韓国憲法第7号(三選改憲)

(太字はこの憲法で改正又は追加された部分。斜体は次の改正で削除された部分)


大韓民国憲法[一部改正1969.10.21憲法第7号]

前文

悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は3·1運動の崇高な独立精神を継承して4·19義挙と5·16革命の理念に立脚し新たな民主共和国を建設するにあたり,正義·人道と同胞愛により民族の団結を強固にし全ての社会的弊習を打破して民主主義諸制度を確立し政治·経済·社会·文化の全ての領域において各人の機会を均等にして義務を完遂させ,内には国民生活の均等な向上を期して外には恒久的な世界平和に貢献することにより我らと我らの子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを誓い,1948年7月12日に制定された憲法をここに国民投票により改正する.

 

第1章 総綱

第1条 ①大韓民国は民主共和国である.

②大韓民国の主権は国民にあり,全ての権力は国民から生ずる.

第2条 大韓民国の国民の要件は法律で定める.

第3条 大韓民国の領土は韓半島と付属島嶼とする.

第4条 大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略的戦争を否認する.

第5条 ①この憲法により締結·公布された条約と一般的に承認された国際法規は国内法と同等の効力を有する.

②外国人については国際法と条約の定めるところによりその地位を保障する.

第6条 ①公務員は国民全体に対する奉仕者であり,国民に対し責任を負う.

②公務員の身分と政治的中立性は法律の定めるところにより保障される.

第7条 ①政党の設立は自由であり,複数政党制は保障される.

②政党はその組織と活動が民主的でなければならず,国民の政治的意思形成に参与するために必要な組織を備えなければならない.

③政党は国家の保護を受ける.但し,政党の目的又は活動が民主的基本秩序に違背したときには政府は大法院にその解散を提訴することができ,政党は大法院の判決により解散される.

第2章 国民の権利と義務

第8条 全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し,このための国家は国民の基本的人権を最大限に保障する義務を負う.

第9条 ①全ての国民は法の下に平等である.何人も性別·宗教又は社会的身分により政治的·経済的·社会的·文化的生活の全ての領域において差別を受けない.

②社会的特殊階級の制度は認められず,如何なる形態においてもこれを創設することができない.

③勲章等の栄典はこれを受ける者にのみ効力を有し,如何なる特権もこれに付随しない.

第10条 ①全ての国民は身体の自由を有する.何人も法律によることなく逮捕·拘禁·捜索·押収·審問又は処罰を受けず,刑の宣告によることなく強制労役をさせられない.

②全ての国民は拷問を受けず,刑事上自己に不利な陳述を強要されない.

③逮捕·拘禁·捜索·押収には検察官の申請により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.但し,現行犯人である場合と長期3年以上の刑に該当する罪を犯して逃避又は証拠湮滅の虞があるときには事後に令状を請求することができる.

④何人も逮捕·拘禁を受けるときには直ちに弁護人の助力を受ける権利を有し,法律が定める場合に,刑事被告人が自ら弁護人を求めることができないときには国家が弁護人を付する.

⑤何人も逮捕·拘禁を受けるときには適否の審査を裁判所に請求する権利を有する.私人から身体の自由の不法する侵害を受けるときにも法律の定めるところにより救済を裁判所に請求する権利を有する.

⑥被告人の自白が拷問·暴行·脅迫·拘束の不当な長期化又は欺罔その他の方法により自己の意思によって陳述されたものではないと認められるとき,又は被告人の自白が彼に不利な唯一する証拠であるときには,これを有罪の証拠とし,又はこれを理由に処罰することができない.

第11条 ①全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為について訴追されず,同一の犯罪に対し重ねて処罰されない.

②全ての国民は遡及立法により参政権の制限又は財産権の剝奪を受けない.

第12条 全ての国民は居住·移転の自由を有する.

第13条 全ての国民は職業選択の自由を有する.

第14条 全ての国民は住居の侵入を受けない.住居に対する捜索又は押収には裁判官の令状を提示しなければならない.

第15条 全ての国民は通信の秘密を侵害されない.

第16条 ①全ての国民は宗教の自由を有する.

②国教は認められず,宗教と政治は分離される.

第17条 全ての国民は良心の自由を有する.

