韓国憲法第10号(第六共和国(現行)憲法)

(太字はこの憲法で改正又は追加された部分)


大韓民国憲法[全文改正1987.10.29憲法第10号]

前文

悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は3·1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統と不義に抗拒した4.19民主理念を継承し,祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚し, 正義人道と同胞愛により民族の団結を強固にし全ての社会的弊習と不義を打破し自立と調和を基礎とする自由民主的基本秩序を更に確固とし政治,経済,社会,文化の全ての領域において各人の機会を均等にして能力を最高度に発揮させ自由と権利にともなう責任と義務を完遂させ内には国民生活の均等な向上を期して外には恒久的な国際平和と人類共栄に貢献することにより我らと我らの子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを誓い1948年7月12日に制定され8次にわたって改正された憲法をここに国会の議決を経て国民投票により改正する。

 

第1章総綱

第1条 ①大韓民国は民主共和国である.

②大韓民国の主権は国民にあり,全ての権力は国民から生ずる.

第2条 ①大韓民国の国民となる要件は法律で定める.

国家は法律が定めるところにより在外国民を保護する義務を負う。

第3条 大韓民国の領土は韓半島と付属島嶼とする.

第4条 大韓民国は統一を指向し,自由民主主義的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立しこれを推進する。

第5条 ①大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略的戦争を否認する.

②国軍は国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし,その政治的中立性は遵守される。

第6条 ①憲法により締結·公布された条約と一般的に承認された国際法規は国内法と同等の効力を有する.

②外国人は国際法と条約が定めるところによりその地位が保障される.

第7条 ①公務員は国民全体に対する奉仕者であり,国民に対し責任を負う.

②公務員の身分と政治的中立性は法律の定めるところにより保障される.

第8条 ①政党の設立は自由であり,複数政党制は保障される.

②政党はその目的・組織と活動が民主的でなければならず,国民の政治的意思形成に参与するために必要な組織を備えなければならない.

③政党は法律の定めるところにより国家の保護を受け,国家は法律の定めるところにより政党の運営に必要な資金を補助することができる.

④政党の目的又は活動が民主的基本秩序に違背するときには政府は憲法裁判所にその解散を提訴することができ,政党は憲法裁判所の審判により解散される.

第9条 国家は伝統文化の継承·発展と民族文化の育成に努力しなければならない.

 

第2章 国民の権利と義務

第10条 全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し,幸福を追求する権利を有する.国家は個人が有する不可侵の基本的人権を確認してこれを保障する義務を負う.

第11条 ①全ての国民は法の下に平等である.何人も性別·宗教又は社会的身分により政治的·経済的·社会的·文化的生活の全ての領域において差別を受けない.

②社会的特殊階級の制度は認められず,如何なる形態においてもこれを創設することができない.

③勲章等の栄典はこれを受ける者にのみ効力を有し,如何なる特権もこれに付随しない.

第12条 ①全ての国民は身体の自由を有する.何人も法律によることなく逮捕·拘束・押収·捜索又は審問を受けず,法律に適合する手続によらなければ処罰・保安処分又は強制労役を受けない.

②全ての国民は拷問を受けず,刑事上自己に不利な陳述を強要されない.

③逮捕·拘束·押収又は捜索をする場合には適法な手続きにより検事の申請により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.但し,現行犯人である場合と長期3年以上の刑に該当する罪を犯して逃避又は証拠湮滅の虞があるときには事後に令状を請求することができる.

④何人も逮捕又は拘束を受けたときには直ちに弁護人の助力を受ける権利を有する.但し,刑事被告人が自ら弁護人を求めることができないときには法律の定めるところにより国家が弁護人を付する.

⑤何人も逮捕又は拘束の理由と弁護人の助力を受ける権利を有することを告示されることなく逮捕又は拘束を受けない.逮捕又は拘束を受けた者の家族等法律が定める者にはその理由と日時・場所が遅滞なく通知されなければならない.

⑥何人も逮捕又は拘束を受けたときには法律の定めるところにより適否の審査を裁判所に請求する権利を有する.

⑦被告人の自白が拷問·暴行·脅迫·拘束の不当な長期化又は欺罔その他の方法により自己の意思によって陳述されたものではないと認められるとき又は正式裁判において被告人の自白が彼に不利な唯一の証拠であるときにはこれを有罪の証拠とし,又はこれを理由に処罰することができない.

