韓国憲法第8号(第四共和国憲法又は「維新憲法」)

(太字はこの憲法で改正又は追加された部分。斜体は次の改正で削除された部分)


大韓民国憲法[全文改正1972.12.27憲法第8号]

前文

悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は3·1運動の崇高な独立精神と4·19義挙及び5·16革命の理念を継承して祖国の平和的統一の歴史的使命に立脚し自由民主的基本秩序をさらに強固にする新たな民主共和国を建設するにあたり,政治·経済·社会·文化の全ての領域において各人の機会を均等にして能力を最高度に発揮させ責任と義務を完遂させ,内には国民生活の均等な向上を期して外には恒久的な世界平和に貢献することにより我らと我らの子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを誓って,1948年7月12日に制定され1962年12月26日に改正された憲法をここに国民投票により改正する.

 

第1章 総綱

第1条 ①大韓民国は民主共和国である.

②大韓民国の主権は国民にあり,国民はその代表者や国民投票により主権を行使する.

第2条 大韓民国の国民の要件は法律で定める.

第3条 大韓民国の領土は韓半島と付属島嶼とする.

第4条 大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略的戦争を否認する.

第5条 ①この憲法により締結·公布された条約と一般的に承認された国際法規は国内法と同等の効力を有する.

②外国人については国際法と条約に定めるところによりその地位を保障する.

第6条 ①公務員は国民全体に対する奉仕者であり,国民に対し責任を負う.

②公務員の身分と政治的中立性は法律の定めるところにより保障される.

第7条 ①政党の設立は自由であり,複数政党制は保障される.

②政党はその組織と活動が民主的でなければならず,国民の政治的意思形成に参与するために必要な組織を備えなければならない.

③政党は法律の定めるところにより国家の保護を受ける.但し,政党の目的又は活動が民主的基本秩序に違背したり国家の存立に危害になるときには政府は憲法委員会にその解散を提訴することができ,政党は憲法委員会の決定により解散される.

 

第2章 国民の権利と義務

第8条 全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し,このための国家は国民の基本的人権を最大限に保障する義務を負う.

第9条 ①全ての国民は法の下に平等である.何人も性別·宗教又は社会的身分により政治的·経済的·社会的·文化的生活の全ての領域において差別を受けない.

②社会的特殊階級の制度は認められず,如何なる形態においてもこれを創設することができない.

③勲章等の栄典はこれを受ける者にのみ効力を有し,如何なる特権もこれに付随しない.

第10条 ①全ての国民は身体の自由を有する.何人も法律によることなく逮捕·拘禁·押収·捜索·審問·処罰·強制労役と保安処分を受けない.

②全ての国民は拷問を受けず,刑事上自己に不利な陳述を強要されない.

③逮捕·拘禁·押収·捜索には検事の要求により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.但し,現行犯人である場合と罪を犯して逃避又は証拠湮滅の虞があるときには事後に令状を要求することができる.

④何人も逮捕·拘禁を受けるときには直ちに弁護人の助力を受ける権利を有し,法律が定める場合に,刑事被告人が自ら弁護人を求めることができないときには国家が弁護人を付する.

第11条 ①全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為について訴追されず,同一の犯罪に対し重ねて処罰されない.

②全ての国民は遡及立法により参政権の制限又は財産権の剝奪を受けない.

第12条 全ての国民は法律によることなく居住·移転の自由を制限されない.

第13条 全ての国民は法律によることなく職業選択の自由を制限されない.

第14条 全ての国民は法律によることなく住居の自由を侵害されない.住居に対する押収や捜索には検事の要求により裁判官が発付する令状を提示しなければならない.

第15条 全ての国民は法律によることなく通信の秘密を侵害されない.

第16条 ①全ての国民は宗教の自由を有する.

②国教は認められず,宗教と政治は分離される.

第17条 全ての国民は良心の自由を有する.

第18条 全ての国民は法律によることなく言論·出版·集会·結社の自由を制限されない.

第19条 ①全ての国民は学問と芸術の自由を有する.

②著作者·発明家と芸術家の権利は法律により保護する.