第18条 ①全ての国民は言論·出版の自由と集会·結社の自由を有する.

②言論·出版に対する許可や検閱と集会·結社に対する許可は認められない.但し,公衆道徳と社会倫理のために映画や演芸に対する検閱をすることができる.

③新聞又は通信の発行施設基準は法律で定めることができる.

④屋外集会についてはその時間と場所に関する規制を法律で定めることができる.

⑤言論·出版は他人の名誉や権利又は公衆道徳又は社会倫理を侵害してはならない.

第19条 ①全ての国民は学問と芸術の自由を有する.

②著作者·発明家と芸術家の権利は法律により保護する.

第20条 ①全ての国民の財産権は保障される.その内容と限界は法律で定める.

②財産権の行使は公共福利に適合するようにしなければならない.

③公共の必要による財産権の収用·使用又は制限は法律により行われ正当な補償を支給しなければならない.

第21条 全ての国民は20歳に達すると法律の定めるところにより公務員選挙権を有する.

第22条 全ての国民は法律の定めるところにより公務坦任権を有する.

第23条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国家機関に文書で請願する権利を有する.

②国家は請願に対し審査する義務を負う.

第24条 ①全ての国民は憲法と法律で定める裁判官により法律による裁判を受ける権利を有する.

②軍人又は軍属ではない国民は大韓民国の領域内においては軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合,及び非常戒厳が宣布された場合を除いては,軍法会議の裁判を受けない.

③全ての国民は迅速な裁判を受ける権利を有する.刑事被告人は相当な理由がない限り遅滞なく公開裁判を受ける権利を有する.

第25条 刑事被告人として拘禁された者が無罪判決を受けたときには法律の定めるところにより国家に補償を請求することができる.

第26条 公務員の職務上不法行為により損害を受けた国民は国家又は公共団体に賠償を請求することができる.ただし,公務員自身の責任は免除されない.

第27条 ①全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する.

②全ての国民はその保護する子どもに初等教育を受けさせる義務を負う.

③義務教育は無償とする.

④教育の自主性と政治的中立性は保障されねばならない.

⑤教育制度とその運営に関する基本的な事項は法律で定める.

第28条 ①全ての国民は勤労の権利を有する.国家は社会的·経済的方法により勤労者の雇用の増進に努力しなければならない.

②全ての国民は勤労の義務を負う.国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義原則に従い法律で定める.

③勤労条件の基準は法律で定める.

④女子と少年の勤労は特別な保護を受ける.

第29条 ①勤労者は勤労条件の向上のため自主的な団結権·団体交涉権及び団体行動権を有する.

②公務員である勤労者は法律に認められた者を除いては団結権·団体交涉権及び団体行動権を有しない.

第30条 ①全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する.

②国家は社会保障の増進に努力しなければならない.

③生活能力がない国民は法律の定めるところにより国家の保護を受ける.

第31条 全ての国民は婚姻の純潔と保健に関し国家の保護を受ける.

第32条 ①国民の自由と権利は憲法に列挙されないとの理由により軽視されない.

②国民の全ての自由と権利は秩序維持又は公共福利のため必要な場合に限り法律により制限することができ,制限する場合にも自由と権利の本質的な内容を侵害することができない.   

第33条 全ての国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う.

第34条 全ての国民は法律の定めるところにより国防の義務を負う.

 

第3章 統治機構

第1節 国会

第35条 立法権は国会に属する.

第36条 ①国会は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出された議員で構成する.

②国会議員の数は150人以上250人以下の範囲内において法律で定める.

③国会議員候補になろうとする者は所属政党の推薦を受けねばならない.

④国会議員の選挙に関する事項は法律で定める.

第37条 国会議員の任期は4年とする.

第38条 国会議員は任期中党籍を離脱し変更するとき又は所属政党が解散されたときにはその資格を喪失する.但し,合党又は除名により所属が異動する場合は例外とする.

第39条 国会議員は法律の定める公私の職を兼ねることができない.

第40条 国会議員はその地位を濫用し国家·公共団体又は法律が定める企業体との契約又はその処分により財産上の権利や利益又は職位を取得し他人のためその取得を斡旋することができない.