第13条 ①全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為について訴追されず,同一の犯罪に対し重ねて処罰されない.

②全ての国民は遡及立法により参政権の制限又は財産権の剝奪を受けない.

③全ての国民は自己の行為ではない親族の行為によって不利益な処遇を受けない.

第14条 全ての国民は居住·移転の自由を有する.

第15条 全ての国民は職業選択の自由を有する.

第16条 全ての国民は住居の自由を侵害されない.住居に対する押収や捜索をする場合には検事の申請により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.

第17条 全ての国民は私生活の秘密と自由を侵害されない.

第18条 全ての国民は通信の秘密を侵害されない.

第19条 全ての国民は良心の自由を有する.

第20条 ①全ての国民は宗教の自由を有する.

②国教は認められず,宗教と政治は分離される.

第21条 ①全ての国民は言論·出版の自由と集会·結社の自由を有する.

②言論・出版に対する許可制や検閲,集会・結社に対する許可制は認められない。

③通信・放送の施設基準と新聞の機能を保障するするため必要な事項は法律で定める.

④言論·出版は他人の名誉や権利又は公衆道徳又は社会倫理を侵害してはならない.言論·出版が他人の名誉や権利を侵害するときには被害者はこれに対する被害の賠償を請求することができる.

第22条 ①全ての国民は学問と芸術の自由を有する.

②著作者·発明家・科学技術者と芸術家の権利は法律により保護する.

第23条 ①全ての国民の財産権は保障される.その内容と限界は法律で定める.

②財産権の行使は公共福利に適合するようにしなければならない.

③公共の必要による財産権の収用·使用又は制限及びそれに対する補償は法律により行われ,適当な補償を支給しなければならない.

第24条 全ての国民は法律の定めるところにより選挙権を有する.

第25条 全ての国民は法律の定めるところにより公務坦任権を有する.

第26条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国家機関に文書で請願する権利を有する.

②国家は請願に対し審査する義務を負う.

第27条 ①全ての国民は憲法と法律で定める裁判官により法律による裁判を受ける権利を有する.

②軍人又は軍務員ではない国民は大韓民国の領域内においては重大な軍事上機密·哨兵·哨所·有毒飲食物供給·捕虜·軍用物に関する罪のうち法律で定める場合と,非常戒厳が宣布された場合を除いては軍法会議の裁判を受けない.

③全ての国民は迅速な裁判を受ける権利を有する.刑事被告人は相当な理由がない限り遅滞なく公開裁判を受ける権利を有する.

④刑事被告人は有罪の判決が確定されるときまでは無罪と推定される.

⑤刑事被害者は法律の定めるところにより当該事件の裁判手続きにおいて陳述することができる.

第28条 刑事被疑者又は刑事被告人として拘禁された者が法律に定める不起訴処分を受け又は無罪判決を受けたときには法律の定めるところにより国家に正当な補償を請求することができる.

第29条 ①公務員の職務上不法行為により損害を受けた国民は法律の定めるところにより国家又は公共団体に正当な賠償を請求することができる.この場合公務員自身の責任は免除されない.

②軍人·軍務員·警察公務員その他法律で定める者が戦闘·訓練等職務執行と関連し受けた損害については法律が定める補償外に国家又は公共団体に公務員の職務上不法行為にによる賠償は請求することができない.

第30条 他人の犯罪行為により生命・身体に対する被害を受けた国民は法律の定めるところにより国家から救助を受けることができる.

第31条 ①全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する.

②全ての国民はその保護する子女に少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う.

③義務教育は無償とする.

④教育の自主性·専門性及び政治的中立性及び大学の自立性は法律の定めるところにより保障される.

⑤国家は生涯教育を振興しなければならない.

⑥学校教育及び生涯教育を含む教育制度とその運営,教育財政及び教員の地位に関する基本的な事項は法律で定める.

第32条 ①全ての国民は勤労の権利を有する.国家は社会的·経済的方法により勤労者の雇用の増進と適正賃金の保障に努力しなければならず、法律の定めるところにより最低賃金制を施行しなければならない.

②全ての国民は勤労の義務を負う.国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義原則に従い法律で定める.

③勤労条件の基準は人間の尊厳性を保障するように法律で定める.

④女子の勤労は特別な保護を受け,雇用・賃金及び勤労条件において不当な差別を受けない.