第20条 ①全ての国民の財産権は保障される.その内容と限界は法律で定める.

②財産権の行使は公共福利に適合するようにしなければならない.

③公共の必要による財産権の収用·使用又は制限及びその補償の基準と方法は法律で定める.

第21条 全ての国民は20歳に達すると法律の定めるところにより選挙権を有する.

第22条 全ての国民は法律の定めるところにより公務坦任権を有する.

第23条 ①全ての国民は法律の定めるところにより国家機関に文書で請願する権利を有する.

②国家は請願に対し審査する義務を負う.

第24条 ①全ての国民は憲法と法律で定める裁判官により法律による裁判を受ける権利を有する.

②軍人又は軍属ではない国民は大韓民国の領域内においては軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合及び非常戒厳がされ,又は大統領が裁判所の権限に関し緊急措置を行った場合を除いては軍法会議の裁判を受けない.

③全ての国民は迅速な裁判を受ける権利を有する.刑事被告人は相当な理由がない限り遅滞なく公開裁判を受ける権利を有する.

第25条 刑事被告人として拘禁された者が無罪判決を受けたときには法律の定めるところにより国家に補償を請求することができる.

第26条 ①公務員の職務上不法行為により損害を受けた国民は法律の定めるところにより国家又は公共団体に賠償を請求することができる.ただし,公務員自身の責任は免除されない.

②軍人·軍属·警察公務員その他法律で定める者が戦闘·訓練等職務執行と関連し受けた損害については法律が定める補償以外に国家や公共団体に公務員の職務上不法行為にによる賠償は請求することができない.

第27条 ①全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する.

②全ての国民はその保護する子女に少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う.

③義務教育は無償とする.

④教育の自主性と政治的中立性は保障されねばならない.

⑤教育制度とその運営に関する基本的な事項は法律で定める.

第28条 ①全ての国民は勤労の権利を有する.国家は社会的·経済的方法により勤労者の雇用の増進に努力しなければならない.

②全ての国民は勤労の義務を負う.国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義原則に従い法律で定める.

③勤労条件の基準は法律で定める.

④女子と少年の勤労は特別な保護を受ける.

第29条 ①勤労者の団結権·団体交涉権及び団体行動権は法律が定める範囲内において保障される.

②公務員である勤労者は法律に認められた者を除いては団結権·団体交涉権又は団体行動権を有しない.

公務員と国家·地方自治団体·国営企業体·公益事業体又は国民経済に重大な影響をを及ぼす事業体に従事する勤労者の団体行動権は法律の定めるところによりこれを制限し認めないことができる.

第30条 ①全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する.

②国家は社会保障の増進に努力しなければならない.

③生活能力がない国民は法律の定めるところにより国家の保護を受ける.

第31条 全ての国民は婚姻の純潔と保健に関し国家の保護を受ける.

第32条 ①国民の自由と権利は憲法に列挙されないとの理由により軽視されない.

国民の自由と権利を制限する法律の制定は国家安全保障·秩序維持又は公共福利のため必要な場合に限る.

第33条 全ての国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う.

第34条 全ての国民は法律の定めるところにより国防の義務を負う.

 

第3章 統一主体国民会議

第35条 統一主体国民会議は祖国の平和的統一を推進するための全国民の総意による国民的組織体として祖国統一の神聖な使命を有する国民の主権的受任機関である.

第36条 ①統一主体国民会議は国民の直接選挙により選出された代議員で構成する.

②統一主体国民会議代議員の数は2,000人以上5,000人以下の範囲内において法律で定める.

③大統領は統一主体国民会議の議長となる.

④統一主体国民会議代議員の選挙に関する事項は法律で定める.

第37条 ①統一主体国民会議代議員に選挙されることができる者は国会議員の被選挙権を有し選挙日現在30歳に達する者であって祖国の平和的統一のため国民主権を誠実に行使することのできる者でなければならない.

②統一主体国民会議代議員に選挙されることができる者の資格については法律で定める.

③統一主体国民会議代議員は政党に加入することができず,国会議員と法律が定める公職を兼ねることができない.

④統一主体国民会議代議員の任期は6年とする.

