政策の違法を認定した2001年の熊本地裁判決を契機としてハンセン病補償法が成立した。原告らは植民地時代の台湾に設けられた楽生園に隔離されていたが、同法により補償金支給申請をしたところ、楽生園は同法にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当しないとして却下され、不支給決定の取消を求めた。 | 徳田靖之 国宗直子 鈴木敦士 田部知江子 赤沼康弘 鮎京眞知子 伊藤克之 上野格 外多数 |
東京地裁 | 2004.12.17 | 2005.10.25認容 | 台湾に設置された楽生園はハンセン病補償法にいう「国立ハンセン病療養所等」に該当するとして認容 | 判タ1192/106 判時1910/69 |
東京高裁 | 2005.11. 8 | 2006. 2. 取下 | 2006年2月にハンセン病補償法改正案が可決され、楽生園も補償対象となったため国は控訴を取下げた。 | |||||||
83 | 崔季K在外被爆者葬祭料裁判 | 在韓被爆者遺族 | 長崎市長 | 77・78事件原告は2004年に韓国で死亡した。その妻である本件原告が被爆者援護法による葬祭料の支給を申請したところ、死亡時の住所が長崎市ではないとして却下され、却下処分の取消を求めて提訴した。 | 龍田紘一朗 小林清隆 |
長崎地裁 | 2004 | 2005. 3. 8認容 | 戦争という国の行為によってもたらされた被害に苦しむ被爆者を広く救済することを目的とする法の趣旨から、在外被爆者が援護を受けることができない事態を招く解釈はできないとして認容 | 判タ1214/168 判時1930/85 |
福岡高裁 | 2005. 3.16 | 2005. 9.26認容(確定) | 同上。 長崎市は上告せず確定した。本件後被爆者援護法施行令等が改正され、在外被爆者は在外公館等で葬祭料支給申請ができるようになった。 |
判タ1214/168 | ||||||
84 | 三菱・韓国人元徴用工被爆者手帳申請却下処分取消訴訟 | 在韓被爆者2名 | 国 広島県 広島市 |
原告らはいずれも徴用により広島に連行されていた際に被爆し、その後帰国した。原告X1は被爆者手帳交付を原告X2は健康管理手当の受給をいずれも韓国から代理人を通じて申請したが住所地が日本国内に無いことを理由に却下され、却下処分の取消と国賠法による各35万円の賠償を求めて提訴した。 | 在間秀和 足立修一 幸長裕美 奥村秀二 林範夫 |
広島地裁 | 2005. 6.15 | 2006. 9.26棄却 | 原告X1は却下処分後に来日して被爆者健康手帳の交付を受けたため、却下処分取消請求は訴の利益なしとして却下。国外からの手帳交付申請を認めないことは適法、健康管理手当支給申請を認めないことは違法と判断、損害賠償は故意過失を否定して棄却。 | 判タ1239/148 |
広島高裁 | 2006.10. 5 | 2008. 9.2棄却 | 国外からの手帳交付申請を認めないことも違法と判断したが、国賠法上の故意・過失を否定して賠償請求は棄却した。 | |||||||
最高裁 | 2008.9.16 | 2009.12.22棄却 | 上告審係属中の2008年12月15日に日本の在外公館を通じた被爆者手帳申請が実現した。 | |||||||
85 | 中国人強制連行謝罪補償請求七尾訴訟 | 中国人強制連行・強制労働被害者・遺族6名 | 国 七尾陸海運送 |
原告らは日常生活の中で日本軍に拘束され、又は八路軍に参加して日本軍の捕虜となり中国の収容所を経て七尾港に連行され、荷役作業に従事させられた。宿舎は板塀と電流が流れる有刺鉄線で囲まれ、食事は饅頭2個、夜明けまで残業させられることもあった。原告のうち一人は21歳で死亡した犠牲者の遺族である。 原告らは謝罪広告の掲載と犠牲者一人当たり1100万円の損害賠償を求めた。 |
金沢地裁 | 2005. 7.19 | 2008.10.31.棄却 | 2007.04.27最高裁判決を踏襲し、日中共同声明により裁判で訴求する権能が失われたとして棄却 | ||
名古屋高裁 | 2010.3.10.棄却 | 同上 | ||||||||
最高裁 | 2010.7.15.不受理 | |||||||||