⑤年少者の勤労は特別な保護を受ける。

⑥国家有功者·傷痍軍警及び戦没軍警の遺家族は法律の定めるところにより優先的に勤労の機会を賦与される.

第31条 ①勤労者は勤労条件の向上のため自主的な団結権·団体交涉権及び団体行動権を有する.

②公務員である勤労者は法律に定めるに限り団結権·団体交涉権及び団体行動権を有する.

③法律が定める主要防衛産業体に従事する勤労者の団体行動権は法律の定めるところによりこれを制限し又は認めないことができる.

第34条 ①全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する.

②国家は社会保障·社会福祉の増進に努力する義務を負う.

国家は女子の福祉と権益の向上のため努力しなければならない.

④国家は老人と青少年の福祉向上のための政策を実施する義務を負う.

⑤身体障害者及び疾病・老齢その他の事由により生活能力がない国民は法律の定めるところにより国家の保護を受ける.

⑥国家は災害を予防しその危険から国民を保護するため努力しなければならない.

第35条 ①全ての国民は健康で快適な環境において生活する権利を有し,国家と国民は環境保全のため努力しなければならない.

②環境権の内容と行使については法律で定める.

③国家は住宅開発政策等を通じて全ての国民が快適な住居生活をすることができるよう努力しなければならない.

第36条 ①婚姻と家族生活は個人の尊厳と両性の平等を基礎に成立し維持されねばならず、国家はこれを保障する.

②国家は母性の保護のため努力しなければならない.

③全ての国民は保健に関し国家の保護を受ける.

第37条 ①国民の自由と権利は憲法に列挙されないとの理由により軽視されない.

②国民の全ての自由と権利は国家安全保障·秩序維持又は公共福利のため必要な場合に限り法律により制限することができ,制限する場合にも自由と権利の本質的な内容を侵害することができない.

第38条 全ての国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う.

第39条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国防の義務を負う.

②何人も兵役義務の履行により不利益な処遇を受けない.

 

第3章 国会

第40条 立法権は国会に属する.

第41条 ①国会は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出された議員で構成する.

②国会議員の数は法律に定め,200人以上とする.

③国会議員の選挙区と比例代表制その他選挙に関する事項は法律で定める.

第42条 国会議員の任期は4年とする.

第43条 国会議員は法律が定める職を兼ねることができない.

第44条 ①国会議員は現行犯人である場合を除いては会期中国会の同意なく逮捕又は拘禁されない.

②国会議員が会期前に逮捕又は拘禁されたときには現行犯人でない限り国会の要求があれば会期中釈放される.

第45条 国会議員は国会において職務上行う発言と表決に関し国会外において責任を負わない.

第46条 ①国会議員は清廉の義務を負う.

②国会議員は国家利益を優先し良心に従い職務を行う.

③国会議員はその地位を濫用し国家·公共団体又は企業体との契約又はその処分により財産上の権利·利益又は職位を取得し又は他人のためその取得を斡旋することができない.

第47条 ①国会の定期会は法律の定めるところにより毎年1回集会され,国会の臨時会は大統領又は国会在籍議員4分の1以上の要求により集会される.

②定期会の会期は100日を,臨時会の会期は30日を超過することができない.

③大統領が臨時会の集会を要求するときには期間と集会要求の理由を明示しなければならない.

第48条 国会は議長1人と副議長2人を選挙する.

第49条 国会は憲法又は法律に特別な規定がない限りその在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の賛成で議決する.可否同数であるときには否決されたものとみなす.

第50条 ①国会の会議は公開する.但し,出席議員過半数の賛成があり,又は議長が国家の安全保障のため必要であると認めるときには公開しないことができる.

②公開しないものとする会議の内容は公表については法律の定めるところによる.

第51条 国会に提出された法律案その他の議案は会期中に議決できなかったことを理由に廃棄されない.但し,国会議員の任期が満了した場合にはこの例によらない.

第52条 国会議員と政府は法律案を提出することができる.

第53条 ①国会において議決された法律案は政府に移送され15日以内に大統領が公布する.

②法律案に異議があるときには大統領は第1項の期間内に異議書を付して国会に還付して,その再議を要求することができる.国会の閉会中にも同様である.

③大統領は法律案の一部に対し又は法律案を修正し再議を要求することができない.