第38条 ①大統領は統一に関する重要政策を決定し変更することにおいて,国論統一のため必要であると認めるときには統一主体国民会議の審議に付することができる.

②第1項の場合,統一主体国民会議において在籍代議員過半数の賛成を得た統一政策は国民の総意とみなす.

第39条 ①大統領は統一主体国民会議において討論なく無記名投票で選挙する.

②統一主体国民会議において在籍代議員過半数の賛成を得た者を大統領当選者とする.

③第2項の得票者がないときには2次投票を行い,2次投票でも第2項の得票者がないときには最高得票者が1人であれば最高得票者と次点者に対し,最高得票者が2人以上であれば最高得票者に対し,決選投票をすることにより多数得票者を大統領当選者とする.

第40条 ①統一主体国民会議は国会議員定数の3分の1に該当する数の国会議員を選挙する.

②第1項の国会議員の候補者は大統領が一括推薦し,候補者全体に対する賛反を投票に付して在籍代議員過半数の出席と出席代議員過半数の賛成で当選を決定する.

③第2項の賛成を得られないときには大統領は当選の決定があるときまで継続して候補者の全部又は一部を変更する候補者名簿を再度作成し統一主体国民会議に提出してその選挙を要求しなければならない.

④大統領が第2項の候補者を推薦する場合,,統一主体国民会議において選挙する国会議員定数の5分の1の範囲内において順位を定める予備候補者名簿を提出し

第2項の議決を得た場合には,予備候補者は名簿に記載された順位に従い欠けた統一主体国民会議選出国会議員の職を承継する.

第41条 ①統一主体国民会議は国会が発議·議決する憲法改正案を最終的に議決·確定する.

②第1項の議決は在籍代議員過半数の賛成を得なければならない.

第42条 統一主体国民会議の組織·運営その他必要な事項は法律で定める.

 

第4章 大統領

第43条 ①大統領は国家の元首であり,外国に対し国家を代表する.

大統領は国家の独立·領土の保全·国家の継続性と憲法を守護する責務を負う.

③大統領は祖国の平和的統一のため誠実な義務を負う.

④行政権は大統領を首班とする政府に属する.

第44条 大統領に選挙されることができる者は国会議員の被選挙権を有し選挙日現在継続して5年以上国内に居住して40歳に達していなければならない.この場合,公務により外国に派遣された期間は国内居住期間とみなす.

第45条 ①大統領の任期が満了するときには統一主体国民会議は遅くとも任期満了30日前に後任者を選挙する.

②大統領が欠けたときには統一主体国民会議は3月以内に後任者を選挙する.但し,残任期間が1年未満であるときには後任者を選挙しない.

③大統領が欠けた場合の後任者は前任者の残任期間中在任する.

第46条 大統領は就任に際し次の宣誓を行う.

“私は国憲を遵守して国家を保衛し国民の自由と福利の増進に努力し祖国の平和的統一のため大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します.”

第47条 大統領の任期は6年とする.

第48条 大統領が欠けたり事故によって職務を遂行することができないときには国務総理,法律で定める国務委員の順位でその権限を代行する.

第49条 大統領は必要であると認めるときには国家の重要な政策を国民投票に付することができる.

第50条 大統領は条約を締結·批准して外交使節を信任·接受又は派遣し宣戦布告と講和を行う.

第51条 ①大統領は憲法と法律の定めるところにより国軍を統帥する.

②国軍の組織と編成は法律で定める.

第52条 大統領は法律において具体的に範囲を定めて委任を受けた事項と法律を執行するために必要な事項に関し大統領令を発することができる.

第53条 ①大統領は天災·地変又は重大な財政·経済上の危機に処し,国家の安全保障又は公共の安寧秩序が重大な威脅を受け,又は受ける憂慮があり,迅速な措置をする必要があると判断するときには内政·外交·国防·経済·財政·司法等国政全般にわたり必要な緊急措置をすることができる.

②大統領は第1項の場合,必要であると認めるときにはこの憲法に規定されている国民の自由と権利を暫定的に停止する緊急措置をすることができ,政府や裁判所の権限に関し緊急措置をすることができる.