86 | 重慶大爆撃被害者国家賠償請求訴訟 | 中国人無差別爆撃被害者・遺族40名 | 国 | 日本軍は1938年から1943年にかけて当時の中華民国の首都であった重慶とその周囲の四川省地域に200回に及ぶ無差別爆撃を行った。これによる死傷者は10万人を超え、家などを失った者は100万人の規模に達すると言われる。原告らはこの爆撃の犠牲者の遺族又は生存被害者である。 謝罪文交付と各1000万円の賠償を求めた。 |
土屋公献 小野坂弘 葉山岳夫 内田雅敏 鬼束忠則 西村正治 萱野一樹 荻野淳 一瀬敬一郎 |
東京地裁 | 2006. 3.30. | 2015.2.25棄却 | 2007.4.27最高裁判決を踏襲し、日中共同声明により裁判で訴求する権能が失われたとして棄却 | |
東京高裁 | 2017.12.16棄却 | |||||||||
最高裁 | 2019.12.25却下 | |||||||||
87 | 在韓被爆者健康手帳・健康管理手当却下処分取消訴訟 | 在韓被爆者7名 | 大阪府 | 原告らは広島で被爆し、在韓被爆者渡日支援事業により被爆者確認証の交付を受けたが、来日することなく代理人を通じて被爆者健康手帳の交付を申請し、6人は健康管理手当の支給も申請したが、いずれも却下され、却下処分取消と手帳交付を求めて提訴した。 | 足立修一 太田健義 金井塚康弘 永嶋靖久 |
大阪地裁 | 2006 | 2009.6.18認容(確定) | 来日しないことについて合理的な理由があるか否かを検討せず、来日しないことのみを理由として手帳の交付申請を却下した場合、当該処分は違法となるとして、6名について却下処分取消を認めた(他の1名は健康管理手当支給申請をしていなかったため、訴の利益なしとして却下) | 判タ1322/70 判時2072/3 |
88 | 日韓会談文書公開訴訟1次訴訟 | 吉澤文寿 太田修 田中宏 山本直好 板垣竜太 西野瑠美子 山田昭次 崔鳳泰 李容洙 李金珠 |
国 |
韓国政府は韓国での訴訟の結果を受け容れ、2005年に韓国政府の作成・保管にかかる日韓会談関連文書約3万6000頁を公開した。日本では原告らが2006年に「日韓会談本会議・委員会の会議録・関連資料、日本政府作成の公文書」について情報公開法による開示請求をしたが、13文書について一部不開示決定をしたのみでその他の文書については開示の可否を決定をしなかった。 そこで、原告らは一部不開示文書の不開示決定取消、不開示部分の開示、公開可否決定遅延の違法確認、未開示文書の開示を求めて提訴した。国は一審係属中に13文書の不開示部分を開示した。そのため、原告らは訴を変更し、各1万円の賠償を求めた。 |
東澤靖 川口和子 二関辰郎 小町谷育子 魚住昭三 古本晴英 張界満 |
東京地裁 | 2006.12.18 | 2007.12.26一部認容 | 開示請求後1年7月の遅延は「相当な期間」言えないとして公開可否決定遅延の違法確認を認容。 未開示文書には不開示情報が記載されている可能性があるとして未開示文書開示は棄却。賠償すべき損害はないとして賠償も棄却。 |
判タ1218/186 |
東京高裁 | 2008.6.5取下 | |||||||||
89 | チチハル遺棄毒ガス訴訟 | 中国人遺棄毒ガス事故死亡者遺族・負傷者48人 | 国 | 2003年8月、中国黒竜江省の工事現場から掘り出されたドラム缶5本の内容物が旧日本軍が遺棄した毒ガスであったため、工事関係者、廃品回収業者等多くの人々が被毒し、皮膚や眼に炎症を起こし、1人は死亡した。原告らは先行行為による作為義務違反に対する国家賠償として被害者一人3300万円を請求した。 | 東京地裁 | 2007. 1.25 | 2010.5.24.棄却 | 結果回避可能性を否定して棄却 | ||
東京高裁 | 2012.9.21.棄却 | |||||||||
最高裁 | 20141028棄却 | |||||||||
90 | 靖国合祀取消(ノー!ハプサ)訴訟 | 韓国人軍人軍属遺族 | 国 靖国神社 |
国から靖国神社に対する戦死情報提供撤回、霊璽等からの氏名抹消、謝罪広告、 損害賠償(一円)等を請求した。 |
内田雅敏 外 |
東京地裁 | 2007.2 | 2011.7.21棄却 | 合祀による法益侵害性を否定、生存者の誤合祀は受忍限度内、靖国神社を特に手厚く保護する意図・目的ではないとして政教分離違反を否定し棄却。 | |