④再議の要求があるときには国会は再議に付して,在籍議員過半数の出席と出席議員3分の2以上の賛成で前と同じ議決をした場合にはその法律案は法律として確定される.

⑤大統領が第1項の期間内に公布や再議の要求をしないときにもその法律案は法律として確定される.

⑥大統領は第4項と第5項の規定により確定された法律を遅滞なく公布しなければならない.

第5項により法律が確定された後又は第4項による確定法律が政府に移送された後5日以内に大統領が公布しないときには国会議長がこれを公布する.

⑦法律は特別な規定がない限り公布した日から20日を経過することにより効力を発生する.

第54条 ①国会は国家の予算案を審議·確定する.

②政府は会計年度毎に予算案を編成し会計年度開始90日前まで国会に提出して,国会は会計年度開始30日前までこれを議決しなければならない.

③新たな会計年度が開始されるときまで予算案を議決できないときには政府は国会において予算案が議決されるときまで次の目的のための経費は前年度予算に準じ執行することができる.

1.憲法又は法律により設置された機関又は施設の維持·運営

2.法律上支出義務の履行

3.すでに予算に承認された事業の継続

第55条 ①一会計年度を超えて継続して支出する必要があるときには政府は年限を定めて継続費として国会の議決を得なければならない.

②予備費は総額として国会の議決を得なければならない.予備費の支出は次期国会の承認を得なければならない.

第56条 政府は予算に変更を加える必要があるときには追加更正予算案を編成し国会に提出することができる.

第57条 国会は政府の同意なく政府が提出する支出予算各項の金額を増加し又は新たな費目を設置することができない.

第58条 国債を募集し又は予算外に国家の負担となる契約を締結しようとするときには政府は予め国会の議決を得なければならない.

第59条 租税の種目と税率は法律で定める.

第60条 ①国会は相互援助又は安全保障に関する条約,重要な国際組織に関する条約,友好通商航海条約,主権の制約に関する条約,講和条約,国家や国民に重大な財政的負坦を負わせる条約又は立法事項に関する条約の締結·批准に対する同意権を有する.

②国会は宣戦布告,国軍の外国への派遣又は外国軍隊の大韓民国領域内での駐留について同意権を有する.

第61条 ①国会は国政を監査し又は特定の国政事案に関し調査することができ,これに必要な書類の提出又は証人の出席と証言や意見の陳述を要求することができる.

②国政監査及び調査に関する手続その他必要な事項は法律で定める

第62条 ①国務総理·国務委員又は政府委員は国会やその委員会に出席し国政処理狀況を報告し又は意見を陳述して質問に応答することができる.

②国会又はその委員会の要求があるときには国務総理·国務委員又は政府委員は出席·答弁せねばならず,国務総理又は国務委員が出席要求を受けたときには国務委員又は政府委員に出席·答弁させることができる.

第63条 ①国会は国務総理又は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

②第1項の解任議決は国会在籍議員3分の1以上の発議により国会在籍議員過半数の賛成を要する.

第64条 ①国会は法律に抵触しない範囲内において議事と内部規律に関する規則を制定することができる.

②国会は議員の資格を審査し,議員を懲戒することができる.

③議員を除名しようとする場合には国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

④第2項と第3項の処分については裁判所に提訴することができない.

第65条 ①大統領·国務総理·国務委員·行政各部の長·憲法裁判所裁判官·裁判官·中央選挙管理委員会委員·監査院長,監査委員その他法律で定める公務員がその職務執行において憲法又は法律に違背したときには国会は弾劾の訴追を議決することができる.

②第1項の弾劾訴追は国会在籍議員3分の1以上の発議が必要であり,その議決国会在籍議員過半数の賛成を要する.但し,大統領に対する弾劾訴追は国会在籍議員過半数の発議と国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

③弾劾訴追の議決を受けた者は弾劾審判があるときまでその権限行使が停止される.

④弾劾決定は公職から罷免するにとどまる.但し,これにより民事上又は刑事上の責任は免除されない.

 

第4章 政府

第1節 大統領

第66条 ①大統領は国家の元首であり,外国に対し国家を代表する.

②大統領は国家の独立·領土の保全·国家の継続性と憲法を守護する責務を負う.

③大統領は祖国の平和的統一のため誠実な義務を負う.

④行政権は大統領を首班とする政府に属する.

第67条 ①大統領は国民の普通・平等・直接・秘密選挙により選出する.