③第1項と第2項の緊急措置を行ったときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.

第1項と第2項の緊急措置は司法的審査の対象とならない.

緊急措置の原因が消滅するときには大統領は遅滞なくこれを解除しなければならない.

⑥国会は在籍議員過半数の賛成で緊急措置の解除を大統領に建議することができ,大統領は特別な事由がない限りこれに応じなければならない.

第54条 ①大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要又は公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる.

②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする.

③非常戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.

④戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.

⑤国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求するときには大統領はこれを解除しなければならない.

第55条 大統領は憲法と法律の定めるところにより公務員を任命する.

第56条 ①大統領は法律の定めるところにより赦免·減刑·復権を命ずることができる.

②一般赦免を命じるには国会の同意を得なければならない.

③赦免·減刑·復権に関する事項は法律で定める.

第57条 大統領は法律の定めるところにより勲章その他の栄典を授与する.

第58条 大統領は国会に出席して発言し,又は書簡によって意見を表示することができる.

第59条 ①大統領は国会を解散することができる.

②国会が解散された場合国会議員総選挙は解散された日から30日以後60日以前に実施する.

第60条 大統領の国法上行為は文書により行い,この文書には国務総理と関係国務委員が副署する.軍事に関するものも同様である.

第61条 大統領は国務総理·国務委員·行政各部の長その他法律が定める公私の職を兼ねることができない.

第62条 大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない.

 

第5章 政府

第1節 国務総理と国務委員

第63条 ①国務総理は国会の同意を得て大統領が任命する.

②国務総理は大統領を補佐して行政に関し大統領の命を受け行政各部を統轄する.

③軍人は現役を退いた後でなければ国務総理に任命されることができない.

第64条 ①国務委員は国務総理の提請により大統領が任命する.

国務委員は国政に関し大統領を補佐し国務会議の構成員として国政を審議する.

③国務総理は国務委員の解任を大統領に建議することができる.

④軍人は現役を退いた後でなければ国務委員に任命されることができない.

 

第2節 国務会議

第65条 ①国務会議は政府の権限に属する重要な政策を審議する.

②国務会議は大統領·国務総理と15人以上25人以下の国務委員で構成する.

③大統領は国務会議の議長となり,国務総理は副議長となる.

第66条 次の事項は国務会議の審議を経ねばならない.

1.国政の基本的計画と政府の一般政策

2.宣戦·講和その他重要な対外政策

3.憲法改正案·国民投票案·条約案·法律案と大統領令案

4.予算案·決算·国有財産処分の基本計画·国家の負担となる契約その他財政に関する重要事項

5.大統領の緊急措置又は戒厳とその解除

6.軍事に関する重要事項

7.国会の解散

8.国会の臨時会集会の要求

9.栄典授与

10.赦免·減刑と復権

11.行政各部間の権限の画定

12.政府内の権限の委任又は配定に関する基本計画

13.国政処理狀況の評価·分析

14.行政各部の重要な政策の樹立と調整

15.政党解散の提訴

16.政府に提出又は回付された政府の政策に関係する請願の審査

17.検察総長·国立大学校総長·大使·各軍参謀総長·海兵隊司令官その他法律で定める公務員と国営企業体管理者の任命

18.その他大統領·国務総理又は国務委員が提出する事項

第67条 ①国家安全保障に関連する対外政策·軍事政策と国内政策の樹立に関し国務会議の審議に先立ち大統領の諮問に応ずるために国家安全保障会議を置く.

②国家安全保障会議は大統領が主宰する.

③国家安全保障会議の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第3節 行政各部

第68条 行政各部の長は国務委員中から国務総理の提請により大統領が任命する.

第69条 国務総理又は行政各部の長は所管事務に関し法律又は大統領令の委任又は職権に総理令又は部令を発することができる.

第70条 行政各部の設置·組織と職務範囲は法律で定める.

 

第4節 監査院

第71条 国家の歳入·歳出の決算,国家及び法律で定める団体の会計検査と行政機関及び公務員の職務に関する監察を行うために大統領所属下に監査院を置く.

第72条 ①監査院は院長を含む5人以上11人以下の監査委員で構成する.