第41条 ①国会議員は現行犯人である場合を除いては会期中国会の同意なく逮捕又は拘禁されない.

②国会議員が会期前に逮捕又は拘禁されたときには現行犯人でない限り国会の要求があれば会期中釈放される.

第42条 国会議員は国会において職務上行う発言と表決に関し国会外において責任を負わない.

第43条 ①国会の定期会は法律の定めるところにより毎年1回集会される.

②緊急の必要があるときには大統領又は国会在籍議員4分の1以上の要求により国会議長は国会の臨時会の集会を公告する.

③定期会の会期は120日を,臨時会の会期は30日を超過することができない.

第44条 国会は議長1人と副議長2人を選挙する.

第45条 国会は憲法又は法律に特別な規定がない限りその在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の賛成で議決する.可否同数であるときには否決されたものとみなす.

第46条 国会の会議は公開する.但し,出席議員過半数の賛成で公開しないことができる.

第47条 国会に提出された法律案その他の議案は会期中に議決できないことを理由に廃棄されない.但し,国会議員の任期が満了したときには例外とする.

第48条 国会議員と政府は法律案を提出することができる.

第49条 ①国会において議決された法律案は政府に移送され15日以内に大統領が公布する.

②法律案に異議があるときには大統領は前項の期間内に異議書を付して国会に還付してその再議を要求することができる.国会の閉会中にも同様である.

③大統領は法律案の一部に対し,又は法律案を修正し再議を要求することができない.

④再議の要求があるときには国会は再議に付して在籍議員過半数の出席と出席議員3分の2以上の賛成で前回と同じ議決をした場合にはその法律案は法律として確定される.

⑤大統領が第1項の期間内に公布や再議の要求をしないときにもその法律案は法律として確定される.

⑥大統領は第4項と第5項の規定により確定された法律を遅滞なく公布しなければならない.前項により法律が確定された後又は第4項による確定法律が政府に移送された後5日以内に大統領が公布しないときには国会議長がこれを公布する.

⑦法律は特別な規定がない限り公布した日から20日を経過することにより効力を発生する.

第50条 ①国会は国家の予算案を審議·確定する.

②政府は会計年度毎に予算案を編成し会計年度開始120日前まで国会に提出して,国会は会計年度開始30日前までこれを議決しなければならない.

③前項の期間内に予算案を議決できないときには政府は国会において予算案が議決されるときまで次の各号の経費を歳入の範囲内において前年度予算に準じ支出することができる.

1.公務員の報酬と事務処理に必要な基本経費

2.憲法又は法律により設置された機関又は施設の維持費と法律上支出の義務がある経費

3.すでに予算上承認された継続費

第51条 ①一会計年度を超えて継続して支出する必要があるときには政府は年限を定めて継続費として国会の議決を得なければならない.

②予測することができない予算外の支出又は予算超過支出に充当するための予備費は予め国会の議決を得なければならない.予備費の支出は次期国会の承認を得なければならない.

第52条 予算成立後に生じた事由によって予算に変更を加える必要があるときには,政府は追加更正予算案を編成し国会に提出することができる.

第53条 国会は政府の同意なく政府が提出する支出予算各項の金額を増加し新たな費目を設置することができない.

第54条 国債を募集し予算外に国家の負担となる契約を締結しようとするときには,政府は予め国会の議決を得なければならない.

第55条 租税の種目と税率は法律で定める.

第56条 ①国会は相互援助又は安全保障に関する条約,国際組織に関する条約,通商条約,漁業条約,講和条約,国家や国民に財政的負坦を負わせる条約,外国軍隊の地位に関する条約又は立法事項に関する条約の締結·批准に対する同意権を有する.

②宣戦布告,国軍の外国への派遣又は外国軍隊の大韓民国領域内においての駐留についても国会は同意権を有する.

第57条 国会は国政を監査し,これに必要な書類の提出,証人の出席と証言又は意見の陳述を要求することができる.但し,裁判と進行中である犯罪捜査·訴追に干渉することができない.

第58条 国務総理·国務委員又は政府委員は国会やその委員会に出席し国政処理狀況を報告し意見を陳述して質問に応答することができ,国会やその委員会又は国会議員30人以上の要求があるときには出席·答弁しなければならない.