②第1項の選挙において最高得票者が2人以上の場合には国会の在籍議員過半数が出席した公開会議において多数票を得た者を当選者とする.

③大統領候補者が1人であるときにはその得票数が選挙権者総数の3分の1以上でなければ大統領に当選することができない.

大統領に選挙されることができる者は国会議員の被選挙権を有し,選挙日現在40歳に達していなければならない.

⑤大統領の選挙に関する事項は法律で定める.

第68条 ①大統領の任期が満了するときには任期満了70日乃至40日前に後任者を選挙する.

②大統領が欠けたとき又は大統領当選者が死亡又は判決その他の事由によりその資格を喪失したときには60日以内に後任者を選挙する.

第69条 大統領は就任に際し次の宣誓を行う.

“私は憲法を遵守して国家を保衛し祖国の平和的統一と国民の自由と福利の増進及び民族文化の育成に努力し大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します.”

第70条 大統領の任期は5年とし,重任することができない.

第71条 大統領が欠けたり事故によって職務を遂行することができないときには国務総理,法律の定める国務委員の順位でその権限を代行する.

第72条 大統領は必要であると認めるときには外交·国防·統一その他国家安危に関する重要政策を国民投票に付することができる.

第73条 大統領は条約を締結·批准し,外交使節を信任·接受又は派遣し,宣戦布告と講和を行う.

第74条 ①大統領は憲法と法律の定めるところにより国軍を統帥する.

②国軍の組織と編成は法律で定める.

第75条 大統領は法律において具体的に範囲を定めて委任を受けた事項と法律を執行するために必要な事項に関し大統領令を発することができる.

第76条 ①大統領は内憂・外患・天災·地変又は重大な財政·経済上の危機に際し,国家の安全保障又は公共の安寧秩序を維持するため緊急の措置が必要であり国会の集会を待つ余裕がないときに限り最小限の必要な財政・経済上の処分を行い,又はこれに関して法律の効力を有する命令を発することができる。

②大統領は国家の安企にかかわる重大な交戦状態において国家を保衛するために緊急の措置が必要であり国会の集会が不可能なときに限り法律の効力を有する命令を発することができる。

③大統領は第1項と第2項の措置を行ったときには大統領は遅滞なく国会に報告し承認を得なければならない

④第3項の承認を得られないときにはその処分又は命令はそのときから効力を喪失する.この場合その命令により改正又は廃止された法律はその命令が承認を得られない時から当然に効力を回復する.

⑤大統領は第3項と第4項の事由を遅滞なく公布しなければならない.

第77条 ①大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要に応じ,又は公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる.

②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする.

③非常戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.

④戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.

⑤国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときには大統領はこれを解除しなければならない.

第78条 大統領は憲法と法律の定めるところにより公務員を任命する.

第79条 ①大統領は法律の定めるところにより赦免·減刑又は復権を命ずることができる.

②一般赦免を命じるには国会の同意を得なければならない.

③赦免·減刑及び復権に関する事項は法律で定める.

第80条 大統領は法律の定めるところにより

勲章その他の栄典を授与する.

第81条 大統領は国会に出席して発言し,又は書簡により意見を表示することができる.

第82条 大統領の国法上の行為は文書により行い,この文書には国務総理と関係国務委員が副署する.軍事に関するものも同様である.

第83条 大統領は国務総理·国務委員·行政各部の長その他法律が定める公私の職を兼ねることができない.

第84条 大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない.

第85条 前職大統領の身分と礼遇については法律で定める.

 

第2節 行政府

第1款 国務総理と国務委員

第86条 ①国務総理は国会の同意を得て大統領が任命する.

②国務総理は大統領を補佐し,行政に関し大統領の命を受け行政各部を統轄する.

③軍人は現役を退いた後でなければ国務総理に任命されることができない.

第87条 ①国務委員は国務総理の提請により大統領が任命する.

②国務委員は国政に関し大統領を補佐し,国務会議の構成員として国政を審議する.

③国務総理は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

④軍人は現役を退いた後でなければ国務委員に任命されることができない.

 

第2款 国務会議

第88条 ①国務会議は政府の権限に属する重要な政策を審議する.

②国務会議は大統領·国務総理と15人以上30人以下の国務委員で構成する.

③大統領は国務会議の議長となり,国務総理は副議長となる.