②院長は国会の同意を得て大統領が任命し,その任期は4年とする.

③院長が欠けた場合,任命された後任者の任期は前任者の残任期間とする.

④監査委員は院長の提請により大統領が任命し,その任期は4年とする.

第73条 監査院は歳入·歳出の決算を毎年検査し大統領と次年度国会にその結果を報告しなければならない.

第74条 監査院の組織·職務範囲·監査委員の資格·監査対象公務員の範囲その他必要な事項は法律で定める.

 

第6章 国会

第75条 立法権は国会に属する.

第76条 ①国会は国民の普通·平等·直接·秘密選挙により選出された議員及び統一主体国民会議が選挙する議員で構成する.

国会議員の数は法律で定める.

③国会議員の選挙に関する事項は法律で定める.

第77条 国会議員の任期は6年とするが,統一主体国民会議が選挙する国会議員の任期は3年とする.

第78条 国会議員は法律が定める公私の職を兼ねることができない.

第79条 ①国会議員は現行犯人である場合を除いては会期中国会の同意なく逮捕又は拘禁されない.

②国会議員が会期前に逮捕又は拘禁されたときには現行犯人でない限り国会の要求があれば会期中釈放される.

第80条 国会議員は国会において職務上行う発言と表決に関し国会外において責任を負わない.

第81条 国会議員はその地位と特権を濫用してはならない.

第82条 ①国会の定期会は法律の定めるところにより毎年1回集会され,国会の臨時会は大統領又は国会在籍議員3分の1以上の要求により集会される.

②定期会の会期は90日を,臨時会の会期は30日を超過することができない.

国会は定期会·臨時会を合せて年150日を超過し開会することができない.但し,大統領が集会を要求する臨時会の日数はこれに算入しない.

大統領が臨時会の集会を要求するときには期間と集会要求の理由を明示しなければならない.

⑤大統領の要求により集会された臨時会においては政府が提出する議案に限り処理し,国会は大統領が集会要求時に定める期間に限り開会する.

第83条 国会は議長1人と副議長2人を選挙する.

第84条 国会は憲法又は法律に特別な規定がない限りその在籍議員過半数の出席と出席議員過半数の賛成で議決する.可否同数であるときには否決されたものとみなす.

第85条 ①国会の会議は公開する.但し,出席議員過半数の賛成があり,又は議長が国家の安全保障のため必要であると認めるときには公開しないことができる.

②公開しないものとする会議の内容は公表されてはならない.

第86条 国会に提出された法律案その他の議案は会期中に議決できなかったことを理由に廃棄されない.但し,統一主体国民会議において選挙されない国会議員の任期が満了したり国会が解散されたときには例外とする.

第87条 国会議員と政府は法律案を提出することができる.

第88条 ①国会において議決された法律案は政府に移送され15日以内に大統領が公布する.

②法律案に異議があるときには大統領は第1項の期間内に異議書を付して国会に還付してその再議を要求することができる.国会の閉会中にも同様である.

③大統領は法律案の一部に対し又は法律案を修正し再議を要求することができない.

④再議の要求があるときには国会は再議に付して在籍議員過半数の出席と出席議員3分の2以上の賛成で前回と同じ議決をした場合にはその法律案は法律として確定される.

⑤大統領が第1項の期間内に公布や再議の要求をしないときにもその法律案は法律として確定される.

⑥大統領は第4項と第5項の規定により確定された法律を遅滞なく公布しなければならない.第5項により法律が確定された後又は第4項による確定法律が政府に移送された後5日以内に大統領が公布しないときには国会議長がこれを公布する.

⑦法律は特別な規定がない限り公布した日から20日を経過することにより効力を発生する.

第89条 ①国会は国家の予算案を審議·確定する.

②政府は会計年度毎に予算案を編成し会計年度開始90日前まで国会に提出して,国会は会計年度開始30日前までこれを議決しなければならない.

第2項の期間内に予算案を議決できないときには政府は国会において予算案が議決されるときまで次の各号の経費を歳入の範囲内において前年度予算に準じ支出することができる.