第59条 ①国会は国務総理又は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

②前項の建議は在籍議員過半数の賛成を要する.

③第1項と第2項による建議があるときには大統領は特別な事由がない限りこれに応じなければならない.

第60条 ①国会は法律に抵触しない範囲内において議事と内部規律に関する規則を制定することができる.

②国会は議員の資格を審査し議員を懲戒することができる.

③議員を除名しようとする場合には在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

④第2項と第3項の処分については裁判所に提訴することができない.

第61条 ①大統領·国務総理·国務委員·行政各部の長·裁判官·中央選挙管理委員会委員·監査委員その他法律で定める公務員がその職務執行において憲法又は法律に違背したときには国会は弾劾の訴追を議決することができる.

②前項の弾劾訴追は国会議員30人以上の発議が必要であり,その議決は在籍議員過半数の賛成を要する. 但し,大統領に対する弾劾訴追は国会議員50人以上の発議と在籍議員3分の2以上の賛成が必要である.

③弾劾訴追の議決を受けた者は弾劾決定があるときまでその権限行使が停止される.

第62条 ①弾劾事件を審判するために弾劾審判委員会を置く.

②弾劾審判委員会は大法院長を委員長として大法官3人と国会議員5人の委員で構成する.但し,大法院長を審判する場合は国会議長が委員長となる.

③弾劾決定には構成員6人以上の賛成を要する.

④弾劾決定は公職から罷免するにとどまる.ただし,これにより民事上又は刑事上の責任が免除されてはならない.

⑤弾劾審判に関する事項は法律で定める.

 

第2節 政府

第1款 大統領

第63条 ①行政権は大統領を首班とする政府に属する.

②大統領は外国に対し国家を代表する.

第64条 ①大統領は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出する.但し,大統領が欠けた場合,残任期間が2年未満であるときには国会において選挙する.

②大統領に選挙されることができる者は国会議員の被選挙権を有し選挙日現在継続して5年以上国内に居住して40歳に達していなければならない.この場合,公務により外国に派遣された期間は国内居住期間とみなす.

③大統領候補になろうとする者は所属政党の推薦を受けねばならない.

④大統領選挙に関する事項は法律で定める.

第65条 ①国民が大統領を選挙する場合,最高得票者が2人以上であるときには国会の在籍議員過半数が出席する公開会議において多数票を得た者を当選者とする.

②大統領候補者が1人であるときにはその得票数が選挙権者総数の3分の1以上でなければ大統領に当選できない.

第66条 ①国会が大統領を選挙する場合は在籍議員3分の2以上の出席と出席議員3分の2以上の賛成を得た者を大統領当選者とする.

②前項の得票者がないときには2次投票を行い,2次投票でも前項の得票者がないときには最高得票者が1人であれば最高得票者と次点者に対し,最高得票者が2人以上であれば最高得票者に対し,決選投票をすることにより多数得票者を大統領当選者とする.

第67条 ①大統領の任期が満了するときには任期満了70日乃至40日前に後任者を選挙する.

②大統領が欠けたときには直ちに後任者を選挙する.大統領当選者が死亡し判決その他の事由にその資格を喪失したときも同様である.

第68条 ①大統領は就任に際し次の宣誓を行う.

“私は国憲を遵守して国家を保衛し国民の自由と福利の増進に努力し大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します.”

②前項の宣誓には国会議員と大法院の裁判官が参席する.

第69条 ①大統領の任期は4年とする.

②大統領が欠けた場合の後任者は前任者の残任期間中在任する.

大統領の継続在任は3期に限る.

第70条 大統領が欠けたり事故によって職務を遂行することができないときには国務総理,法律で定める国務委員の順位でその権限を代行する.

第71条 大統領は条約を締結·批准して外交使節を信任接受又は派遣し宣戦布告と講和を行う.

第72条 ①大統領は憲法と法律の定めるところにより国軍を統帥する.

②国軍の組織と編成は法律で定める.

第73条 ①内憂·外患·天災·地変又は重大な財政·経済上の危機において公共の安寧秩序を維持するために緊急の措置が必要であり国会の集会を待つ余裕がないときに限り,大統領は最小限の必要な財政·経済上の処分を行い,又はこれに関して法律の効力を有する命令を発することができる.