第89条 次の事項は国務会議の審議を経ねばならない.

1.国政の基本計画と政府の一般政策

2.宣戦·講和その他重要な対外政策

3.憲法改正案·国民投票案·条約案·法律案と大統領令案

4.予算案·決算·国有財産処分の基本計画·国家の負担となる契約その他財政に関する重要事項

5.大統領の緊急命令・緊急財政経済処分及命令又は戒厳とその解除

6.軍事に関する重要事項

7.国会の臨時会集会の要求

8.栄典授与

9.赦免·減刑と復権

10.行政各部間の権限の画定

11.政府内の権限の委任又は配定に関する基本計画

12.国政処理狀況の評価·分析

13.行政各部の重要な政策の樹立と調整

14.政党解散の提訴

15.政府に提出又は回付された政府の政策に関係する請願の審査

16.検察総長・合同参謀議長·各軍参謀総長·国立大学校総長·大使その他法律の定める公務員と国営企業体管理者の任命

17.その他大統領·国務総理又は国務委員が提出する事項

第90条 ①国政の重要な事項に関する大統領の諮問に応ずるために国家元老で構成とされる国政諮問会議を置くことができる.

②国政諮問会議の議長は直前大統領とする.但し,直前大統領がないときには大統領が指名する.

③国政諮問会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第91条 ①国家安全保障に関連する対外政策·軍事政策と国内政策の樹立に関し国務会議の審議に先立ち大統領の諮問に応ずるために国家安全保障会議を置く.

②国家安全保障会議は大統領が主宰する.

③国家安全保障会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第92条 ①平和統一政策の樹立に関する大統領の諮問に応ずるために民主平和統一政策諮問会議を置くことができる.

②民主平和統一政策諮問会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第93条①国民経済の発展のための重要政策の樹立に関し大統領の諮問に応ずるため国民経済諮問会議を置くことができる.

②国民経済諮問会議の組織・職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第3款 行政各部

第94条 行政各部の長は国務委員の中から国務総理の提請により大統領が任命する.

第95条 国務総理又は行政各部の長は所管事務に関し法律又は大統領令の委任又は職権で総理令又は部令を発することができる.

第96条 行政各部の設置·組織と職務範囲は法律で定める.

 

第4款 監査院

第97条 国家の歳入·歳出の決算,国家及び法律で定める団体の会計検査と行政機関及び公務員の職務に関する監察を行うために大統領所属下に監査院を置く.

第98条 ①監査院は院長を含む5人以上11人以下の監査委員で構成する.

②院長は国会の同意を得て大統領が任命し,その任期は4年とし,1回に限り重任することができる.

③監査委員は院長の提請により大統領が任命し,その任期は4年とし,1回に限り重任することができる.

第99条 監査院は歳入·歳出の決算を毎年検査し大統領と次年度国会にその結果を報告しなければならない.

第100条 監査院の組織·職務範囲·監査委員の資格·監査対象公務員の範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第5章 裁判所

第101条 ①司法権は裁判官で構成された裁判所に属する.

②裁判所は最高裁判所である大法院と各級裁判所により組織される.

③裁判官の資格は法律で定める.

第102条 ①大法院に部を置くことができる.

②大法院に行政·租税·労動·軍事等を専坦する部を置くことができる.

③大法院に大法官を置く.但し,法律の定めるところにより大法官ではない裁判官を置くことができる.

④大法院と各級裁判所の組織は法律で定める.

第103条 裁判官は憲法と法律によりその良心に従い独立して審判する.

第104条 ①大法院長は国会の同意を得て大統領が任命する.

②大法官は大法院長の提請により国会の同意を得て大統領が任命する.

③大法院長と大法官ではない裁判官は大法官会議の同意を得て大法院長が任命する.

第105条 ①大法院長の任期は6年とし,重任することができない.

②大法官の任期は6年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

③大法院長と大法官ではない裁判官の任期は10年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

④裁判官の停年は法律で定める.

第106条 ①裁判官は弾劾又は禁錮以上の刑の宣告よることなく罷免されず,懲戒処分によることなく停職·減俸その他不利な処分を受けない.

②裁判官が重大な心身上の障害により職務を遂行することができないときには法律の定めるところにより退職させることができる.

第107条 ①法律が憲法に違反するか否かが裁判の前提とされた場合,裁判所は憲法裁判所に提請しその審判により裁判する.