1.公務員の報酬と事務処理に必要な基本経費

2.憲法又は法律により設置された機関又は施設の維持費と法律上支出の義務がある経費

3.すでに予算上承認された継続費

第90条 ①一会計年度を超えて継続して支出する必要があるときには政府は年限を定めて継続費として国会の議決を得なければならない.

予測することができない予算外の支出又は予算超過支出に充当するための予備費は予め国会の議決を得なければならない.予備費の支出は次期国会の承認を得なければならない.

第91条 予算成立後に生じた事由によって予算に変更を加える必要があるときには政府は追加更正予算案を編成し国会に提出することができる.

第92条 国会は政府の同意なく政府が提出する支出予算各項の金額を増加し新たな費目を設置することができない.

第93条 国債を募集し予算外に国家の負担となる契約を締結しようとするときには政府は予め国会の議決を得なければならない.

第94条 租税の種目と税率は法律で定める.

第95条 ①国会は相互援助又は安全保障に関する条約,国際組織に関する条約,通商条約,漁業条約,講和条約,国家や国民に財政的負坦を負わせる条約,外国軍隊の地位に関する条約又は立法事項に関する条約の締結·批准に対する同意権を有する.

②宣戦布告,国軍の外国への派遣又は外国軍隊の大韓民国領域内においての駐留についても国会は同意権を有する.

第96条 ①国務総理·国務委員又は政府委員は国会やその委員会に出席し国政処理狀況を報告し意見を陳述して質問に応答することができる.

②国会やその委員会の要求があるときには国務総理·国務委員又は政府委員は出席·答弁せねばならず,国務総理又は国務委員が出席要求を受けたときには国務委員又は政府委員に出席·答弁させることができる.

第97条 ①国会は国務総理又は国務委員に対し個別的にその解任を議決することができる.

②第1項の解任議決は国会在籍議員3分の1以上の発議により国会在籍議員過半数の賛成を要する.

第2項の議決があるときには大統領は国務総理又は当該国務委員を解任しなければならない.但し,国務総理に対する解任議決があるときには大統領は国務総理と国務委員全員を解任しなければならない.

第98条 ①国会は法律に抵触しない範囲内において議事と内部規律に関する規則を制定することができる.

②国会は議員の資格を審査し議員を懲戒することができる.

③議員を除名しようとする場合には国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

④第2項と第3項の処分については裁判所に提訴することができない.

第99条 ①大統領·国務総理·国務委員·行政各部の長·憲法委員会委員·裁判官·中央選挙管理委員会委員·監査委員その他法律で定める公務員がその職務執行において憲法又は法律に違背したときには国会は弾劾の訴追を議決することができる.

②第1項の弾劾訴追は国会在籍議員3分の1以上の発議が必要であり,その議決は国会在籍議員過半数の賛成を要するが,大統領に対する弾劾訴追は国会在籍議員過半数の発議と国会在籍議員3分の2以上の賛成を要する.

③弾劾訴追の議決を受けた者は弾劾決定があるときまでその権限行使が停止される.

④弾劾決定は公職から罷免するにとどまる.ただし,これにより民事上又は刑事上の責任が免除されてはならない.

 

第7章 裁判所

第100条 ①司法権は裁判官で構成された裁判所に属する.

②裁判所は最高裁判所である大法院と各級裁判所により組織される.

③裁判官の資格は法律で定める.

第101条 ①大法院に部を置くことができる.

大法院の裁判官の数は16人以下とする.

③大法院と各級裁判所の組織は法律で定める.

第102条 裁判官はこの憲法と法律によりその良心に従い独立して審判する.

第103条 大法院長である裁判官は大統領が国会の同意を得て任命する.

②大法院長ではない裁判官は大法院長の提請により大統領が任命する.

大法院長である裁判官の任期は6年とする.

④大法院長ではない裁判官の任期は10年とする.

⑤裁判官は法律の定めるところにより連任されることができる.

⑥裁判官は法律が定める年令に達するときには退職する.

第104条 ①裁判官は弾劾·刑罰又は懲戒処分によることなく罷免·停職·減俸又は不利な処分を受けない.