②国家の安危に関係する重大な交戦状態において国家を保衛するために緊急の措置が必要であり国会の集会が不可能なときに限り,大統領は法律の効力を有する命令を発することができる.

③第1項と第2項の命令又は処分は遅滞なく国会に報告しその承認を得なければならない.

④前項の承認を得られないときにはその命令又は処分はそのときから効力を喪失する.但し,その命令により改正又は廃止された法律はその命令が承認を得られないときから当然に効力を回復する.

⑤大統領は第3項と第4項の事由を遅滞なく公布しなければならない.

第74条 大統領は法律において具体的に範囲を定めて委任を受けた事項と法律を執行するために必要な事項に関し大統領令を発することができる.

第75条 ①大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要又は公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる.

②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする.

③戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.

④戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.

⑤国会が戒厳の解除を要求するときには大統領はこれを解除しなければならない.

第76条 大統領は憲法と法律の定めるところにより公務員を任命する.

第77条 ①大統領は法律の定めるところにより赦免·減刑·復権を命ずることができる.

②一般赦免を命じるには国会の同意を得なければならない.

③赦免·減刑·復権に関する事項は法律で定める.

第78条 大統領は法律の定めるところにより勲章その他の栄典を授与する.

第79条 大統領は国会に出席して発言し,又は書簡によって意見を表示することができる.

第80条 大統領の国法上行為は文書により行い,この文書には国務総理と関係国務委員が副署する.軍事に関するものも同様である.

第81条 大統領は国務総理·国務委員·行政各部の長その他法律が定める公私の職を兼ね営業に従事することができない.

第82条 大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない.

 

第2款 国務会議

第83条 ①国務会議は政府の権限に属する重要な政策を審議する.

②国務会議は大統領·国務総理と10人以上20人以下の国務委員で構成する.

第84条 ①国務総理は大統領が任命して,国務委員は国務総理の提請により大統領が任命する.

②軍人は現役を退いた後でなければ国務総理又は国務委員に任命されることができない.

③国務総理は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

第85条 ①大統領は国務会議の議長となる.

②国務総理は大統領を補佐して国務会議の副議長となる.

第86条 次の事項は国務会議の審議を経ねばならない.

1.国政の基本的計画と政府の一般政策

2.宣戦·講和その他重要な対外政策

3.条約案·法律案と大統領令案

4.予算案·決算·国有財産処分の基本計画,国家の負担となる契約その他財政に関する重要事項

5.戒厳と解厳

6.軍事に関する重要事項

7.国会の臨時会集会の要求

8.栄典授与

9.赦免·減刑と復権

10.行政各部間の権限の画定

11.政府内の権限の委任又は配定に関する基本計画

12.国政処理狀況の評価·分析

13.行政各部の重要な政策の樹立と調整

14.政党解散の提訴

15.政府に提出又は回付された政府の政策に関係する請願の審査

16.検察総長·国立大学校総長·大使·各軍参謀総長·海兵隊司令官·公使その他法律で定める公務員と重要な国営企業体管理者の任命

17.その他大統領·国務総理又は国務委員が提出する事項

第87条 ①国家安全保障に関連する対外政策·軍事政策と国内政策の樹立に関し国務会議の審議に先立ち大統領の諮問に応ずるために国家安全保障会議を置く.

②国家安全保障会議は大統領が主宰する.

③国家安全保障会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第3款 行政各部

第88条 行政各部の長は国務委員中から国務総理の提請により大統領が任命する.

第89条 国務総理は行政に関し大統領の命を受け行政各部を統轄する.

第90条 国務総理又は行政各部の長は所管事務に関し法律又は大統領令の委任又は職権に総理令又は部令を発することができる.

第91条 行政各部の設置·組織と職務範囲は法律で定める.

 

第4款 監査院

第92条 国家の歳入·歳出の決算,国家及び法律で定める団体の会計検査と行政機関及び公務員の職務に関する監察を行うために大統領所属下に監査院を置く.

第93条 ①監査院は院長を含む5人以上11人以下の監査委員で構成する.