②命令·規則又は処分が憲法又は法律に違反するか否かが裁判の前提とされた場合には大法院はこれを最終的に審査する権限を有する.

③裁判の前審手続として行政審判をすることができる.行政審判の手続は法律に定め,司法手続が準用されねばならない.

第108条 大法院は法律に抵触しない範囲内において訴訟に関する手続,裁判所の内部規律と事務処理に関する規則を制定することができる.

第109条 裁判の審理と判決は公開する.但し,審理は国家の安全保障又は安寧秩序を妨害し又は善良な風俗を害する虞があるときには裁判所の決定により公開しないことができる.

第110条 ①軍事裁判を管轄するために特別裁判所として軍事裁判所を置くことができる.

②軍事裁判所の上告審は大法院において管轄する.

③軍事裁判所の組織·権限及び裁判官の資格は法律で定める.

④非常戒厳下の軍事裁判は軍人·軍務員の犯罪や軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有毒飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合に限り単審とすることができる.但し,死刑を宣告する場合には上記の例によらない.

 

第6章 憲法裁判所

第111条 ①憲法裁判所は次の事項を管掌する.

1.裁判所の提請による法律の違憲審判

2.弾劾の審判

3.政党の解散審判

4.国家機関相互間,国家機関と地方自治団体間及び地方自治団体相互間の権限争議に関する審判

5.法律の定める憲法訴願に関する審判

②憲法裁判所は裁判官の資格を有する9人の裁判官で構成し,裁判官は大統領が任命する.

③第2項の裁判官中3人は国会において選出する者を,3人は大法院長が指名する者を任命する.

④憲法裁判所の長は国会の同意を得て裁判官の中から大統領が任命する.

第112条 ①憲法裁判所裁判官の任期は6年とし,法律の定めるところにより連任することができる.

②憲法裁判所裁判官は政党に加入し又は政治に関与することができない.

③憲法裁判所裁判官は弾劾又は禁錮以上の刑の宣告によることなく罷免されない.

第113条 ①憲法裁判所において法律の違憲決定,弾劾の決定,政党解散の決定又は憲法訴願に関する認容決定をするときには裁判官6人以上の賛成を要する.

憲法裁判所は法律に抵触しない範囲内で審判に関する手続,内部規律と事務処理に関する規則を制定することができる。

②憲法裁判所会の組織と運営その他必要な事項は法律で定める.

 

第7章 選挙管理

第114条 ①選挙と国民投票の公正する管理及び政党に関する事務を処理するために選挙管理委員会を置く.

②中央選挙管理委員会は大統領が任命する3人,国会において選出する3人と大法院長が指名する3人の委員で構成する.委員長は委員の中から互選する.

③委員の任期は6年とする.

④委員は政党に加入し又は政治に関与することができない.

⑤委員は弾劾又は禁錮以上の刑の宣告によることなく罷免されない.

⑥中央選挙管理委員会は法令の範囲内において選挙管理·国民投票管理又は政党事務に関する規則を制定することができ,法律に抵触しない範囲内で内部規律に関する規則を制定することができる.

⑦各級選挙管理委員会の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第115条 ①各級選挙管理委員会は選挙人名簿の作成等選挙事務と国民投票事務に関し関係行政機関に必要な指示をすることができる.

②第1項の指示を受けた当該行政機関はこれに応じなければならない.

第116条 ①選挙運動は各級選挙管理委員会の管理下に法律が定める範囲内において行われ,均等な機会が保障されねばならない.

②選挙に関する経費は法律が定める場合を除いては政党又は候補者に負坦させることができない.

 

第8章 地方自治

第117条 ①地方自治団体は住民の福利に関する事務を処理して財産を管理し,法令の範囲内において自治に関する規定を制定することができる.

②地方自治団体の種類は法律で定める.

第118条 ①地方自治団体に議会を置く.

②地方議会の組織·権限·議員選挙と地方自治団体の長の選任方法その他地方自治団体の組織と運営に関する事項は法律で定める.

 

第9章 経済

第119条 ①大韓民国の経済秩序は個人と企業の経済上の自由と創意を尊重することを基本とする.

②国家は均衡ある国民経済の成長及び安定と適当な所得の分配を維持し,市場の支配と経済力の濫用を防止し,経済主体間の調和を通じた経済の民主化のため経済に関する規制と調整を行う.