②裁判官が重大な心身上の障害により職務を遂行することができないときには法律の定めるところにより退職させることができる.

第105条 ①法律が憲法に違反するか否かが裁判の前提とされたときには裁判所は憲法委員会に提請しその決定により裁判する.

②命令·規則·処分が憲法又は法律に違反するか否かが裁判の前提とされたときには大法院はこれを最終的に審査する権限を有する.

第106条 大法院は法律に抵触しない範囲内において訴訟に関する手続,裁判所の内部規律と事務処理に関する規則を制定することができる.

第107条 裁判の審理と判決は公開する.但し,審理は国家の安全保障又は安寧秩序を妨害し善良な風俗を害する虞があるときには裁判所の決定によりしないことができる.

第108条 ①軍事裁判を管轄するために特別裁判所として軍法会議を置くことができる.

②軍法会議の上告審は大法院において管轄する.

③非常戒厳下の軍事裁判は軍人·軍属の犯罪や軍事に関する間諜罪の場合と,哨兵·哨所·有害飲食物供給·捕虜に関する罪のうち法律で定める場合に限り単審とすることができる.

 

第8章 憲法委員会

第109条 ①憲法委員会は次の事項を審判する.

1.裁判所の提請による法律の違憲審査

2.弾劾

3.政党の解散

②憲法委員会は9人の委員で構成し,大統領が任命する.

③第2項の委員中3人は国会において選出する者を,3人は大法院長が指名する者を任命する.

④憲法委員会の委員長は委員中において大統領が任命する.

第110条 ①憲法委員会委員の任期は6年とする.

②憲法委員会委員は政党に加入し政治に関与することができない.

③憲法委員会委員は弾劾又は刑罰によることなく罷免されない.

④憲法委員会委員の資格は法律で定める.

第111条 ①憲法委員会において法律の違憲決定,弾劾の決定又は政党解散の決定をするときには委員6人以上の賛成を要する.

②憲法委員会の組織と運営その他必要な事項は法律で定める.

 

第9章 選挙管理

第112条 ①選挙と国民投票の公正な管理及び政党に関する事務を処理させるために選挙管理委員会を置く.

②中央選挙管理委員会は9人の委員で構成し,大統領が任命する.

第2項の委員中3人は国会において選出する者を,3人は大法院長が指名する者を任命する.

④中央選挙管理委員会の委員長は委員中において大統領が任命する.

⑤委員の任期は5年とする.

⑥委員は政党に加入し政治に関与することができない.

⑦委員は弾劾又は刑罰によることなく罷免されない.

⑧中央選挙管理委員会は法令の範囲内において選挙管理·国民投票管理又は政党事務に関する規則を制定することができる.

⑨各級選挙管理委員会の組織·職務範囲その他必要な事項は法律で定める.

第113条 ①選挙運動は各級選挙管理委員会の管理下に法律で定める範囲内において行われ均等な機会が保障されねばならない.

②選挙に関する経費は法律が定める場合を除いては政党又は候補者に負坦させることができない.

 

第10章 地方自治

第114条 ①地方自治団体は住民の福利に関する事務を処理して財産を管理し法令の範囲内において自治に関する規定を制定することができる.

②地方自治団体の種類は法律で定める.

第115条 ①地方自治団体には議会を置く.

②地方議会の組織·権限·議員選挙と地方自治団体の長の選任方法その他地方自治団体の組織と運営に関する事項は法律で定める.

 

第11章 経済

第116条 ①大韓民国の経済秩序は個人の経済上の自由と創意を尊重することを基本とする.

②国家は全ての国民に生活の基本的需要を充足させる社会正義の実現と均衡ある国民経済の発展のため必要な範囲内において経済に関する規制と調整を行う.

第117条 ①鉱物その他重要な地下資源,水産資源,水力と経済上利用することのできる自然力は法律の定めるところにより一定の期間その採取·開発又は利用を特許することができる.

②国土と資源は国家の保護を受け,国家はその均衡ある開発と利用のため計画を樹立する.

第118条 農地の小作制度は法律の定めるところにより禁止される.

第119条 国家は農地と山地その他国土の効率的な利用·開発と保全のため法律の定めるところによりこれに関する必要な制限と義務を課することができる.

