11 第六共和国憲法制定後
第六共和国憲法成立後、盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿惠(パク・クネ)の6代の大統領が憲法の手続によって就任した。退任大統領に対する刑事訴追等はあったものの、政権交代自体はすべて平和裏に行われた。
第六共和国憲法の下で基本的人権の保障は著しく進歩した。とくに第六共和国憲法で新設された憲法裁判所はめざましく活動し、基本的人権を侵害された個人が直接憲法裁判所に司法救済を求める憲法訴願制度も実質的に機能している。その上、政府から独立した国内人権機関である国家人権委員会が設置され、自由権規約選択議定書も批准して国連の自由権規約委員会に対する個人通報も可能となっている。この点、未だ国内人権機関も設置されず、選択議定書も批准せず、しかも与党による反立憲主義的な改憲が企てられている日本と著しい対照をなしている。
現在も国家保安法が存続している等、独自の人権課題があり、議院内閣制改憲論、大統領選挙における決選投票制導入論、平和統一条項と領土条項の矛盾の指摘などの改憲論議も存在するが、1987年までの40年間に9回の憲法改正が行われたのに比べ、すでに28年間第六共和国憲法の憲法秩序が継続している。これらの事実は、執政者の玩具にすぎなかった憲法が、権力を抑制する立憲主義の憲法としてついに定着したことを示している。