第120条 ①鉱物その他重要な地下資源·水産資源·水力と経済上利用することのできる自然力は法律の定めるところにより一定の期間その採取·開発又は利用を特許することができる.

②国土と資源は国家の保護を受け,国家はその均衡ある開発と利用のため必要な計画を樹立する.

第121条 ①国家は農地に関する耕者有田の原則が達成できるように努力しなければならず,農地の小作制度は禁止される.

②農業生産性の向上と農地の合理的な利用のため又は不可避な事情により発生する農地の賃貸借及び委託経営は法律の定めるところにより認められる.

第122条 国家は国民すべての生産及び生活の基盤となる国土の効率的かつ均衡ある利用·開発と保全のため法律の定めるところによりこれに関する必要な制限と義務を課することができる.

第123条 ①国家は農業及び漁業を保護・育成するため農・漁村総合開発とその支援等必要な計画を樹立・施行しなければならない.

国家は地域間の均衡ある発展のため地域経済を育成する義務を負う

③国家は中小企業を保護·育成しなければならない.

国家は農水産物の需給均衡と流通構造の改善に努力し価格安定を図ることにより農・漁民の利益を保護する.

⑤国家は農民·漁民と中小企業の自助組織を育成せねばならず,その自律的活動と発展を保障する.

第124条 国家は健全な消費行為を啓導して生産品の品質向上を促求するための消費者保護運動を法律の定めるところにより保障する.

第125条 国家は対外貿易を育成し,これを規制·調整することができる.

第126条 国防上又は国民経済上緊急の必要のために法律で定める場合を除いては,私営企業を国有又は公有に移転し又はその経営を統制又は管理することができない.

第127条 ①国家は科学技術の革新と情報及び人力の開発を通じて国民経済の発展努に努力しなければならない.

②国家は国家標準制度を確立する.

③大統領は第1項の目的を達成するために必要な諮問機構を置くことができる.

 

第10章 憲法改正

第128条 ①憲法改正は国会在籍議員過半数又は大統領の発議により提案される.

②大統領の任期延長又は重任変更のため憲法改正はその憲法改正提案当時の大統領については効力がない.

第129条 提案された憲法改正案は大統領が20日以上の期間これを公告しなければならない.

第130条 ①国会は憲法改正案が公告された日から60日以内に議決せねばならず,国会の議決は在籍議員3分の2以上の賛成を得なければならない.

②憲法改正案は国会が議決した後30日以内に国民投票に付して国会議員選挙権者過半数の投票と投票者過半数の賛成を得なければならない.

③憲法改正案が第2項の賛成を得たときには憲法改正は確定され,大統領は直ちにこれを公布しなければならない.

 

付則<第10号,1987.10.29>

第1条 この憲法は1988年2月25日から施行する.但し,この憲法を施行するため必要な法律の制定・改正とこの憲法による大統領及び国会議員の選挙その他この憲法施行に関する準備はこの憲法施行前にすることができる.

第2条 ①この憲法による最初の大統領選挙はこの憲法施行日の40日前までに実施する.

②この憲法による最初の大統領の任期はこの憲法施行日から開始する.

第3条①この憲法による最初の国会議員選挙はこの憲法の公布日から6月以内に実施し,この憲法により選出された最初の国会議員の任期は国会議員選挙後この憲法による国会の最初の集会日から開始する.

②この憲法施行当時の国会議員の任期は第1項による国会の最初の集会日の前日までとする.

第4条①この憲法施行当時の公務員と政府が任命した企業体の役員はこの憲法により任命したものとみなす.但し,この憲法により選任方法や任命権者が変更された公務員と大法院長及び検察総長はこの憲法により後任者が選任されるときまでその職務を行い,その場合前任者である公務員の任期は後任者が選任される日の前日までとする.

②この憲法施行当時の大法院長と大法院判事ではない裁判官は第1項の但書の規定に拘わらずこの憲法により任命されたものとみなす.

③この憲法中公務員の任期又は重任制限に関する規定はこの憲法によりその公務員が最初に選出又は任命された時から適用される.

第5条 この憲法施行当時の法令と条約はこの憲法に違背しない限りその効力を持続する.

第6条 この憲法施行当時にこの憲法により新たに設置される機関の権限に属する職務を行っている機関はこの憲法による新たな機関が設置されるときまで存続しその職務を行う.

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