東京高裁 | 2013.10.23.棄却(確定) | |||||||||
91 | サハリン残留韓国人郵便貯金返還訴訟 | サハリン残留韓国人 | 国 | 原告らは戦後サハリンに置き去りにされた韓国人又はその遺族であり、現在は4人は韓国、1人は日本、6人はサハリンで生活している。いずれも軍事郵便貯金を保有又は相続している。 原告らは貯金の時価(額面の2000倍)相当額の補償を求めた。 |
高木健一 菅原克也 幣原廣 升味佐江子 林和男 内田雅敏 星正秀 木村壮 山本宜成 |
東京地裁 | 2007. 9.25 | 取下げ | ||
92 | 在韓被爆者鄭南壽手帳申請却下処分取消等訴訟 | 在韓被爆者 | 長崎県 国 |
原告は広島で被爆し現在は韓国で寝たきりの状態である。長崎県知事に被爆者健康手帳交付申請をしたが長崎県に住所地がないとして却下、健康管理手当認定申請は被爆者健康手帳の交付を受けていないとして却下、内閣総理大臣と厚生大臣にも手帳交付申請書を郵送したが返送された。 原告は被爆者健康手帳交付申請却下処分の取消、被爆者健康手帳交付申請に対する厚生大臣の不作為違法確認、被爆者健康手帳交付、2007年と2008年の健康管理手当申請却下処分取消等を求めた。 |
龍田紘一朗 小林清隆 山本和人 |
長崎地裁 | 2007 | 2008.11.10認容 | 来日が著しく困難な場合まで、来日しないことのみを理由として手帳申請を却下するのは違法として'被爆者健康手帳申請却下処分取消、被爆者健康手帳交付、2008年の健康管理手当認定却下処分取消を認容。手帳交付と健康管理手当支給義務は都道府県にあるとして国への請求は却下。2007年の健康管理手当は出訴期間を徒過したとして却下。 | 判時2058/42 |
福岡高裁 | 長崎県控控訴取り下げ | |||||||||
93 | 旧日本軍遺棄毒ガス敦化訴訟 | 中国人遺棄毒ガス事故負傷2人(少年) | 国 | 2004年7月、中国吉林省敦化市郊外の小川で遊んでいた2人の少年が砲弾を見つけて触れたために被毒した。 | 東京地裁 | 2008.1.17 | 2012.4.16棄却 | 原告らの主張する全ての事実を認定しながら、結果回避可能性、予見可能性を否定して棄却した。 | ||
東京高裁 | 2013.11.26棄却 | 同上 | ||||||||
最高裁 | 2014.10.28棄却 | |||||||||
94 | 日韓会談文書公開訴訟2次訴訟 | 吉澤文寿 太田修 田中宏 西野瑠美子 山田昭次 崔鳳泰 李容洙 李金珠 呂運澤 李鶴来 梁澄子 |
国 | 国は88事件係属中に二次開示として1533頁、三次開示として5340頁の文書を開示した。しかし三次開示においては25文書が一部開示、1文書が不開示とされた。 そこで、原告らは外務大臣の不開示決定の取消と不開示部分の開示を求めた。 |
東澤靖 川口和子 二関辰郎 小町谷育子 魚住昭三 古本晴英 張界満 |
東京地裁 | 2008.4.23 | 2009.12.16却下・棄却 | 不開示情報に一般的又は類型的に該当することを国が立証すれば原告が不開示の不合理性を主張・立証しなければならないとして棄却 | |
東京高裁 | 2009.12.25 | 2010.6.23棄却 | 同上 | |||||||
最高裁 | 2010.7.7 | 2011.5.10不受理 | ||||||||
95 | 日韓会談文書公開訴訟3次訴訟 | 吉澤文寿 太田修 田中宏 西野瑠美子 山田昭次 崔鳳泰 李容洙 李金珠 呂運澤 李鶴来 梁澄子 |
国 外務大臣 |
94事件係属中に国は更に第4〜6次開示として52696頁の文書を開示したが、382文書を部分開示又は不開示とした。 そこで、原告らは外務大臣の不開示決定の取消と不開示部分の開示を求めた。 |
東澤靖 川口和子 二関辰郎 小町谷育子 魚住昭三 古本晴英 張界満 |
東京地裁 | 2008.10.14 | 2012.10.11一部認容 | 30年以上経過した行政文書を不開示とするには相応の主張立証が必要などとして382文書中212文書の不開示を全部取消、56文書を一部取消した | |
東京高裁 | 2012.10.24 | 2014.7.25一部認容 | 国は47文書について控訴し、その余は開示した。原告は67文書について付帯控訴。判決は控訴47文書の不開示を認め、付帯控訴文書のうち2文書の不開示を取り消した。 | |||||||