②院長は国会の同意を得て大統領が任命し,その任期は4年とし1回に限り連任されることができる.

③院長が欠けた場合,任命された後任者の任期は前任者の残任期間とする.

④監査委員は院長の提請により大統領が任命し,その任期は4年とし法律が定めるところにより連任されることができる.

第94条 監査院は歳入·歳出の決算を毎年検査し大統領と次年度国会にその結果を報告しなければならない.

第95条 監査院の組織·職務範囲·監査委員の資格·監査対象公務員の範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第3節 裁判所

第96条 ①司法権は裁判官に組織された裁判所に属する.

②裁判所は最高裁判所である大法院と各級裁判所により組織される.

③裁判官の資格は法律で定める.

第97条 ①大法院に部を置くことができる.

②大法院の裁判官の数は16人以下とする.

③大法院と各級裁判所の組織は法律で定める.

第98条 裁判官はこの憲法と法律によりその良心に従い独立して審判する.

第99条 ①大法院長である裁判官は裁判官推薦会議の提請により大統領が国会の同意を得て任命する.大統領は裁判官推薦会議の提請があれば国会に同意を要請して,国会の同意を得た場合には任命しなければならない.

②大法官である裁判官は大法院長が裁判官推薦会議の同意を得て提請して大統領が任命する.この場合,提請があれば大統領はこれを任命しなければならない.

③大法院長と大法官ではない裁判官は大法官会議の議決を経て大法院長が任命する.

④裁判官推薦会議は裁判官4人,弁護士2人,大統領が指名する法律学教授1人,法務部長官と検察総長で構成する.

⑤裁判官推薦会議に関し必要な事項は法律で定める.

第100条 ①大法院長である裁判官の任期は6年とし連任されることができない.

②裁判官の任期は10年とし法律の定めるところにより連任されることができる.

③裁判官の停年は65歳とする.

第101条 ①裁判官は弾劾又は刑罰によることなく罷免されず,懲戒処分によることなく停職·減俸又は不利な処分を受けない.

②裁判官が重大な心身上の障害により職務を遂行することができないときには法律の定めるところにより退職させることができる.

第102条 ①法律が憲法に違反するか否かが裁判の前提とされたときには大法院はこれを最終的に審査する権限を有する.

②命令·規則·処分が憲法又は法律に違反するか否かが裁判の前提とされたときには大法院はこれを最終的に審査する権限を有する.

第103条 政党解散を命ずる判決は大法院裁判官定数の5分の3以上の賛成を得なければならない.

第104条 大法院は法律に抵触しない範囲内において訴訟に関する手続,裁判所の内部規律と事務処理に関する規則を制定することができる.

第105条 裁判の審理と判決は公開する.但し,審理は安寧秩序を妨害し善良な風俗を害する虞があるときには裁判所の決定によりしないことができる.

第106条 ①軍事裁判を管轄するために特別裁判所として軍法会議を置くことができる.

②軍法会議の上告審は大法院において管轄する.

③非常戒厳下の軍事裁判は軍人·軍属の犯罪や軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合に限り単審とすることができる.

 

第4節 選挙管理

第107条 ①選挙管理の公正を期するために選挙管理委員会を置く.

②中央選挙管理委員会は大統領が任命する2人,国会において選出する2人と大法官会議において選出する5人の委員で構成する.委員長は委員中から互選する.

③委員の任期は5年とし連任されることができる.

④委員は政党に加入し政治に関与することができない.

⑤委員は弾劾又は刑罰によることなく罷免されない.

⑥中央選挙管理委員会は法令の範囲内において選挙の管理に関する規則を制定することができる.

⑦各級選挙管理委員会の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第108条 ①選挙運動は各級選挙管理委員会の管理下に法律で定める範囲内において行われ均等な機会が保障されねばならない.

②選挙に関する経費は法律が定める場合を除いては政党又は候補者に負坦させることができない.

 

第5節 地方自治

第109条 ①地方自治団体は住民の福利に関する事務を処理して財産を管理し法令の範囲内において自治に関する規定を制定することができる.

②地方自治団体の種類は法律で定める.

第110条 ①地方自治団体には議会を置く.