第120条 ①国家は農民·漁民の自助を基盤にする農漁村開発のため計画を樹立し,地域社会の均衡ある発展を期する.

②農民·漁民と中小企業者の自助組織は育成される.

第121条 国家は対外貿易を育成しこれを規制·調整することができる.

第122条 国防上又は国民経済上の緊急の必要のために法律で定める場合を除いては,私営企業を国有又は公有に移転しその経営を統制又は管理することができない.

第123条 ①国民経済の発展とこのための科学技術は育成·振興されねばならない.

②大統領は経済·科学技術の育成·振興のため必要な諮問機構を置くことができる.

 

第12章 憲法改正

第124条 ①憲法の改正は大統領又は国会在籍議員過半数の発議により提案される.

②大統領が提案する憲法改正案は国民投票により確定され,国会議員が提案する憲法改正案は国会の議決を経て統一主体国民会議の議決により確定される.

③憲法改正が確定された場合には大統領は直ちにこれを公布しなければならない.

第125条 ①国会に提案された憲法改正案は20日以上の期間これを公告せねばならず,公告された日から60日以内に議決しなければならない.

②憲法改正案に対する国会の議決は在籍議員3分の2以上の賛成を得なければならない.

③第2項の議決を経た憲法改正案は遅滞なく統一主体国民会議に回付されその議決により憲法改正が確定される.統一主体国民会議に回付された憲法改正案は回付された日から20日以内に議決されねばならない.

第126条 ①大統領が提案する憲法改正案は20日以上の期間これを公告せねばならず,公告された日から60日以内に国民投票に付さねばならない.

②国民投票に付された憲法改正案は国会議員選挙権者過半数の投票と投票者過半数の賛成を得て憲法改正が確定される.

 

付則<第8号,1972.12.27>

第1条 この憲法は公布した日から施行する.但し,この憲法を施行するために必要な法律の制定とこの憲法による大統領·統一主体国民会議代議員及び国会議員の選挙とその他この憲法施行に関する準備はこの憲法施行前にすることができる.

第2条 ①この憲法により統一主体国民会議において選挙された最初の大統領の任期はこの憲法施行日から開始される.

②この憲法により選挙された最初の統一主体国民会議代議員の任期は統一主体国民会議の最初の集会日から開始され1978年6月30日に終了する.

第3条 この憲法による最初の国会議員総選挙はこの憲法施行日から6月以内に実施する.

第4条 1972年10月17日からこの憲法による国会の最初の集会日まで非常国務会議が代行する国会の権限はこの憲法施行当時の憲法とこの憲法による国会が行うものとみなす.

第5条 この憲法施行当時の公務員と政府が任命する企業体の任員はこの憲法により任命されたものとみなす.但し,この憲法により選任方法又は任命権者が変更された公務員はこの憲法により後任者が選任されるときまでその職務を行い,この場合,前任者である公務員の任期は後任者が選任される前日までとする.

第6条 ①この憲法施行当時の法令と条約はこの憲法に違背しない限りその効力を持続する.

②この憲法施行当時の大統領令·国務院令と閣令はこの憲法による大統領令とみなす.

第7条 非常国務会議において制定する法令とこれに従い行われた裁判と予算その他処分等はその効力を持続しこの憲法その他の理由により提訴し又は異議を申し立てることができない.

第8条 この憲法施行当時にこの憲法により新たに設置された機関の権限に属する職務を行っている機関はこの憲法により新たな機関が設置されるときまで継続してその職務を行

第9条 1972年10月17日からこの憲法施行日まで大統領が行う特別宣言とこれによる非常措置については提訴し又は異議を申し立てることができない.

第10条 この憲法による地方議会は祖国統一が達成されるときまで構成しない.

第11条 ①特殊犯罪処罰に関する特別法·不正選挙関連者処罰法·政治活動浄化法及び不正蓄財処理法とこれに関連する法律はその効力を持続しこれに対し異議を申し立てることができない.

②政治活動浄化法及び不正蓄財処理法とこれに関連する法律はこれを改廃することができない.

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