96 | 西松建設信濃川和解 | 中国人強制連行・強制労働被害者 | 西松建設 | 東京簡裁 | 2010.4.28即決和解 | 信濃川発電所建設現場に強制連行された183名の被害者らが訴外交渉の結果、合計1億2800万円支払等を内容とする即決和解が成立した。 | ||||
97 | 在韓被爆者医療費請求大阪訴訟 | 韓国人原爆被爆者3名 | 大阪府知事 | 日本で被爆者が医療を受けたとき被爆者援護法による医療費が指定医療機関に直接支払われるが、在外被爆者にはこの制度を適用せず、助成制度を設けて年間15〜18万円を限度に医療費を支給していた。原告らは広島で被爆し、韓国で医療を受け、現実に負担した金額について大阪府知事に医療費の支給を申請したが、却下され、却下処分取消と国賠法による各110万円の賠償を請求した。 | 永嶋靖久 崔信義 足立修一 |
大阪地裁 | 2013.10.24認容 | 在外被爆者を除外する合理的理由がないとして処分取消を認容。賠償請求は違法の認識が困難であるとして棄却 | ||
大阪高裁 | 2014.6.20控訴棄却(請求認容) | 同上 | ||||||||
最高裁 | 2015.9.8上告棄却(請求認容容) | 医療費の支給を日本国内で医療を行うものに限定するなら、被爆者置かれている特別の健康状態に着目してこれを救済するために被爆者の援護について定めた同法の趣旨に反することとなるとして請求を認容した。これにより、被爆者援護に関する在外被爆者差別解消の最後の課題であった医療費問題が決着した。なお、本件一審判決を受けて遡及して超過分の医療費が支給された。 | ||||||||
98 | 在韓被爆者医療費請求長崎訴訟 | 在韓被爆者 | 長崎県知事 | 原告らは広島で又は長崎で被爆し、韓国で医療を受け、現実に負担した金額について長崎県知事に医療費の支給を申請したが、却下され、却下処分取消と国賠法による賠償を請求した。 | 在間秀和 奥村秀二 足立修一 |
長崎地裁 | 2014.3.25棄却 | 行政上の困難等を理由に、医療費支給対象は国内で医療を行う者に限るとして棄却 | ||
福岡高裁 | 取下げ | 2審係属中に97事件の最高裁判決が確定し、医療費問題は決着した。 | ||||||||
99 | 靖国合祀絶止(ノー!ハプサ)二次訴訟 | 韓国人軍人軍属遺族 | 国 靖国神社 |
戦死情報提供撤回 霊璽等からの氏名抹消 謝罪広告 損害賠償(一円)等 |
大口昭彦 内田雅敏 外 |
東京地裁 | 2013.10.22 | 2019.5.28棄却 | 合祀は靖国神社に対する信教の自由の保障の及ぶ適法な行為であり、原告らの人格的利益を侵害するものとはとうていいえないとして請求を棄却した。 | |
東京高裁 | 2019.6.7 | |||||||||
100 | 中国人強制連行国賠裁判 | 中国人強制連行被害者・遺族13名 | 国 | 原告らは花岡鉱山・大阪港に連行された中国人生存者2名・遺族11名である。 1人当たり550万円の損害賠償と謝罪を求めた。 |
丹羽雅雄 外 |
大阪地裁 | 2015.6.26 | 2019.1.29棄却 | 強制連行の事実は認めたが2007.4.27最高裁判決を踏襲し、日中共同声明により裁判で訴求する権能が失われたとして棄却 | 判例秘書登載 |
大阪高裁 | 2020.2.4棄却 | 同上 | ||||||||
最高裁 | 2021.3.24 棄却・不受理 | |||||||||
101 | 被爆者健康手帳交付申請却下処分取消訴訟 | 韓国人原爆被爆者3名 | 長崎市長 | 原告らは三菱重工長崎造船所に徴用されて被爆した。2016年に長崎市に被爆者健康手帳の交付を申請したが、被爆証人などの証拠がないとして却下され、却下処分の取消を求めた。 | 足立修一 中鋪美香 |
長崎地裁 | 2016.9.21 | 2019.1.8認容(確定) | 訴訟の過程で長崎法務局が供託文書を廃棄していたことが明らかになるなどの経緯があり、判決は原告らの供述の信用性を認めて却下処分を取り消した。長崎市は控訴を断念し、職員を韓国に派遣して市長の謝罪の手紙とともに被爆者健康手帳を各原告に手渡した。 |