②地方議会の組織·権限·議員選挙と地方自治団体の長の選任方法その他地方自治団体の組織と運営に関する事項は法律で定める.

 

第4章 経済

第111条 ①大韓民国の経済秩序は個人の経済上の自由と創意を尊重することを基本とする.

②国家は全ての国民に生活の基本的需要を充足させる社会正義の実現と均衡ある国民経済の発展のため必要な範囲内において経済に関する規制と調整を行う.

第112条 鉱物その他重要な地下資源·水産資源·水力と経済上利用することのできる自然力は法律の定めるところにより一定の期間その採取·開発又は利用を特許することができる.

第113条 農地の小作制度は法律の定めるところにより禁止される.

第114条 国家は農地と山地の効率的利用のため法律の定めるところによりこれに関する必要な制限と義務を課することができる.

第115条 国家は農民·漁民と中小企業者の自助を基盤にする協同組合を育成してその政治的中立性を保障する.

第116条 国家は対外貿易を育成しこれを規制·調整することができる.

第117条 国防上又は国民経済上緊急の必要のために法律で定める場合を除いては,私営企業を国有又は公有に移転しその経営を統制又は管理することができない.

第118条 ①国民経済の発展とこのための科学振興に関連する重要な政策樹立に関し国務会議の審議に先立ち大統領の諮問に応ずるために経済·科学審議会議を置く.

②経済·科学審議会議は大統領が主宰する.

③経済·科学審議会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第5章 憲法改正

第119条 ①憲法改正の提案は国会の在籍議員3分の1以上又は国会議員選挙権者50万人以上の賛成により行う.

②提案された憲法改正案は大統領が30日以上の期間これを公告しなければならない.

第120条 ①国会は憲法改正案が公告された日から60日以内にこれを議決しなければならない.

②憲法改正案に対する国会の議決は在籍議員3分の2以上の賛成を得なければならない.

第121条 ①憲法改正案は国会が議決した後60日以内に国民投票に付して国会議員選挙権者過半数の投票と投票者過半数の賛成を得なければならない.

②憲法改正案が前項の賛成を得たときには憲法改正は確定され大統領は直ちにこれを公布しなければならない.

 

付則<第6号,1962.12.26>

第1条 ①この憲法はこの憲法による国会が初めて集会する日から施行する.但し,この憲法を施行するために必要な法律の制定とこの憲法による大統領·国会議員の選挙その他準備はこの憲法施行前にすることができる.

②国家再建非常措置法はこの憲法の施行と同時にその効力を喪失する.

第2条 この憲法による最初の大統領と国会議員の選挙及び最初の国会の集会はこの憲法の公布日から1年以内にする.これにより選挙された大統領と国会議員の任期は最初の国会の集会日から開始され1967年6月30日に終了する.

第3条 国家再建非常措置法に依拠する法令と条約はこの憲法に違背しない限りその効力を持続する.

第4条 ①特殊犯罪処罰に関する特別法·不正選挙関連者処罰法·政治活動浄化法及び不正蓄財処理法とこれに関連する法律はその効力を持続しこれに対し異議を申し立てることができない.

②政治活動浄化法及び不正蓄財管理法とこれに関連する法律はこれを改廃することができない.

第5条 国家再建非常措置法又はこれに依拠する法令により行われた裁判·予算又は処分はその効力を持続しこの憲法を理由に提訴することができない.

第6条 この憲法施行当時の公務員と政府が任命する企業体の任員はこの憲法により任命されたものとみなす.但し,この憲法により選任方法が変更された公務員はこの憲法により後任者が選任されるときまでその職務を行う.

第7条 ①この憲法施行当時にこの憲法により新たに設置される機関の権限に属する職務を行っている機関はこの憲法により新たな機関が設置されるときまで継続してその職務を行う.

②この憲法により新たに設置とされる機関はこの憲法施行後1年以内に構成されねばならない.

③この憲法による最初の地方議会の構成時期については法律で定める.

第8条 国土収復後の国会議員の数は別に法律で定める.

第9条 この憲法施行当時の大統領令·国務院令と閣令はこの憲法による大統領令とみなす.

 

付則<第7号,1969.10.21>

この憲法は公布した日から施行する.

 

このページのトップへ
解説ページへ
ホームへ